●時間的拘束

 スケジュールに時間の余裕を大きく増やすには、1日を最大限に有効活用できなくさせるような時間的拘束に対して、ノーと言うことから始める必要がある。これは、最も抵抗のないやり方(自分に来る依頼をすべて受ける)から抜け出し、「これは私の時間を投資するのにふさわしいだろうか」と自問するということである。

 たとえば、ある委員会にボランティアで参加してほしいと言われたとしよう。その取り組みは立派なのだが、あなたの個人的な情熱や職業人としての成長の目標とは合致しない。1ヵ月の仕事時間のうち最低3~5時間を充てる必要があり、1年では通算36~60時間になる。丁重にお断りする言い方としては、

「この委員会に誘っていただきありがとうございます。大変光栄なのですが、いまの仕事で精いっぱいなので、すみませんが辞退させてください。ご理解お願いします」

 また、あなたの参加が不可欠というわけではない会議への出席を求められることもある。実際には、あなたのチームの他のメンバーのほうが適しているかもしれない。会議への招待を丁重に断るには、

「会議の開催のお知らせとお誘いをありがとうございます。私たちのチームを代表して、ジェリーが出席します。彼はしっかりと役目を果たし、私たちが知るべき情報を報告してくれるでしょう」

 さらに、いつも頻繁に会っている人から昼食に誘われたが、あなたはやるべきプロジェクトがあったり、スポーツクラブに行きたかったり、単に休憩を優先したいときもある。そんな場合はこう言うとよい。

「お誘いありがとう。でも、すでに他の用事が入ってるんだ」

 自分の優先事項や必要性に合致しない時間的拘束を断るのは、最初は少し戸惑いがあるかもしれないが、最終的には時間の節約につながるのだ。

 ●タスク

 ほとんどの人は、自分が1日にこなせるよりもはるかに多くのタスクを、やることリストに入れている。とくに当てはまるのは、自分の仕事が終わっていないのに、誰にでも手を貸そうとする人である。この悪循環から抜け出すには、ノーと言わなければ始まらない。

 たとえば、本来あなたの仕事ではないことを頼まれたときは、ノーと言うべき当然の権利がある。だが過去にイエスとばかり言ってきたのであれば、周りの人々を再教育して、いちいち小さなことをあなたに頼む習慣をやめさせる必要があるかもしれない。以下のような返答をしていると、やがて理解してもらえるだろう。

「それは私の専門外ですね。シェリルの連絡先を教えますよ。きっと彼女なら喜んでその質問に答えてくれます」

「明日の会議の昼食の注文は、インターンのティムがやってくれるでしょう。彼に注文内容を回しておきますね」

「通常は、会議の主催者がプレゼンテーションのレポートを印刷しています」

 任意のプロジェクトを引き受けるように頼まれても、こなせる以上の仕事をいますでに抱えているときは、やはり丁重にお断りすべきである。たとえばこう伝えるとよい。

「とても興味深い取り組みのようですね。でも残念ながら、いまは引き受けている仕事で精いっぱいなんです。2、3週間(ヵ月)は手を付けられないでしょう。あなたにとって大切な仕事ですから、もっと時間と集中力を注げる人に回すのが一番だと思いますよ」

 最後に、出席中の会議で種々の遂行すべきタスクが話し合われている際、自分にはこれ以上のタスクを引き受ける時間がないときは、慎重になるべきである。口を出さず、傍観し、みずから買って出ないこと。実際、私のコーチングのクライアントには、話すたびに私が「自分から志願したのは、これで何度目ですか」と聞かざるをえない人がいる。助け舟を出さないことが、ノーと表明する最善の方法の1つなのだ。

 ●期限

 時には、あなたの責任範囲の仕事でも、依頼されたタイミングが問題になることがある。その場合、状況が許せば、理不尽なスケジュールにノーと言うのが有効だ。

 職場で求められる任務と役割は一様ではないので、職務によってはこの方策を使えないかもしれない。だがある程度の自由がきく人なら、提案された期限を延ばす方法がいくつかある。

 今日中に終えるべき何か小さな仕事を頼まれたが、実際には、期限にある程度融通が利くときには、代案を出そう。1日か2日の余裕があるだけでも、残業のフラストレーションは消え、大した問題ではなくなる。

「ぜひ対応したいのですが、(上司・クライアントなどとの)約束があって、今日は予定が埋まっているんです。時間をいただけるなら、金曜日にはお渡しできます」

 それで不機嫌になる人もいるかもしれない。だがうまくいけば、やがて彼らはもっと余裕を持って依頼することを学ぶだろう。書類の完成に必要な準備期間を、たとえば2、3日と規定している部署もある。

 夜や週末にも頻繁に仕事の連絡が来る場合、対応の限度を設定することができるなら、そうしよう。まったく息抜きをしないのは、燃え尽き症候群の大きな要因になる。

 予期せぬ残業を回避する1つの方法は、仕事の電話やメールから離れることだ。だがどうしても何か応える必要があるときは、次のように返事をしよう。

「こんにちは、ジョー。メール受領の旨、まずはお知らせします。オフィスに戻ったら、最初にあなたの依頼を検討します」

 最後に、あなた自身が取り組む必要のある大きなプロジェクトを引き受けたものの、自分の他の仕事を考慮すると当初の期限が妥当でない場合、いくつか交渉の方法がある。

 もし上司が関与するプロジェクトなら、他にも優先事項があることを説明し、まずどれに力を注ぐべきか指示を仰ごう。上司以外の人が関与し、あなたが期限を設定できるなら、対案を出そう。また、上司以外の人が関与し、あなたに期限を延ばす権限がない場合は、上司を交渉に巻き込む必要がある。最終的には、こんな伝え方になるだろう。

「この仕事の期限は今月末が望ましいとのことですね。ただ、ほかにも進行中のプロジェクトがありまして、間に合いそうにありません。来月中旬まで期限を延ばすことをご提案したいのですが、妥当でしょうか」

 こうしたやり取りから、請負業者などの他のリソースを引き込んだり、仕事のバランスを見直したりする話に発展するかもしれない。

 ノーと言うことは簡単ではない。だがそれだけの価値がある。本記事で提案した秘訣や言い方を自分の仕事で活用したいと思うなら、迅速に伝えることが大切だ。通常、断るのは早いほうが相手に受け入れられやすい。

 そして自信を持って伝えよう。過度に恐縮する必要はない。言うべきことは言って、前に進もう。ノーと言うことは、あなたの時間において最も大切なものにイエスと言うことなのだ。それを忘れないでほしい。


HBR.ORG原文:9 Ways to Say No to Busywork and Unrealistic Deadlines,  March 29, 2019.

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エリザベス・グレース・サンダーズ(Elizabeth Grace Saunders)
時間管理のコーチ。時間管理のコーチングとトレーニングを提供する、リアルライフEタイムコーチング・アンド・スピーキングの創設者。著書に、How to Invest Your Time Like MoneyDivine Time Management(以上、未訳)がある。より詳しく知りたい場合はwww.ScheduleMakeover.comを参照。