『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』では毎月、さまざまな特集を実施しています。ここでは、最新号への理解をさらに深めていただけるよう、特集テーマに関連する過去の論文をご紹介します。

 2019年7月号の特集タイトルは「なぜイノベーションを生み出し続ける企業は組織文化を大切にするのか」である。

 時代に合った新規事業を創出する、事業転換を図る……イノベーションを促し、変革に成功し続けている企業の多くは、組織文化や企業風土を重視している。自由闊達に創造性を刺激する工夫こそがイノベーションの肝だと思われがちだが、それだけには限らない。組織の官僚化をいかに防ぎ、活力を保ち続けるか。その要点を論じる。

 ハーバード・ビジネス・スクールのゲイリー P. ピサノ教授による「創造的な組織は逆説に満ちている」では、イノベーションにまつわる言説に異を唱える。イノベーションを促す革新的文化を創造し、維持するには、5つの厳格さが不可欠である。第1に、失敗を許容するには能力不足を受け入れてはならない。第2に、実験に積極的であるためには厳格な規律が欠かせない。第3に、心理的安全性を保つには歯に衣着せぬ物言いを快く受け入れなくてはならない。第4に、うまく協働するには各人が責任意識を持たなければいけない。第5に、フラットな組織では強いリーダーシップが不可欠である。

 丸井グループ青井浩社長へのインタビュー「事業を変え、組織を変え、社員を変え、これからも成長し続ける」では、丸井がビジネスモデルを変え続けてこられた理由、そして近年、組織文化をどのように変え、今日それがいかに結実しているのかについて話を聞いた。創業88年を迎えた丸井グループは、家具の月賦販売から事業をスタートし、「赤いカード・ヤングファッション」の丸井として一時代を築いた。現在は、モノを売ることよりも体験を提供することを重視した店づくりを進めるなど、従来の常識に囚われない新しいビジネスモデルを構築している。

 IDEOのティム・ブラウン社長兼CEOらによる寄稿をまとめた「創造性を刺激する組織の条件」では、HBR.orgの記事から、さまざまな創造性を高めるための手立てを講じている3つの組織を取り上げ、それぞれの取り組みを紹介する。変化が激しく、従来の常識が通用しなくなっている環境では、創造性が組織の浮沈を握る。時代を生き抜くイノベーションは豊かな創造性から生まれるからだ。

 元ソニー副社長の久夛良木健社長へのインタビュー「イノベーションに必要なのは、組織ではなく突き抜けた人材だ」では、創造的な組織をつくるうえでのポイントを尋ねた。1994年に発売したソニーの家庭用ゲーム機PlayStation(プレイステーション)は、全世界で爆発的なヒットを記録し、2018年にシリーズ累計販売台数が5億台を突破した。その開発から販売まで中心的な役割を担ったのが、久夛良木(くたらぎ)健氏である。現在は世界20カ国以上からエンジニアが集まるAIスタートアップ、アセントロボティクスの社外取締役等を務め、いまもなおテクノロジーの世界の最前線に立つ。コンピュータ好きな一介の技術者であった久夛良木氏はなぜ、イノベーションを起こし続けられたのだろうか。

 マネジメント・ラボ創設者のゲイリー・ハメル氏らによる「ハイアール:組織の官僚化を打破する仕組み」では、ハイアールで「人単合一」と呼ばれるこの事業のやり方について、7つのポイントから論じる。企業の官僚主義に対し、多くの人がその弊害に気づきながら、避けようのないものだと考えている。複雑な国際環境や規制環境を乗り切るためには取り入れざるをえない、と言う人もいる。この幅を利かせる官僚主義を打ち破る組織モデルが、世界最大の家電メーカー、ハイアールに登場した。CEOの張瑞敏(チャン・ルエミン)は官僚的体質を競争上の足かせと見なし、この10年で従業員が顧客にじかに責任を負って熱心な起業家のように振る舞い、ユーザー、発明者、事業パートナーで構成する開放的なエコシステムをつくり上げてきた。

 トロント大学ロットマンスクール・オブ・マネジメントのティツィアナ・カシアロ教授らによる「組織の境界を超え協働を促すリーダーシップ」では、リーダーが協働の課題克服を手助けするために4つの方法を紹介している。組織で優先されがちなのは上司と部下などのタテのつながりだが、イノベーションや事業開拓につながるのは日常的に関わる別部門との関わりなど、ヨコの関係である。しかし、組織の壁に阻まれ、なかなか水平方向の協働は進まない。社員は訓練により、組織全体を見渡して専門知識を持つ人材と結び付き、異なる考えの同僚とも協働できるようになるが、自分と異なる人を理解し、気持ちを通じさせることはなかなか難しい。