これらの特性は、優れたリーダーシップにおいて一般に重要な特性と同様の、あまりに明白なものと思えるかもしれない。だが、「一般的に優れたリーダーシップ」の評価・育成と、包摂的リーダーシップの評価・育成における違いは、次の3つの具体的な知見に示されている。

 第1に、調査においてほとんどのリーダーは、部下が自分を包摂的であると感じているかどうかが定かでなかった。具体的には、自分の包摂的リーダーシップの能力に関する自己判断が、部下の認識と同水準だった人はわずか3分の1(36%)で、別の3分の1(32%)は自分を過大評価しており、残る3分の1(33%)は自分を過小評価していた。もっと重要なこととして、包摂力の評価の高低に実際に影響を及ぼす具体的な行動とは何かを、明確にわかっているリーダーはほとんどいなかった。

 第2に、包摂的なリーダーであるという評価は、回答者全員の評点の「平均」ではなく、回答者の評点の「分布」により決めている。たとえば、「リーダーは多様性と包摂に全力で取り組んでいる」と、部下が平均的に評価したとしても、十分とはいえない。5点満点の評価尺度(「非常にそう思う」から「まったくそうは思わない」まで)を用いているため、評価の平均点が意味するのは、同意者もいれば反対者もいるということかもしれない。

 包摂的なリーダーとなるためには、部下全員の評価が「自分は公平に敬意を持って扱われており、尊重され、帰属意識を持ち、心理的に安全である」ことについて「そう思う」、または「非常にそう思う」となるよう、万全を期さなければならない。

 第3に、包摂的リーダーシップとは、時おりの壮大な振る舞いではなく、日常的なちょっとした言葉や行動で表されるものだ。我々の調査対象者における、包摂的なリーダーの上位25%と下位25%に関する定性的フィードバックの比較から、包摂的リーダーシップは毎日、目に見える形で実践されていることがわかった。

 調査で得られた以下の逐語回答は、最も包摂的なリーダーの具体的な行動様式の一部を浮き彫りにしている。

・自分の弱みを表に出す:「自分の知らない情報について、率直に尋ねてくれる。謙虚で気取らない態度で仕事をする。そのため部下は気が楽になり、自分の意見を口に出して表明できるが、それを尊重してくれるリーダーである」

・文化的な違いを学ぶ:「異なる文化の特徴(共通の言語、慣用句、慣習、好き嫌い)と文化的重要事項を学ぶために時間を費やす」

・部下を一人の人間として認識する:「100人超のチームを率いているにもかかわらず、一人ひとりを名前で呼び、個々人の仕事の流れと内容を把握している」

 以下の回答には、最も非包摂的なリーダーの行動のいくつかが示されている。

・威圧的である:「歯に衣着せず、威圧的であるため、周囲の人は会議で意見を述べづらく、会話に参加しにくい」

・えこひいきをする:「毎回同じ業績優秀者に仕事を割り当てるため、仕事の負荷が持続できない状態になる。チームの新しい人に、実力を証明するチャンスを与えるべき」

・異なる意見を無視する:「特定の事項に関して非常に凝り固まった考えを持っており、別の意見を理解してもらうのが難しいことがある。部下が疑問の声を飲み込む、あるいは異なる見解の提示を差し控えるといったリスクがある」

 リーダーの言動は、部下に多大な影響を及ぼす。この影響は、リーダーが多様性に富むチームを率いている場合にはいっそう顕著であることが、我々の研究から示されている。リーダーが些細な排他的言動を行うことや、部下の排他的な行動が見過ごされることで、包摂性に欠ける現状がたやすく助長されるのだ。

 包摂的な文化を生み出すには、エネルギーと意図的な努力が必要だ。その第一歩は、リーダーが自分の日々の言動にもっと注意を払い、必要に応じ修正することである。

 そのための4つの方法を、以下にご紹介しよう。