だが、このようなチームレベルのマインドフルネスを実践に移すことは、簡単ではない。

 職場には、気を散らすものがあふれている。会議の場でも、話を聞いて参加することなく、ただスマートフォンをスクロールしている人は少なくない。加えて、必ずしもオフィスに出社せずに働く従業員が増えている。また多様な言語や文化的背景、ワークスタイルを持つ従業員を雇うことに積極的な企業も増加している。その結果、コミュニケーション上の行き違いや誤解が容易に起こりうるのが現状だ。

 チームにおけるマインドフルネスを高めるために、組織ができる最も重要なこととは、いま現在に注意を向け、拙速な判断を控え、互いに敬意を持ってコミュニケーションを取るよう促すことである。同時に、情報をすぐに処理するのではなく、きちんと収集し、理解する開いた心を保つよう奨励することだ。そうすることで、感情的かつ反射的な反応を抑制できる。また、多様な知識や異なる経歴を有するメンバーで構成されたチームが、潜在能力をフルに発揮するだけの余裕も生まれる。

 それは、難しい決断を避けることを意味するわけではない。現在に注目することが、過去を分析して、未来に向けたプランを立てることを妨げるわけでもない。むしろ、チームやそのメンバーが、いつ、どのようにして批判的な分析をし、重要な判断を下すべきかを、より的確にコントロールできるようになるのだ。

 現在、チームのマインドフルネスはこう実行するとよいという定まった方法は存在しない。また、マインドフルネスのコンセプトをどう実践するかは、組織によって大きく異なるだろう。

 ますます多くの大手企業が、個人のマインドフルネスを促進するプログラムを設けており、これがチームのマインドフルネス実践につながるかもしれない。このアプローチを推進するいくつかの企業では、さらに一歩踏み込んで、チーム全体が集まるグループセッションを行っている。そしてその場で、従業員たちは自分自身に注目し、グループ全体に注目し、遂行すべき課題に注目するのである。

 ただ覚えておいてほしいのは、高いレベルのチーム・マインドフルネスを実現するのに、チームのメンバー全員がマインドフルネスの訓練を受ける必要はない、という点だ。

 実際には、チームリーダーや少数のメンバーにマインドフルネスの心得があれば、チーム全体がその恩恵にあずかることが可能である。チームにおける取り組みのプロセスでは、チーム内には必然的に意思の疎通があり、高いレベルのマインドフルネスを有するメンバーが、他のメンバーの行動に影響を与えるからだ。また、チームのリーダーがマインドフルネスを重視することでロールモデルとなれば、他のメンバーもそれにならう可能性が高まるだろう。

 組織全体のレベルでは、マインドフルネス促進に向け、リーダーが文化的な基盤を定めることも有効である。

 マインドフルネスを中心に据えて、会議やメンバー間のコミュニケーションを先導するとよいだろう。また、可能性を秘めたアイデアが発表され、検討される前に打ち切られてしまったときは、話を継続できるよう、リーダーが介入するとよい。たとえば、生産的なはずの仕事上の対立が破壊的な感情の対立へと変わりそうだと察知した際には、リーダーが「待った」をかけ、目前のタスクに意識を戻すよう促すことも有益だろう。

 チーム・マインドフルネスを取り入れるメリットは、ますます明白になっている。

 2つのチームを想像してほしい。1つ目のチームは、一部のメンバーだけで話を進め、他のメンバーはどこか別のところで話が進んでいることに気づかずにいるか、あるいはチーム全体がいま何に取り組むべきなのかがわからずにいる。そこで全員で再び同じ話を繰り返し、同じ作業を繰り返す。メンバーは相手に対して批判的で自分のことは弁護するのみだったり、判断を急ぐ傾向があったり、ことによると、参加する意欲もなく、終了時間になるまで時計をにらんでいたりする。

 もう一方のチームは、課題に対する焦点を合わせて、メンバーの行動やコミュニケーションが本題から逸れるようなことがあれば、軌道修正して、再びチームの結束を取り戻す。チームでの話し合いでは、事実とアイデア、選択肢に重点が置かれ、衝動的な判断を避けるよう、皆が尽力する。

 この2つのチームのうち、成功するのはどちらだろうか。NBAのチームであれ、医療機関の部門であれ、成功を勝ち取るのは、マインドフルネスを取り入れたチームと言えるだろう。


HBR.org原文:What Mindfulness Can Do for a Team, May 31, 2019.

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リンタオ・ユー(Lingtao Yu)
ブリティッシュコロンビア大学ソウダービジネススクールの組織行動学および人材管理学准教授。ミネソタ大学で組織行動学および人材管理学の博士号を取得。研究テーマはリーダーシップと倫理、虐待的管理、感情、職場での逸脱行動、マインドフルネスなど。

メアリー・ゼルマー=ブルン(Mary Zellmer-Bruhn)
ミネソタ大学カールソン・スクール・オブ・マネジメントの組織行動学教授。ウィスコンシン大学マディソン校で組織行動を専攻し、博士号を取得。現在は、コンテキストとチーム編成、チームのダイバーシティ、チームにおける知識処理と学習の研究を中心に行っている。