成長トリガーと成長阻害要因

 6つの「ペルソナ」について、縦軸「組織志向か個人志向か」、横軸「直観的か論理的か」でマッピングすると、下記のように整理される。

 次に、各「ペルソナ」の個別ケースを振り返りながら、各「ペルソナ」の成長トリガー、および成長阻害要因とその対策について考察した。

 伸びやすい「ペルソナ」の成長阻害要因

「1.チームリーダー」「2.公共的自省者」は、留職プログラムの環境下で安定して大きく成長する。しかし、以下のような場合には注意が必要となる。

 ●自発的な意志を伴わず、責任感と義務感のみから思考・行動する「1.チームリーダー」は伸び悩む。

「1.チームリーダー」は、責任感が強く、自分の意志よりも全体最適や組織の意志を優先する傾向が強い。そのため、留職プログラムに自発的な意志がないまま派遣されると、プレッシャーに押しつぶされ、必要以上に精神的に追い詰められてしまう。この「ペルソナ」を派遣する場合は、本人の自発的な意志が生じるまでは派遣を見送ることや、留職期間中は、義務感で行動していないかを確認し続け、問題があれば自発的な意志を取り戻すためのサポートを行うことが重要となる。

 ●周囲へのコミュニケーションに消極的な「2.公共的自省者」は伸び悩む。

「2.公共的自省者」は、職場では「縁の下の力持ち」として一目置かれている存在であることが多く、それゆえ自発的なコミュニケーションに消極的な傾向が強い。しかし、前提条件が全く異なる留職先において周囲へのコミュニケーションに消極的なままだと、留職先の真のニーズや課題を理解できず、この「ペルソナ」の特徴である責任感の強さや、組織・チームのために全力で役に立とうとする姿勢が発揮されない。この「ペルソナ」を派遣する場合は、チーム活動が多く相互コミュニケーションを重視するカルチャーの組織に派遣することや、留職期間中は仕事に対する考え方や価値観について同僚と対話するよう積極的に促すことが重要となる。

 伸び方にばらつきの大きい「ペルソナ」の成長トリガー

「5.イノベーター」「6.理性的実務家」は、留職プログラムの環境下における伸び方のばらつきが非常に大きいため、それぞれの成長トリガーを的確に把握し、その成長トリガーを刺激する確度を高めることが特に重要となる。

 ●目の前の環境に対する強い共感・感動をする「5.イノベーター」は大きく成長する。

 大きく成長した「5.イノベーター」とそうでないケースを分ける要因は、「目の前の環境に対する強い共感や感動」である。この「ペルソナ」を派遣する場合は、強い共感・感動を湧き上がらせる確率を高めるために、本人の関心・価値観に合致する組織へ派遣することや、留職期間中は、共感できる場面に遭遇するようなサポートや、そうした場面での内省の促しが重要となる。

目の前の環境に強い共感や感動をした
「タイプ5.イノベーター」の言葉

 留職先のメンバー達に、何の仕事をしているか、と聞いたら、返ってきた答えがとてもシンプルでした。目の前にいるこの子供達に学校に行って欲しい、田舎で暮らす女性の生活が偲びない、◯◯が好きだ、正しいと信じている、など。

 日本で聞いたら青臭くて恥ずかしくなってしまうことを目を輝かせながら話して、チャレンジを続けている彼らを見て、ナイーブで子供らしい夢こそ大事なんだ、と気づかされ、胸が熱くなりました。僕も、ナイーブで子供らしい夢を描いて、それを原動力にして、どんどん行動してやろうと思うようになりました。


 ●自分の弱みと向き合う「6.理性的実務家」は大きく成長する。

 大きく成長した「6.理性的実務家」とそうでないケースを分ける要因は、「これまで気づかなかった・見て見ぬふりをしてきた自分の弱みに向き合ったかどうか」である。この「ペルソナ」を派遣する場合は、本人の専門性や現時点の強みだけでは乗り越えられない困難な業務内容を設計することや、留職期間中は、妥協したり安易に成果に納得しそうなタイミングで更なる挑戦を促すことが重要となる。

自分の弱みと向き合った
「6.理性的実務家」の言葉

 留職中は、コミュニケーションをうまく取れない、自分でどこまでできるかわからない、設備も何もない中、目標を立てコミットしないといけないという状況で、自信を持って行動することができず、最初は本当に苦しみました。どうしたら自信を持つことが出来るのか悩みましたが、「頭」よりも「気持ち」を優先させて、失敗・誤解を恐れずにとにかく行動を積み重ねることで、最後は自信を持って未知の領域に挑み続けることができるようになりました。


 伸びにくいペルソナの成長トリガー

「3.直観的行動者」「4.内向的専門家」は、留職プログラムの環境下においては伸びにくい傾向にあるが、「ペルソナ」ごとの成長トリガーを強めることで、ある程度の成長が実現できる。

 ●大きなショックをきっかけに他者起点で考え始める「3.直観的行動者」は成長する。

「3.直観的行動者」は自分起点での発想が行動のエネルギー源になる傾向が強い「ペルソナ」である。そんな彼らが、現地の状況に心を揺り動かされて他者起点で発想し、相手のために何ができるかを一番に考えて行動しようとした場合には成長を遂げている。この「ペルソナ」を派遣する場合は、強いカリスマ性を持つリーダーがいたり、本人の関心・価値観に合致した課題に取り組んでいる団体に派遣することや、留職期間中は、心を動かされるような場面に遭遇するようなサポートや、他者視点での思考を促すような関わり方が重要となる。

大きなショックをきっかけに他者起点で発想・行動した
「3.直観的行動者」の言葉

 山岳地域の小さな農村を訪れ、そこで冬を迎える準備に励んでいる村人達に出会いました。彼らは朝から晩まで、機械を使う事なく、自分の手で作物を収穫して、自分たちが消費した後、余った収穫物をお金に変えて、必要な生活必需品を買って生活していました。この状況を知り、僕は、自分が本業で取り組んでいる製品も、留職先で自分が取り組んでいた商品も、彼らに売る気にはなれませんでした。なぜなら、彼らが一生懸命になって稼ぎ出したお金を頂く程に、自分が作っている製品に自信を持てないと考えたからです。エンジニアとしての仕事の原点、製品を作るビジネスの原点にある、一番大切なものに立ち返らされる経験でした。


 ●本人の専門性を超えた業務に挑戦する「4.内向的専門家」は成長する。

「4.内向的専門家」は本来、自身の専門性にこだわって行動する傾向が強い「ペルソナ」である。そんな彼らが、本業の専門性を超えた業務に取り組んだ場合には成長を遂げている。この「ペルソナ」を派遣する場合は、専門性を超えることが成果を出すための必要条件となるような活動内容を設計することや、留職期間中は、専門性の枠を飛び出して発想・行動することを積極的にサポートするような関わり方が重要となる。

自身の専門性を超えた業務に挑戦した
「4.内向的専門家」の言葉

 留職先で唯一のITの専門家としてすべての意志決定や実装の仕事を担うことになったため、結果的に、その領域を超えた様々な業務に携わることになりました。私が日本に戻った後の後任のITスタッフの人材要件定義から採用までのプロセスも、私が中心になって推進することになりました。こうした仕事は、唯一のITの専門家である私にしかリードできないものですが、自分一人では分からないこと・できないことばかりで、留職先のメンバーにアドバイスをもらったり、手伝ってもらったりして、何とかやりきることができました。これまでの自分は、すべて一人でこなして完結させたいという意識が強かったのですが、この経験を通じて、チームで働くこと・互いの強みを発揮して組織を動かしていくことで生み出せる可能性や楽しさを実感できました。