電気自動車や自動運転が実用化し、社会のインフラとして組み込まれる「Mobility3.0」。その近未来に向かって自動車産業は今、大変貌を遂げようとしている。新たなテクノロジーを糧に様々なサービスが生まれ、これまでの車両販売中心のビジネスから多様なビジネスモデルが登場する。この変化は自動車業界のみならず、通信、ハイテク、金融、エネルギーなど多様な産業にもビジネスチャンスをもたらす。この機会を逃さず、成長を加速させる企業がある一方、取り残され淘汰される企業も出てくるはずだ。Mobility3.0の世界では、人々の移動と社会の形はどう変わるのか。それに向けて企業はどう取り組むべきだろうか。

Mobility3.0の世界で人々の移動は大きく変わる

北村 昌英
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部
マネジング・ディレクター

関西学院大学卒業後、ソフトバンクを経て、アクセンチュア参画。通信・自動車関連企業を中心に、事業戦略、デジタル活用戦略(AI、IoT等)、M&A、グローバル戦略等に多数従事。戦略策定だけではなく、事業の早期立ち上げに向けたPoC(実証実験)、パートナリング構築支援も実施。主な著書に「Mobility 3.0: ディスラプターは誰だ?」(東洋経済新報社、2019年、共著)。2014年より2年間、早稲田大学大学院非常勤講師(コンサルティング実務)。

――Mobility3.0の世界になると、人々の移動体験や生活はどのように変わるのでしょうか。

北村 まず、大きな方向性として、移動や物流需要が多い都市部では、ハンドルのないロボットタクシー、ロボットバスに将来的にはモビリティサービスが集約されていくでしょう。これまで自動車市場は、世界人口70億人のうち運転免許を持つと想定される10億人程度が主な対象でしたが、自動運転技術が成熟することによって全人口が対象になります。人が運転しなくなるため、交通事故は激減し、子供や高齢者のみでも安心してクルマに乗ることができます。(図1)

 すべての交通手段が最適化され、都市部の渋滞も大きく減少すると考えられます。デリバリーサービスや仮想現実技術の発達で、移動の必要がない新たなライフスタイルも定着するでしょう。移住によって新しい経済圏が生まれる可能性も広がります。

 自動化による移動コストの大幅な低下によって、「無料モビリティサービス」の普及も見込まれます。例えば、移動中に乗客が見るプロモーションの広告料なども収益の一部として取り込めるからです。お店に足を運んでもらうための無料送迎も増えるでしょう。

 さらに、モビリティが不動産ビジネス化することも考えられます。車両のモジュール化によって外装・内装を店舗やサービス業などの用途にカスタマイズする「移動式不動産型モビリティ」が普及する。このように今とは大きく違う世界が誕生するでしょう。

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出所:アクセンチュア