●人が他人に下す評価は当てにならず、よって与えるフィードバックも真実を反映せず歪んだものとなる

 たしかにフィードバックは、各人固有な物の見方に由来するため、完全に客観的にはなりえない。とはいえ、リーダーにとって、周囲が自分をどのように見ているか、自分のことをどう感じているかを知ることには、計り知れない価値がある。誰の話に耳を傾け、誰と協力し、誰を信頼し、サポートし、支持するかという決断は、個々人の主観的な認識に基づいて下されるからだ。

 ●弱点を指摘するフィードバックは、学びを妨げる脅威を生み出す

 研究の示すところでは、360度評価を受けた参加者のうち、ネガティブな評価を得た人たちは、他の参加者以上にパフォーマンス改善の傾向が見られた。また、CCLの研究によれば、成功を収めたエグゼクティブは、脅威となりうる出来事(ひどい上司、仕事上のミス、降格、従業員の解雇など)こそが、自己開発への重要な原動力であったと認識していることが明らかになっている。

 ●自分の長所にのみ注目すべき

 筆者らの研究が示すところでは、みずからの弱点に目をつぶることは、組織において個人的な失敗をもたらす最大の要因の一つだ。リーダーがどれほど数々の強みを磨き上げても、対処を怠ってきた「致命的欠陥」(たとえば横柄さ、チーム構築能力の欠如、新たな環境への順応の困難さなど)が1つあるだけで、大きくつまずいてしまうことがある。本人がその弱点を認識していない場合は、とりわけ失敗に至る可能性が高まる。

 ●組織に貢献するには、すでに得意なことに磨きをかけるのが最善策

 この考え方は、すべての従業員が、ある重要な分野ですでに秀でており、組織の成功に必要な重要スキルや能力を有していることを前提としている。CCLのジーン・レスリーが行った研究は、上記の前提が当てはまるケースが非常にまれであることを示している。

 実際には、現在のリーダーたちが最も不得意とする分野は、これからの時代で最も重要となる4つのリーダーシップ・スキルであることを彼女は発見している。すなわち、コミットメントの喚起、従業員に対する効果的なリーダーシップ、戦略的プランニング、チェンジマネジメントの4つである。

 強みだけに注目することは、改善が必要な分野などない、と従業員に思い込ませてしまう結果を招く。また、マネジャーを、部下や同僚の成長を促すという必要不可欠な(そして時として困難な)義務から解放することになり、結果的に組織の有効性を損ねてしまいかねない。

 したがって、単にネガティブなフィードバックを避けることを奨励するのではなく、ネガティブなフィードバックを与えるにはどうすべきか、に焦点を当てるべきである。受け手が脅威として反応する可能性を最小限に食い止める方法を探るべきなのである。

 CCLでの取り組みの一環として筆者らは、長所と短所の両面へのフィードバックを明快かつ具体的に、プロ意識と思いやりを込めて与える、状況(Situation)・言動(Behavior)・影響(Impact)アプローチを教えている。

 このアプローチでは、フィードバックを与える側が、まずその対象となる行動が起こった時間と場所を指摘し、見聞きした言動がどのようなものであったかを具体的に表現し、それが自身の思考や感じ方、行動にどんな影響を与えたかを伝える。

 例を挙げよう。「今朝のスタッフミーティングで、新しいイニシアティブの資金調達のストラテジーを話し合っているとき、あなたは、ジェシカが意見を言い終わる前に『それはうまくいかない』と話をさえぎった。その結果、私はジェシカの意見を最後まで聞けずに残念だったし、そういう環境で発言することへの威圧感も覚えた」

 こうしたフィードバックならば、個人に対する批判(「あなたがジェシカの話をさえぎったのは間違いだ」)ではなく、一般化(「あなたはいつも人の話をさえぎる」)もしておらず、その言動の原因を分析するもの(「あなたには他人のアイデアに対する敬意がないのか」)でもない。その結果、あなたのフィードバックは弁解と拒絶に直面する代わりに、素直に聞き入れられ、熟考される可能性が高まる。

 組織やマネジャー、個々の従業員が、長所を認識し、活かすことには大賛成だ。しかし、弱点に目をつぶることは、大きな危険をはらんでいる。


HBR.org原文: What Good Feedback Really Looks Like, May 13, 2019.

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クレイグ・チャペロウ(Craig Chappelow)
センター・フォー・クリエイティブ・リーダーシップのリーダーシップ・ソリューションズ・ファシリテーター。南北アメリカ担当。

シンディ・マッコーレイ(Cindy McCauley)
センター・フォー・クリエイティブ・リーダーシップのシニアフェロー。南北アメリカ担当。