好評発売中のEIシリーズ最新刊『オーセンティック・リーダーシップ』の発刊記念イベントを2019年5月16日に開催。世界で注目を浴びるオーセンティック・リーダーシップとは何か、いまなぜ求められるのか、どうすれば身につけられるのかについて、巻頭の「日本語版によせて」を執筆した日本ラグビーフットボール協会のコーチングディレクターを務める中竹竜二氏(チームボックス代表取締役)が講演した(構成:富岡 修、写真:斉藤美春)。

キーワードは「オーセンティック」

 中竹氏の講演は、まず本書のタイトルにある「オーセンティック」という言葉の説明から始まった。オーセンティックとは「本物の」「真正の」「確実な」などを意味する言葉であり、その語源はギリシャ語の「根源となる」に由来する。

中竹竜二(なかたけ・りゅうじ)
公益財団法人日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター、株式会社チームボックス代表取締役、一般社団法人スポーツコーチングJapan 代表理事。1973年、福岡県生まれ。早稲田大学人間科学部に入学し、ラグビー蹴球部に所属。同部主将を務め全国大学選手権で準優勝。卒業後、英国に留学し、レスター大学大学院社会学部修了。帰国後、株式会社三菱総合研究所入社。2006年、早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任。2007年度から2年連続で全国大学選手権優勝。2010年、日本ラグビーフットボール協会初代コーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチも兼務。2014年、リーダー育成トレーニングを行う株式会社チームボックスを設立。2018年、スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。

「オーセンティック・リーダーシップを一言で表現するなら、自分らしさを大切にするリーダーシップだ。具体的に言うと、自分らしさを発見し、メンバーに弱みも含めて偽りなく自分をさらけ出すスタイルを指す」。

 これまで優れたリーダーになるには、自分らしさの追求というよりは、社会や組織が求める理想のリーダー像や手本となるリーダーを真似ることが常道とされてきた。それゆえ、「自分らしさを大切に」と言われて戸惑うビジネスリーダーは多いはずだ。

 中竹氏はオーセンティック・リーダーシップの一端を理解してもらうため、聴講者にミニワークを実施した。「今から隣に座っている方や近くにいる方とお互いに自己紹介をしてください。時間は約2分間です」

 会場に集まった約70名が一斉に自己紹介を始めた。緊張で張りつめていた場が和み、自己紹介を終える頃には、会場が熱気に包まれた。

「自己紹介は自分を伝える行動の一つ。自分を知ってもらい、相手を理解することで心理的安全性が高まり、安心感を抱く。そのようなリラックスした状況で自分とは考えや立場が異なる人と交流すると、気づきが促されやすくなり、学びや成長につながる」。

 というのも、人間は組織や集団の中にいると、つい自分を優秀であるように見せたくなる習性があるからだ。リーダーの振る舞いで言うと、メンバーからどう見られているかを意識し、時には知ったかぶりや嘘をついてまで良く見せようとする。しかし、周囲に良く見せようと頭を働かせることが集中力の低下を招き、その結果、本来のパフォーマンスを発揮しにくくなることが、最新の研究で判明しつつある。

 嘘偽りのない自分と向かい合う、オーセンティシティによって高いパフォーマンスを発揮できるイメージとしては、元メジャーリーガーのイチロー選手を思い浮かべると理解しやすいかもしれない。バッターボックスでルーチン作業を行うことで自分と対峙し、究極のリラックスと集中力が共存する“ゾーンに入った”状態をつくり出している。

 勝利至上主義のスポーツの世界にあって、中竹氏は指導する選手に対し、自分の人生の幸せを考えるようにアドバイスしていると言う。一見、タブーに思われかねない発言であるが、実は逆だと言う。

「勝敗を意識しすぎると、プレーに集中できなくなったり、負けた時になかなか立ち直れなかったりする。むしろ自分の人生の幸せという長期的な目標を考えさせることで、視野を広げ、今を俯瞰できるようになる。結果として、目の前の試合に集中でき、より高いパフォーマンスを発揮しやすくなる」