長谷部智也
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部
金融サービス マネジング・ディレクター

東京工業大学大学院修了、ミシガン大学ビジネススクール EMBA。三井住友銀行、ベイン・アンド・カンパニー、TSIホールディングス、マスターカード等を経て現職。国内大手総合アパレルのTSIホールディングスでは、外部招聘社長の右腕の上席執行役員として、グループ全社のターンアラウンドを推進し、不採算事業の廃止、調達・サプライチェーンコストの最適化、顧客ロイヤルティ向上の仕組導入、ナチュラルコスメ企業のM&A等を通じ、2年間で利益3倍増を実現。マスターカードでは、日本地区上席副社長兼営業統括責任者として市場シェア3倍増を実現するシェアシフト・ディールを統括。

長谷部 一般にリセッションへの対応が遅れがちな企業のパターンとして、環境変化が遅い業界の勝ち組企業、環境変化が予測の範囲内だった業界の勝ち組企業、急激な環境変化にも対応してきた勝ち組企業の3つが挙げられます。

 したがって、今の勝ち組企業も要注意です。先の見えない経営環境において、ダーウィンの進化論でいう「適者」となるためには、変革を実現するためのチェンジリーダーを投入するといった経営トップの思い切った決断が求められます。

――短期間で再上場を果たした米GM(ゼネラルモーターズ)のターンアラウンドを研究されています。

長谷部 はい。GMは「グッドカンパニー(良いGM)」と「バッドカンパニー(悪いGM)」に分けて、不要な資産(廃止予定のブランド、工場)を切り離しました。それによって、上場予定会社(新生GM)は即座にコストカットが可能になり、新しいオペレーションをゼロから構築して短期間で再上場を果たすことができたのです。このやり方は、今の時代の日本企業のターンアラウンドにも使えるのではないでしょうか。

 既存の組織のままでは、新しいオペレーションを構築するのは難しいからです。最新のテクノロジーを活用してゼロベースで構築したほうが早く、コストも安くなります。

事業再構築にデジタル技術の活用は不可欠

――コスト負担が増大し、収益圧迫が加速しているような企業はどう対応すべきですか。

上野 コストダウンだけを目的とする対応ではうまくいかない。人件費を削るために極端にリストラすると、オペレーションが回らなくなるからです。ですから、単なる財務リストラではなく、デジタル技術を活用したバリューアップやターンアラウンドが重要になります。デジタル技術を活用したキャッシュフロー改善、コスト削減、売上高拡大が短期間に相当の財務インパクトをもたらす時代になっています。また、SNSなどデジタルを活用した市場・投資家との戦略的対話は、顧客を引きつけるとともに、株価にも影響をもたらします。

 こうしたターンアラウンドは、従来の財務リストラやバランスシートを改善する会計士や、倒産後の処理を行う弁護士など、士業の世界の人材では務まりません。景気後退を迎える中、倒産寸前に追い込まれる前に企業が経営立て直しを行うには、先ほど長谷部が指摘したようにチェンジリーダーとなる「デジタル・ターンアラウンド・マネジャー」の投入が必須となるでしょう。

 このデジタル・ターンアラウンド・マネジャーには、従来のターンアラウンド経験に加えて、デジタル・トランスフォーメーション、デジタルSCM(サプライチェーン・マネジメント)、デジタルマーケティングといったデジタル技術を活用して企業のオペレーションを改革・改善し、企業価値評価の指標EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)やキャッシュフローの改善を実現する能力が求められます。