その一つの選択肢として、マインドフルネスが挙げられる。「いま現在の出来事と体験を受容するよう注意と意識を向ける」ものと定義されるマインドフルネスを実践することは、目の前の課題に集中し、オープンな心を持って問題に臨み、意見の不一致を個人攻撃と解釈するのを回避する一助となることが示されている

 実際、マインドフルネスを支持する傾向は強く、多くの大企業がマインドフルネスのプログラムを取り入れている。グーグルやエトナ、リンクトイン、それにフォード・モーターも、従業員の生産性や満足度を向上させる目的で、マインドフルネスを取り入れている。

 しかし、チームのマインドフルネスは、個人で行うマインドフルネスとは異なる。後者が個人の思考パターンを対象とするのに対して、前者はグループ全体、およびメンバー間の相互関係に着目するからだ。言い換えれば、チームのマインドフルネスは、それに付随する個人的な予断なしに、集団としてのチームが、その時々の体験に意識を向けることを意味する。

 マインドフルネスがチームにとって有効であることを示す、事例証拠がある。

 1989年、マインドフルネスという言葉が西洋社会で広く認知されるより、10年以上も前のことだ。全米プロバスケットボールリーグ(NBA)のシカゴ・ブルズの監督だったフィル・ジャクソンは、チームのトレーニングの一貫として、マインドフルネスを導入し、大きな話題を呼んだ

 マインドフルネスを実践することで、チームの結束が強まり、ストレスに耐える力が強化され、ついには優勝を勝ち取ることができると彼は信じていた。NBAのレジェンドたるマイケル・ジョーダンをはじめ、多くの選手は懐疑的だったが、ブルズが6シーズン続けてチャンピオンシップを制した事実を前に、その疑念は吹き飛んだ。次に、ジャクソンがロサンゼルス・レイカーズの監督として同じようにマインドフルネスを導入したところ、レイカーズは実に5回ものチャンピオンシップ制覇を成し遂げたのである。

 ジャクソンのNBAにおける功績は大いに弾みとなるものの、つい最近までは、個人レベルのマインドフルネスのメリットに対してしか、科学的研究がなされてこなかった。

 チームという集団でのマインドフルネスへの完全な理解がなければ、たとえマネジャーがその習慣を取り入れたとしても、効果が乏しいうえに金のかかる一時的な流行で終わり、それどころか、非生産的な結果を招く恐れさえある。さらには、チームで実施するマインドフルネスがどのように成り立ち、機能するかを示すエビデンスなくして、そのリスクやメリットを効果的に推し量ることはできない。

 筆者らは、チームという集団におけるマインドフルネスのコンセプトを研究対象と定め、組織での実践に対する実証研究の結果を提示する。また、この研究での測定は、複数のサンプルを用いて検証したうえで実証されており、心理測定学的に信頼の置ける尺度を用いている。この研究結果はまた、チームで実践するマインドフルネスが、コンフリクトの持つ有害な側面を直接防ぐ手段として有効であることを明示している。

 現地調査の一つとして、米南西部にある総合大学で、44のプロジェクトチームに属する延べ224人のMBA課程の学生にアンケートを配布し、回答してもらった。その他の現地調査としては、中国のある医療機関において、技術サポート、製薬、マーケティング、カスタマー・サービスなど多様な部門の中で50チームに属する延べ318人に同様のアンケートを配布した。結果に反映されるチームでのマインドフルネスと、個人的なマインドフルネスとの混合を避けるため、調査では、個人で行うマインドフルネスをコントロール変数とした。

 この2つの調査を通じて、チームのマインドフルネスの値が高いほど、リレーションシップ・コンフリクトが軽減されることを、筆者らは見出した。さらに、マインドフルネスを実践しているチームでは、プロジェクトにおける仕事上の対立が、有害な感情の対立に移行する確率がはるかに低い、という所見が得られた。また、感情の対立が生じたとしても、他人を貶めるような破壊的な言動に発展する可能性も目に見えて低下した。

 言い換えれば、筆者らの得た所見は、チームレベルのマインドフルネスには明らかな効果があり、また個人レベルのそれとは異なるメリットをもたらすことを裏付けている。