●小さな出来事のために時間をつくる

 誕生日、休暇、卒業式、ディズニーランドへの旅行……こうした大きなイベントにさえ参加すればワーク・ライフ・バランスは取れる、と考えるリーダーは少なくない。

 だが、こうしたビッグ・イベントは最低限すべきことにすぎないと、私が取材した5人は口をそろえる。彼らに言わせれば、無数にある日々のささやかな交流こそが、本当に重要なのである。車で医者に連れて行ったり、近所周辺を散歩したり、毎朝学校まで車で送ったり……このような瞬間が往々にして、最も大切な記憶として心に刻まれる。

 かつて幼かった娘たちのために、そんな時間をつくった父親の一人は、いまでは「常に頭の中に、(娘たちの)YouTubeミニ動画が1000本ある」ように感じると、私に語った。彼はいまでも子どもとの時間を優先し、娘たちを毎朝学校に送っている。それによって彼のキャリアに傷がついたことは1度もない。むしろ、そのおかげで勤務中はとことんリーダーに徹していられるという。

 ●何が本当に緊急かを見極める

 緊急の仕事は入るものだ。しかもたいてい、急を要する正当な理由がある。

 取材した5人のうちの1人は、まだキャリア初期で子どもたちが幼かったころ、毎晩どのように過ごしていたかを語った。出張しているとき以外は、帰宅後すぐに子どもたちを風呂に入れ、寝かしつけるのが彼のルーティンだったという。その後、一人で夕食を済ませ、再びメールに向かうのが常だった。

 この習慣について、妻に「鋭く指摘された」とき、初めて目が覚めたという。「なぜ、朝になるまで仕事に戻るのを待たないのか」と考え直すきっかけとなったというのである。

 その結果、たいていの仕事は、翌朝まで待っても悲惨な事態に陥らないことに気づいたという。「これは先延ばしするための言い訳ではない」と強調する。

 彼だけでなく他の4人も、キャリアにおいて緊急事態に迅速に対応できることはとても大事だと話す。ただし、「人工的な緊急事態」は仕事と家庭のバランスを取るうえで重大な障害となる。

 ●境界線を引く

 リーダーの役割を果たすには、時に全身全霊を尽くす必要がある。最高職位にあれば、最終的な責任を担うという特権を獲得しており、それを中断することはできない。

 だが、私が話をした5人全員が、境界線を引くことを話題にした。1人は、3人いる息子それぞれのスポーツチームのコーチを必ず引き受けることにしていた。別の1人は、平日に家族と夕食を囲むことを最優先にしていた。彼の会社には「超時間勤務」と「実際に会う時間」を重んじる文化があるにもかかわらず、である。

 5人が自分で設定したルールの内容は、それぞれ異なる。だが、彼ら全員に一貫していたのは、意識的であることだった。

 同僚たちの承認を得て、仕事と家庭をバッティングさせない時間帯を決め、それを守っていた。仕事が容易に入り込む状況もありえたが、家族との時間帯を死守していたのだ。

 私は著書でそれを「断固としたすみ分け」と呼んでいる。私自身について言えば、平日5日間のうち半日単位の時間帯をいくつか、家族との時間と決め、その間は仕事の電話に出たり、メールをチェックしたりは、いっさいしない。

 ●目標を設定する

 取材した5人の父親全員が、一貫性を、家庭および職場で成功するための重要要素として挙げた。

 職場では、一貫性を持ってチームを指導・管理し、表明した事業目標とコミットメントを果たし、KPI(重要業績評価指標)をクリアする。ほとんどの家庭にはパフォーマンス測定基準はない。だが、この基準を独自につくれば、子どもにとってよりよい父親になれるよう、そして配偶者の目から見てよりよい親になれるよう、徹底できる。

 この基準は、1週間のうちに家族で囲む食卓の予定回数であるとか、学校へ送っていく予定回数といったシンプルなもので構わない。私自身の生活では、この基準を非常にきめ細かく設定した。そうすれば、1日のうち予定に割り当てた時間を、どこで、どのように過ごしたいかが、具体的に把握しやすくなるからだ。

 私が取材した5人のうちの1人は、再婚者だった。「最初の結婚では家庭でのあり方に一貫性がなかった」と後悔しており、その事実が離婚の原因だったと彼は考えている。今度の結婚では、いくつか変更した。具体的には、仕事の電話よりも子どもからの電話に出ることを優先し、子どもの学校の年中行事を中心において、主要なビジネス・ミーティングの日程を組んでいる。

 別の1人はかつて、「それまでに就いたなかで最高の仕事」をしていたものの、毎週出張で全米各地を飛び回ることを余儀なくされた。そのため家庭生活があまりに予測不可能になったので、その仕事を手放して、もっと一貫して家にいられるように別の仕事に就いた。

 さらに別の1人は、「よりひんぱんに家にいるようすれば、しつけもできるようになる」と説明した。たまにしか家にいられなかったときは、楽しいだけの親でいたかった。だが、家にいる時間を増やすと、ルールを守らせる、といった親としての務めも果たせるようになったという。

 こうした話から、メッセージは明らかだ。すなわち、父親はワーク・ライフ・バランスについて意図的な決断をして、それを遂行する必要がある。その結果、親でもあるプロフェッショナルとして、より充実した生活を手に入れることができる。


HBR.ORG原文:4 Ways Working Dads Can Make More Time for Family, April 09, 2019.

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ジェームズ・スーダコウ(James Sudakow)
著者。著書にOut of the Blur(未訳)がある。著書では、子育てをしながら、スモールビジネスを構築・経営する彼自身の話を綴っている。