『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』では毎月、さまざまな特集を実施しています。ここでは、最新号への理解をさらに深めていただけるよう、特集テーマに関連する過去の論文をご紹介します。

 2019年6月号の特集タイトルは「データドリブン経営」である。

 GAFAが業種・業態の壁を超えて覇権を握り、世界中で既存市場のプレーヤーを脅かしている。彼らの勢いに飲み込まれることなく生き残るには、すべての企業がデータドリブン経営を実践しなければならない。それは製造、営業、人事ほか、あらゆる業務の生産性向上を実現するものであり、新たな競争優位の源泉となることが期待される。

 マッキンゼー・アンド・カンパニー東京支社パートナーの黒川通彦氏らによる「データドリブン経営の本質」では、データドリブン経営とはそもそも何か、そしてどのようなインパクトをもたらすのかを業界や部門領域に分けて明らかにする。さらに、その導入に当たってぶつかるであろう4つの壁を示し、その壁を壊すステップを提示する。データドリブン経営の本質は、企業内にデータ分析者や人工知能(AI)技術を取り入れるだけではない。組織の全社改革にある。

『ハーバード・ビジネス・レビュー』シニアエディターのスコット・ベリナートによる「データサイエンスと経営を結び付ける方法」では、データドリブン経営の実践論が示される。データサイエンスの評価が高まっているが、その力は十分に発揮されていない。担い手であるデータサイエンティストに対しての誤解があるからだ。経営者は彼らに、収集データを経営戦略に沿って分析し、結果を平易に説明してくれる達人技を期待するが、そうした人はまず見つからない。そこで本稿が提示する解決策は、さまざまな才能を持つメンバーを集め、チームで、データサイエンティストの任務を担うことである。

 楽天常務執行役員チーフ・データ・オフィサーの北川拓也氏へのインタビュー「データの力で隠れた価値を見つけ、形にする」では、データドリブンな組織に変わるためのリアルが語られた。三木谷浩史氏が1997年に創業したベンチャー企業は、「楽天市場」という日本最大級のインターネット・ショッピングモールを運営し、世界30カ国以上で70を超えるサービスを展開する巨大グローバル企業に成長した。そうして多種多量なデータを取り扱うようになったことで、その価値を最大限に活かすという新たなミッションが生まれた。楽天でチーフ・データ・オフィサーを務める北川拓也氏は、同社でそのミッションを牽引する。データドリブンの組織に変わるには、トップが明確なビジョンを示すことに加え、現場がビジョン達成に向けて泥臭く汗をかくことが重要だと北川氏は語る。

 滋賀大学教授であり、元大阪ガスビジネスアナリシスセンター所長の河本薫氏による「現場の能力を引き出すデータ分析の6つの型」では、NTTドコモやAGC(旧旭硝子)の事例を挙げながら、現場業務の意思決定を6種類に類型化して、現場の力を的確に引き出すことでデータ分析を成功させる型を提示する。ビッグデータという言葉が流行して以来、日本企業は、分析に強い人材を育成し、工場や顧客のデータを収集するシステムを構築し、さまざまなデータ分析プロジェクトを立ち上げてきた。しかしながら、多くの企業は投資に見合ったビジネス成果を得られていないのではないだろうか。大阪ガスでデータ分析組織をつくり、現場向けに成果を出してきた筆者は、その原因は、分析力やデータ量よりもむしろ、現場の力とデータ分析を融合させるプロセスの軽視にあると考える。

 カリフォルニア大学サンタバーバラ校のポール・レオナルディ教授らによる「ピープルアナリティクスで人事戦略が変わる」では、組織の改善につながるピープルアナリティクスを理解するための6つのポイントと、応用のためのフレームワークを提示する。社員データから抽出した統計学的な知見を用いて、人材管理の意思決定を行う「ピープルアナリティクス」は、近年多くの企業が、取り組む優先度が高い領域だと考えている。しかし、企業の多くは個々の社員に関するデータしか使っておらず、それ以上に重要な社員間の相互作用に関するデータに目を向けていない。