「自分事化」の効果:非連続性と再現性

「自分事化」には、2つの効果がある。

 1つは、非連続性である。コンフォートゾーンを超えたチャレンジに踏み出した結果、リーダーシップの発揮度が飛躍的に高まり、非連続な成長が起こる。

 上述のケースでは、彼は「自分事化」の結果踏み切ったオペレーション体制構築の活動を通じ、驚くほど多くの人たちの支援を取り付けることができた。

 また、留職先の急速な発展そのものも、インドの政財界の有力者を含めた、多くの人々の支援に支えられていることに気づいた。

 こうした中で、彼は「本当に社会の役に立つ仕事をすることが、企業活動を発展させる一番の方法」と考えるようになっていった。

 一方、自分の会社の歴史をひも解いてみると、まさに自社の創業者がそのような精神性を持って事業を興し、発展の礎を築いていたことにも気付いた。

 これらの気付きを通じ、彼にとっての留職プログラムは、自分に引き付けて創業者の理念を体感し、自らそれを体現する原体験に進化していった。

 もう1つは、再現性である。一度「自分事化」を起こした人は、更に高い壁にぶち当たった時にも、葛藤に打ち克ち、更なる行動への踏み切りを起こしやすくなる。

 上述のケースでは、「自分事化」の結果踏み切ったオペレーション体制の構築に一定の目途がついた後、更なる「自分事化」が起こった。

 留職先の活動と自社の現地法人との連携を実現したいという思いで、面識のなかった現地法人と留職先をつなぎ、障碍者支援のための合同プロジェクトを立ち上げたのだ。その過程では、「現地法人に本当に受け入れてもらえるのか」「残された時間でやりきることができるのか」という不安に苛まれた。

 しかし、一度目の「自分事化」を起こせた成功体験が自信につながり、不安に打ち克って更なる行動に踏み切ることが出来た。

新しいリーダーシップ開発論
[連載第1回]「留職プログラム」が切り拓くリーダーシップ
[連載第2回]「異質」かつ「成果が厳しく求められる」環境で育む強烈な原体験

 

中山 慎太郎
NPO法人 クロスフィールズ 副代表。2006年一橋大学法学部卒業。国際協力銀行、国際協力機構、三菱商事株式会社にて特に中南米のインフラ開発に従事後、2014年にクロスフィールズ参画。留職プログラムのプロジェクトマネージャ―、留職事業の事業統括を経て、経営管理部門と法人営業部門の事業統括を務める。2018年6月に副代表に就任。

小沼 大地
NPO法人 クロスフィールズ 共同創業者・代表理事。一橋大学社会学部・同大学院社会学研究科修了。青年海外協力隊として中東シリアで活動した後、マッキンゼー・アンド・カンパニーにて勤務。2011年5月、NPO法人クロスフィールズを創業。2011年に世界経済フォーラム(ダボス会議)のGlobal Shaperに選出、2016年に『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』の「未来をつくるU-40経営者20人」に選出される。国際協力NGOセンター(JANIC)の理事、新公益連盟の理事も務める。著書に『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)。


NPO法人クロスフィールズ
2011年5月創業。「すべての人が「働くこと」を通じて、想い・情熱を実現することのできる世界」「企業・行政・NPOがパートナーとなり、次々と社会の課題を解決している世界」の実現をビジョンに掲げ、留職プログラムを旗艦事業として、国内外の社会課題の現場と企業の間に、枠を超えた橋を架ける様々なプログラムを展開、そこで生まれる挑戦への伴走を続けている。