自分をさらけ出して初めて得られるもの

 小杉氏は部下全員に詰問された会社を経て、経営コンサルティングや教壇に立つ仕事に携わるようになる。しかしここでも、試練があった。

「大学や企業研修など、人前で話す仕事を始めたものの、最初は質問されるのが怖くて質疑応答を受け付けなかった。当然、聴衆に受け入れられず、自分にはこの仕事は向いていないのでは、と思い悩んだとき、あるワークショップで仮面を取る必要性を知らされた」

「生身の人間にならないと人は受け入れてくれない。自分のダメなところ、恥ずかしいところを語り、普段の自分をさらけ出すほど共感を呼ぶことに気づいて気持ちが楽になり、42歳にしてようやく仮面を取ることができた」

「学生にもよく自身のプレゼンをさせるが、事実や経験を語るだけの人はみんなからの評価が低い。人間として、その人そのものが出ているプレゼンが周囲から高く評価される」と自身の経験をさらけ出して述べた。

 新井氏は、外資系の運用会社で豪州に休暇に出かけた際、飛行機の中で突然体が動かなくなり、休職を余儀なくされた。

「病気になって自分が持っていたものを失い、それまで大きなお金を動かす立場にいたから人が寄ってきただけであることに気づいた。独立して鎌倉投信をつくったときも最初は相手にされず悔しい思いをした。人間はそうした立場に追い込まれると鎧を脱いで裸になり、偽りのない自分を出す環境がつくれる。自分をさらけ出したときに付き合ってくれる人こそが本物の仲間であることを知った」

 とはいえ、仮面を取ることはそう簡単ではないだろう。職業がそのような仮面を求めることもあるかもしれない。小杉氏は、「現実の社会では仮面をかぶらなければならないシーンもあるが、そのときは仮面をかぶっていることを自覚しておくことが大切だ。それができずに突っ走ってしまうと最後は精神を病んでしまう」と助言した。

 最後に、2人のパネラーから聴衆へのメッセージを挙げてもらった。

 新井氏は『どこまでも謙虚に、誰よりも強く想い、日々の小さな努力を積み重ねる』。NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』に出演したときに挙げた言葉だ。

「誰よりも謙虚にという人はすでに謙虚ではないが、誰よりも強く想うことならできる。努力する人はいるが、積み上げられる努力を日々過ごさない限りプロにはなれない。そこに自分なりの答えを見つけないと、自分の目標には到達しない。人が成長するためにはステキな自分をまずプロモーションして自分の何かをしっかりつくることが必要だ」と語った。

 小杉氏は『役割を超えて組織のために役に立つと思うこと、あるいは、自身がやりたいと思ったことに一歩足を踏み出した時、初めてリーダーシップが発揮されるのだ』。

「これはMust・Can・Willの話だ。役割やジョブ、目標というマストでやっている限り楽しくない。この組織はこうすればもっとよくなると気づけばスキルの有無に関係なく組織に役立つ行動ができる。そのキャンの領域に勇気を持って踏み出す。さらにはウィルで、やりたいことをやることによって始めてリーダーシップが自分に対して発揮される」

「まず自分のリーダーになることが大切。それをできていない人が人や社会に対してリーダーシップを発揮できるわけがない。また成功するための努力を楽しいと感じると同時に、自分を超え、社会のために役立ちたいという抽象度の高い志や使命感を持つ人は強い。みなさんもそれをぜひ見つけてほしい」
(了)