●同僚の視点を理解する

 インパクトは必ずしも、意図とは合致しない。マイクロムーブを複雑にする要因は、その評価標準が一人ひとり違うことだ。

 たとえば、ハリソンはメールに返信しない行為をたいしたことではないと考えたが、キャシーは意見を異にした。だが、キャシーも立ち止まって、ハリソンの人生に何が起きているかを考えるべきだった。「ちょうど旅行から戻ったばかりで、返信すべきメールが大量にたまっているのか。別のプロジェクトで手一杯なのか」という具合だ。

 あるいは、苦手な同僚に哀悼の意を伝える例を再び引き合いに出そう。同僚がその行為を「心がこもっていない」と考えれば、もし万一「作為がある」と見なせば、そのマイクロムーブは裏目に出かねない。

 したがって、マイクロムーブを実行する前に、自分が受け手側であれば、どう反応するかを自問するとよい。それから実行後に、同僚の反応を伺い、自分の期待と合致するかどうか検討しよう。期待通りでなければ、さらなるマイクロムーブを駆使してフォローアップする態勢を整える必要がある。

 ●マイクロムーブは必ずしも、意図的でないことを認識する

 同僚との関係が突然悪くなったように思える場合、その原因は、あなたの何気ないマイクロムーブにあるのかもしれない。

 前述の会議中にマルチタスクしていたシナリオを例にとれば、クライアントの反応は、あなたが自身の言動にもっと注意を払う必要があることを示すシグナルとして、反省材料にすべきだ。同僚の反応の原因を特定すれば、小さな誤解が大きな問題に発展していくのを防止できる。

 とはいえ、意図的でないマイクロムーブが常に責めを負うべきとは限らないことにも、留意したい。同僚の意外な反応が自分とは無関係であるかどうかを判断する手段は実はシンプルで、「何か困っているようだけど、その原因は私の行為にあるのかな」と、直接尋ねてみればよい。

 ●ストーリーの中の自分の役割を理解する

 人は往々にして、自分自身の感情に縛られているあまりに、同僚との関係の全体像や自分自身の言動のインパクトに考えが及ばない。アウトサイダーの視点に立てば、人間関係の力学を明らかにできる。さらに見抜く力をつけるには、以下の質問に答えてほしい。

・職場の人間関係について、客観的なアウトサイダーであれば、どのようなストーリーを物語るだろうか。そのメリットと問題点は何か。

・アウトサイダーであれば、その状況におけるあなたの役割を、どのように説明するだろうか。あなたの言動によって、同僚との仲がより緊密になっているか、それとも疎遠になっているか。

・あなたと同じ状況にいる人が他にいたとして、その人にどのようなアドバイスをするか。特に勧めたいマイクロムーブ、あるいは避けるようにアドバイスしたいマイクロムーブがあるか。

 ●マイクロムーブを思いつくまま書き出す

 パフォーマンス向上のツールとして、研究者たちが推薦するのが、ジャーナリング(書く瞑想)だ。

 我々の見解では、ジャーナリングはより深く、より有意義な関係の構築にも役立ちうる。変えたい関係があれば、あなたが同僚とやり取りした最近5~6件の事例について、あなたと同僚のさまざまなマイクロムーブを思いつくまま、ある程度の時間をかけて、書き出してみよう。

 その際、各マイクロムーブへの反応も記載する。たとえば、あなたが前に踏み出した状況(例として同僚に助けを求める行為)を受けて、同僚は後ろに下がったか(「時間がない」と返答)、あるいは同じ反応を返したか(別件であなたからの援助を要請)。

 ジャーナリングを実践すれば、人間関係のパターンが認識しやすくなり、ひいては関係改善につながるマイクロムーブが浮き彫りになる可能性がある。

 ●マイクロムーブの「善玉」と「悪玉」は平等には創られていないと心得る

 同僚と緊密になる効果のあるマイクロムーブが、疎遠にさせるマイクロムーブを補完してくれることを願いたい。だが残念ながら、関係を害する「悪玉」マイクロムーブは、「善玉」よりも実践しやすく、かついっそうパワフルだ。

 よく引用される研究で、クイーンズランド大学のロイ・バウマイスターと彼の研究仲間は、「悪い」相互作用のインパクトが「良い」相互作用の効果を凌駕すると指摘している。したがって、関係を害したおそれのあるマイクロムーブに思い当たる節があれば、それを埋め合わせるために、少なくとも6つの取りうるマイクロムーブを考え出すよう努力しなければならない。

 結論を言えば、同僚との関係には自然な満ち引きがある。関係を形成したり、再形成したりするチャンスは毎日、数え切れないほどある。重要なことは、現在の関係に甘んじないで、同僚との望ましい関係を築く効果のあるマイクロムーブを実践していくことだ。

HBR.org原文:The Little Things That Affect Our Work Relationships, May 29, 2019.

■こちらの記事もおすすめします
職場で「親友」をつくるのは難しいが、価値がある
同僚のゴシップは企業文化を台無しにする
嫌いな人と仕事をうまくやる6つのアドバイス

 

ケリー・ロバーツ・ギブソン(Kerry Roberts Gibson)
ボブソン・カレッジの経営学部助教授

 

ベス・シノフ(Beth Schinoff)
ボストン・カレッジのキャロル・スクール・オブ・マネジメント助教授。経営学と組織論を担当。