企業幹部たちの認識にずれがある理由の一部が、先行マーケティングの結果であることは間違いない。

 通信事業者によっては、すでに「5G」製品を、十分な技術的仕様がまだ完成していない段階で提供しているところもある。ウォール街などは、5Gの真の価値がどこから来て、そこから利益を得られるのは誰なのか(もっぱらこの点に現時点では注目している)が不確かであるとして、懐疑の念を表明している

 次世代ネットワークは実際のところ、前述の優れた技術的機能により、今日の最速である光ファイバー技術で構築されたものを含めた有線の広帯域システムと、真っ向から競えるようになるだろう。

 もっと端的に言えば、5Gの革命的技術は、投資家とユーザー双方の垂涎の的となるような、破壊的変化をもたらす応用をも可能とするはずだ。だとしたら、5Gの可能性がこれほどであるにもかかわらず、我々の調査における企業幹部には切迫感と理解が欠けている。このギャップは、なぜだろうか。

 その答えはおそらく、5Gの最大のインパクトの多くが幅広い業界とユーザー社会に拡散するため、将来の価値が見えにくく、測定も困難であるからではないか。

 我々が著書Pivot to the Futureで指摘したように、人工知能や量子計算をはじめとする新技術のポテンシャルと、実際に認識されているその恩恵との間には同じようなギャップがあり、しかも拡大しつつある。

 我々が調査したほとんどの上級幹部たちは、これらの新技術が今日のビジネスのあり方をどう改善するか、という観点からしか見ていない。もっと想像の幅を広げ、いかにして業界全体を塗り変えられるか、あるいはさらに幅広い見地から環境や貧困、医療といったより大きな社会問題の解決策を探求するうえでいかに応用できるか、といったことまで考えがおよんでいないのである。

 これは、従来型のビジネスの思考法の限界によるところが大きい。

 新たなイノベーションが複数の業界に破壊的変化をもたらしたり、新たな顧客層(今日は利用できていないか、十分に利用できていない人を含む)に役立つアプリケーションを可能にしたりする場合、従来型の戦略と計画立案のアプローチでは、イノベーションの実際のインパクトを過小評価してしまうため、投資の遅れやチャンスの逸失につながるのだ。