アレクサとグーグルホームを超えて

 アレクサやグーグルホームといった主流の音声アシスタントは、スマートスピーカー市場で大きなシェアを手にしている。一方、よりプライベートでデータ保護に強いアプローチを求めて、大手ハイテク企業を避けた音声ファースト技術の市場も生まれている。

 カンザスシティを拠点とするマイクロフトは、マイクロフトAIを開発するために、1500人以上の投資家からクラウドファンディングで100万ドル以上を集めることに成功した。このAIはオープンな音声エコシステムであり、データをシリコンバレーの大手ハイテク企業に送ることを避け、安全でローカライズされたアーキテクチャを持つことで差別化を図っている。

 1990年代のウェブのように、音声は可能性と将来性に満ちたブルーオーシャンだ。音声アシスタントがよりコンテクスト主導(ユーザーの状況・文脈に即したもの)になれば、単に受動的に反応するだけでなく、先を見越すようになるだろう。人々の役に立ち生活を向上させる新しい方法を、音声アシスタントが探してくれるはずだ。一方で、プライバシーとセキュリティーの概念が問い直されるような、新しい使い方も登場するだろう。

 いま、企業にとって大切なのは、音声ファースト技術をみずから試し、自分たちのビジネスに何が役立ち、何が役立たないかを知ることだ。まずは内部の推進者を任命するか、外部のパートナーを雇うかして、社内で試験的に音声経験を培おう。そして、初期の経験を社内で議論したり社外の会議で発表したりして、将来の成長の礎とするのだ。

 初期段階で効果的なプロジェクトとしては、まず自社サイトの諸要素や、自社のブランディングを構成する個々の要素をいくつか取り上げ、それらに対する音声体験を構築するとよいかもしれない。その後、もっと先駆的な音声ファースト技術の活用へと進めばよい。

 音声に注目していない企業は、すでに失敗を犯している。たとえば、『フォーブス』誌の最近の記事(弊社が分析・発表を主導)によると、大手の出版社は、顧客の本の購入を手助けする音声技術を導入できていない場合、1日に最大4万6000ドル(2019年の1年間で1700万ドル)の損失を出すおそれがある。この損失額は、2020年には5000万ドルにまで膨らむかもしれない。

 あなたの業界で、同様のレポートが出るのを待っていてはいけない。音声による購買がまだ目新しく、広く採用されていないいまこそ、投資するときなのだ。

 どの企業にもウェブ上での存在感と能力を築いて管理することが期待されているのと同じように、あらゆる企業が独自の音声ファーストの存在感と能力を築いて管理することが、間もなく期待されるようになる。実際、人々がSiriに情報を求めたり、グーグル・アシスタントに道を尋ねたりしているのを見るたびに、顧客のほうが自社のずっと先を行っていることに気づくはずである。


HBR.org原文:Your Company Needs a Strategy for Voice Technology, April 29, 2019.

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ブラッドリー・メトロック(Bradley Metrock)
ナッシュビルを拠点とするスコア・パブリッシングのCEO。ポッドキャストを配信するVoiceFirst.FMの創設者で、同社の「This Week In Voice」で司会を務める。オーディオブックPerspectives on Gender in #VoiceFirst Technologyを発行。音声ファーストのイベントをプロデュースし、業界団体VoiceFirst.Communityを設立。音声とAIに関する第一人者に挙げられている。