米国の企業にとって、自国の法律のもとで何を要求されるかを、しっかり把握することが重要だ。そして、新たに親となった従業員が搾乳に必要な時間やスペースを確保できるよう、雇用主として積極的なステップを踏むことが重要である。

 まずは、法律について見てみよう。

 育児に従事する親のニーズや母乳育児がもたらすさまざまな健康上のメリットへの認識に基づき、米議会は2010年、授乳期間中の母親の休息に関する法を制定した。そこでは「子どもが生まれた後の1年間、母乳育児を目的として搾乳が必要となるたびに、それを可能にする適切な休息」を与えることが義務づけられている(通常、従業員は「搾乳」に電動搾乳器を使う)。また、「従業員の搾乳場所としては、トイレではない場所で、人目につかず、同僚や他の人が入ってくる心配のない空間」を雇用主が設ける義務があるとしている。

 こうした基本的な休息と空間がなければ、乳児に必要な栄養をそなえた母乳を分泌できなくなる可能性があるうえ、痛みを伴う乳房の感染症や病気につながる危険性もある。医師の勧めよりも早期に授乳を打ち切ることにもなりかねない。

 米連邦法では、ほとんどの時間給従業員、および給料制の従業員の多くに、この休息の時間と空間を活用する権利を与えている。従業員50人以下の小規模企業であり、この規定を順守することで大きな困難や金銭的損失を被るまれなケースでは、コンプライアンスの義務が免除される場合があるものの、大企業は例外なく従わなくてはならない。

 1964年公民権法第7編の一部である連邦法の文言は、連邦裁判官のあいだで、母乳育児に対する差別を禁止するものと解釈されており、ここには職場での育児活動や搾乳行為を理由としたセクハラ、その他の否定的な待遇の禁止も含まれる。妊娠差別禁止法では、従業員への他のサポート体制が整っている多くの場合、休息や空間の設備、修正の加えられた制服や一時的な異動など、職場での母乳育児をサポートする便宜を図る義務を雇用主側に課している。

 大多数の州では、さらなる法規定を設けている。

 残念なことに、このようにムラのある法規定では、企業が法に従うために何をすべきなのか、指針となるような明確な基準をつかみにくい。しかし、以下に述べるベストプラクティスの実践を通して母乳育児中の従業員をサポートすることで、企業としてさまざまな連邦法および州法を順守できる。

 そのうえ、優秀な人材を確保し、支出を抑えることも可能となる。職場における母乳育児のサポートを充実するというビジネスケースには、乳児を抱える従業員の欠勤の減少、医療コストの削減、従業員の忠誠心の強化、そして、会社のイメージ向上につながるといったことが含まれる。

 この取り組みに力を注ぐ際、多くの企業がぶつかる最も大きな障害の一つが、授乳をしながら働く従業員が抱えるニーズに対する認識の低さ、そして、そうした従業員をサポートするために踏むべき基本的なステップへの理解の乏しさだ。何ができるのかを以下に紹介したい。