リーダーシップの原体験はどこにあるか

 荻野氏は、「オーセンティック・リーダーシップを体現している人は、ミッション(志、理念、使命)に基づくパッション(情熱)を発揮しているからこそ、大きな求心力をつくりだしている。それこそがこれからの時代のリーダーシップとなるだろう」とし、そのうえで、オーセンティック・リーダーシップになぜシフトしたのか、2人にその実体験を尋ねた。

荻野淳也(おぎの・じゅんや)
一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事。Googleで生まれたリーダーシップ開発プログラム「SEARCH INSIDE YOURSELF」の認定講師で、リーダーシップ開発、組織開発の分野で、上場企業などのコンサルティング、エグゼクティブコーチングに従事。慶應義塾大学卒、外資系コンサルティング会社を経て、現在は、マインドフルネスやホールシステムアプローチ、ストーリーテリングなどの手法を用い、組織リーダーの変容を支援し、会社や社会の変革を図っている。最新著書は、『がんばりすぎない休みかた』(文響社)。

 小杉氏は「原体験となることが2つある。1つはマッキンゼー時代に、優秀なコンサルタントを演じることを求められたこと。もう1つは33歳で、ある一部上場企業に入社後、突然人事総務部長を任命されたことだ。超ワンマン会長により前任が2年で7人変わった会社で、それまで人事総務の経験がなかったのに、部下を突然15人持つようになった」

 おそらく、気づかぬうちに自身のコンサル経験を鼻にかけていたのかもしれない。古参の社員から反発を買い、ある日、部下全員から地下室に呼び出され詰問を受けた。「何を言っても帰してくれないぐらいの雰囲気だった」と苦笑する。

 何時間も押し問答した後、最後にひねり出した答えが、これだ。「みんなの上司であることをはき違えていたようだ。明日から行動で示す」。そう言ってようやく解放された。

 そしてその夜、一晩寝ずに考えたことが、「みんなから教えてもらおう」ということだった、と語る。

「部下をリスペクトして、それぞれの役割と仕事の中身を教えてもらい、私がサポートできることを聞く時間を毎日取った。するとみんなが協力的になり、部内が一丸となってことに当たれるようになった」

 そして小杉氏は、立場や権限、過去の経験はリーダーシップに何の役にも立たないことに気がついた、と振り返った。

 新井氏も、「教えてください」の一言が言えるかどうかが重要だと頷く。

「世界最大の運用会社において、兆単位のお金を動かしていたとき、運用はすべて数字とデータで行い、経営者に直接会うことはほとんどないというのが常識だった。そんなとき、『日本でいちばん大切にしたい会社』という本に出会った。いい会社がどんな会社なのかわからず、著者の坂本光司先生に教えを請いに行き、3年半共同研究させてもらって、たくさんの経営者と話す機会を得た」

「プロ意識が極めて強いファンドマネジャーは、"プロである自分ができないこと"を受け入れにくいので、『わからないから教えてください』とは絶対に口にしない。私は人に教えてもらうことで、データに出てこない"いい会社"を知ることができた。それが差別化となって運用でも結果を出せるようになった」と語った。