米国国内において、アメリカンフットボールは圧倒的な人気を誇る。その優劣を決めるのは選手の身体能力だけでなく、チームとしての戦略が多分に影響するのがアメフトの特徴である。一般に、「クォーターバック」「ヘッドコーチ」「ゼネラルマネジャー」「オーナー」の4人のリーダーが成否を握ると言われるが、その中で最も重要な役割は何だろうか。筆者らによる詳細な分析からその答えを導くとともに、ビジネス界への教訓も示す。


 スーパーボウルは別として、アメリカンフットボールの年間スケジュールで、NFLドラフト以上に盛り上がるイベントは考えにくい。4月25日~27日にナッシュビルに集結する32チームは、選手登録枠を埋め、新たな戦力を加えようと試みる。その光景を見た私たちは、アメフトではどうやって勝てるチームを構築するのだろうか、と考えた。

 もちろん、それには多くの要素が絡んでいるが、チームの成否は主に4人のリーダーによって決まるというのが一般的な認識だ。クォーターバック、ヘッドコーチ、ゼネラルマネジャー、オーナーである。では、「最も」重要な存在は誰なのだろう。

 ほとんどの専門家は、その選択はクォーターバックかヘッドコーチに行き着くと述べる。この議論は白熱するが、ニューイングランド・ペイトリオッツに関しては、なおのことだろう。同チームの場合は明らかに、クォーターバック(トム・ブレイディ)が選ばれるように思える。

 結局のところ、クォーターバックはフィールドのリーダーであり、あらゆるスポーツの中で最も重要なポジションだと見なされることも少なくない。過去21回のNFLドラフトのうち15回で、全体1位指名されたのはクォーターバックである。また、この期間にクォーターバックが上位3位以内に選ばれなかったのは2回だけだ。さらに、クォーターバックは、トップチームにおいてもリーグ全体でも、他のポジションよりはるかに高給取りである。

 一方、ヘッドコーチ、つまり選手の動きとチームの戦略を指揮する人物のほうが重要だと主張する人々は、次のような事実を指摘する。

 選手に何をすべきかを伝えるのは、他ならぬコーチである。加えて、ヘッドコーチは試合の3つの側面のすべて――オフェンス、ディフェンス、スペシャルチーム(キックプレイの場面で登場するユニット)――に大きな影響を及ぼすが、クォーターバックが直接的に貢献するのはオフェンスだけだ。

 さらに、フットボールのコーチは他競技のコーチよりも、試合中に意思決定を下す機会が多い。これは、1プレーごとにストップしてはスタートするこのスポーツの性質、そしてリーグにおける通信技術の広範な活用によって後押しされている。米国の主要スポーツの中で唯一、フットボールにはコーチの名を冠したチャンピオントロフィーがある(ヴィンス・ロンバルディ)という点でも、コーチの重要性はうなずける。

 さらに、ゼネラルマネジャー――選手を評価し、フリーエージェント制やトレード、ドラフトを通じて登録選手を集める役割――のほうが、チームの成功のためにはコーチよりも重要だと主張する人もいる。結局のところ、適切な選手がいなければ、コーチはフィールドで戦略をうまく実行できない。

 オジー・ニューサムがゼネラルマネジャーを務めた、ボルティモア・レイブンズの1994年から2018年の記録は、その考え方を裏付ける強力な証拠だ。ニューサム就任前の25シーズンでは、同チームの勝敗数はまったく同じだった。ところが、彼が率いた25年間の戦績は231勝192敗1引き分けで、スーパーボウルを2度制している。ニューサムは、ジョナサン・オグデン、レイ・ルイス、エド・リード、テレル・サッグスといった偉大な選手をチームに迎え入れ、他にも多くの重大な決断を下した。

 同チームの社長ディック・カスはESPNのインタビューで、「レイブンズの最重要人物はオジーだと思う」と結論づけている。「彼は12年ごとに、スーパーボウルで優勝するチームを2度つくったことになる。それに、その両方で出場した選手は、たった一人(クォーターバックではない)だった。オジーは類い希なる人材だ」

 ただし、彼だけが傑出していたわけではない(クリーブランド・ブラウンズのゼネラルマネジャーであるジョン・ドーシーは在任期間中、わずか6シーズンで2つのチームに多大な影響を与えた)。

 最後に、NFLチームのオーナーこそが、実際には組織の最重要人物だと主張する人もいる。

 元NFL選手で、ゼネラルマネジャーも務めたコメンテーターのテッド・サンドクイストは、その理由を次のように列挙する。まず、オーナーはチームのミッションとアイデンティティを創出する。そのビジョンを実行するために組織のリーダー、すなわちゼネラルマネジャーと(時には)コーチを選ぶ。そして彼らに、実力を最大限に発揮でき、選手を育成できるようにリソースを提供する立場にある。

 サンドクイストは、チームの他のリーダーとオーナーを具体的に比較して、こう主張する。「両者の立場は比べものにならない。ヘッドコーチはチームを構成するパズル全体のほんの一部にすぎず、クォーターバックや、才能ある選手を見抜く眼力を持ったゼネラルマネジャーと重要度は変わらない。NFLの組織の中で最も重要な役割は、オーナーなのだ」

 肝心なのは、これら4つのリーダーの役割、特にコーチとゼネラルマネジャーは、境界線が往々にして曖昧であると認識することだ。その力関係は、リーグ全体で異なる。

 ESPNによると、現在、NFLの32チームのうち20チームで、ゼネラルマネジャーが選手登録枠と人事の最終決定権を持っているという。他の4チーム(ペイトリオッツ、フォーティナイナーズ、レイダース、ファルコンズ)では多くの場合、組織内にゼネラルマネジャーという肩書きの経営幹部がいるにもかかわらず、コーチが事実上のゼネラルマネジャーの役割を果たし、人事に関する最終決定権を握っている。

 そして今季のNFL上位4チームのうち3チーム、すなわちカンザスシティ・チーフス、ニューオリンズ・セインツ、ロサンゼルス・ラムズを含む7チームは、「よくある協調的な取り組み体制を持っている」ようだ。最後に、最近コーチが採用されたばかりの1チームの力関係はいまだ不明瞭だ。また、ダラス・カウボーイズの謎めいた人物ジェリー・ジョーンズは、オーナーとゼネラルマネジャーを兼任している。

 間違いなく、4つの役割はすべて、成功に不可欠である。クォーターバックは最も重要な選手で、コーチはチームを率いてプレースタイルを決定する。ゼネラルマネジャーは選手を集める。オーナーはチームの方向性を定め、他のリーダーを採用して権限を与える。

 しかし、疑問はまだ残る。「最も」重要なリーダーは誰なのか。その答えを見出すべく、私たちは数字を分析することにした。