分析能力についての要諦:
経営視点でWhat-Ifシナリオの分析軸と計算式が定義できているか?

 ここで言う分析能力とは、既に発生した事象が「なぜ発生したのか?」を経営に向けて説明するための後追い分析ではなく、将来発生すると考えられる事象に対して「どの事象が発生したら、どのように対応するのか?」をシナリオ化し、またでき得る限り発生の予兆を掴む能力の高度化である。現実的には多種多様なデータから発生の予兆を、因果を説明しない本当の意味でのPredictive Analysis手法を持って掴むやり方は、手法・人材確保の両面で実践する難易度は相当に高い。

 しかし平均レベルの企業であっても、過去に起こった事象と対応策の結果・因果をシナリオ的に整理し(Causal分析)、今後も起こり得るそれぞれのシナリオをどのような分析軸と計算式でシミュレートするのか、その考え方自体を平時から整備して経営陣と理解を一つにしておくことはできる。実際にはまずそのレベルでも十分にコントロールタワー機能の効果は十分に創出できる。

 分析能力の強化においては、一足飛びにPredictive Analysisを行うことを夢見て、ビッグデータ的分析を行うためのデータ基盤の可用性・即応性の強化といったテクノロジー・ツールの議論にだけ終始するのは実践的ではない。是非最初の一歩は地に足をつけ、経営視点でWhat-Ifシナリオ分析の軸が定義され、実働する分析チームまで計算式・データ粒度のレベルで整合性のある落とし込みができているかを改めてチェックするところから始めていただきたい。

対応能力についての要諦:
経営陣と現場の溝を埋める仕掛けが導入できているか?

 コントロールタワー機能構築と謳い、経営層向けにも売上・利益・在庫…といったファイナンシャルなKPIを複数の軸で自由にドリルダウンできるダッシュボードを提供するサービスが複数出現した。経営層のウケは良かったが、冷静になるとこれらのサービス導入で企業として対応能力が向上したという実感はないと云われる企業がある。これらのケースの場合、原因の多くは意思決定に際する役割分担が磨き込まれていないこと、加えて意思決定をしたシナリオの実行進捗を管理しながらレビューを回す行動様式が埋め込まれていないことが要因である。

 前者はDOA(Delegation of Authority)の再設計、後者は結果指標に偏っているKPIの再設計が直接の打ち手となる。DOA(Delegation of Authority)の再設計とは即ち対応施策の種類と影響度によって起案者、合意者、決定者、実行者のルールが明確に決まっているかをチェックして頂きたい。これが決まっていない企業ではいわゆる「忖度」の連続で対応の精度が落ちる。次に結果指標に偏っているKPIの再設計とは即ち、ファイナンシャルな結果指標だけでなく、対応アクションの実績を確認するKPIを施策の束毎に保存・確認する仕掛けをDOAで決めた権限者のKPIダッシュボードに埋め込むことである。これによって初めて経営陣と現場の溝が埋まり、コントロールタワー機能構築のメリットを実感できるようになるはずだ。