●人と職務のミスマッチ

 能力とは主に、適所で発揮される個性だ。ほとんどの人が、ある特定の仕事、文化、状況で他の場合よりも力を発揮するのは、これが理由である。組織心理学者はこれを「個人と職務の適合性(person-job-fit)」と呼んでおり、「個人の態度・価値観・能力・性格」と「仕事・役割・組織の特徴」の適合性を数値化して測定する。

 ここでの問題として、組織は、求職者について正しく評価したとしても、自社での役割、そして特に自社の文化の評価はそれほど正確にできないことが多い。このため非常に多くの組織が、自社を実際以上に包摂的で、多様性に富み、革新的で、向社会的であると見なしている。それは正確な自己評価というよりも、希望的観測だ。

 このことは、役割と組織に関する求職者の認識に、明らかに影響を与える。彼らが組織の文化を本当の意味で経験し、その役割で自分に真に要求されるものを理解するには、しばらく時間がかかるかもしれない。

 この問題に対して求職者ができることは、何だろうか。唯一の対策は、自分の宿題を済ませておくこと、つまり、その組織を入念に調べて、当該職務について自分がよく理解し驚くことのないよう、万全を期すことだ。

 幸いなことに、Glassdoor(グラスドア)のようなウェブサイト(職場版トリップアドバイザーのようなもので、最近では企業のリーダーに関する情報も増えている)により、口コミを活用することが可能だ。ただし、当然、それらも完璧ではない。面接官に詳細な質問を尋ねたり、従業員と話をしたり、同職か似た職種に就いている優秀な現職社員と自分に共通する点が多いかどうかを見極めたりすることで、適性を予測するのに役立つはずだ。

 もちろん場合によっては、組織や役割に対する自分の主要な貢献は「ぴったり適合しない」ことかもしれない。これは、組織における思考の多様性というメリットにつながる。とはいえ、自分のプロフィールと優秀な従業員のプロフィールとの間に類似性を見出したら、自分がうまく適合し能力を発揮できると考えてよいだろう(実際に、科学に基づく評価ツールはこの方法、すなわち優秀な現職社員へのベンチマーキングによって、予測の正確性を高めるよう調整されている)。

 ●意欲の欠如

 個人と職務のミスマッチには、エンゲージメント(仕事や組織への意欲や愛着)の欠如がしばしば副作用としてつきまとう。だが、一般的な職場で見られる熱意とモチベーションの欠如の蔓延には、他の複数の理由も潜んでいることを留意すべきだ。

 事実、意欲欠如の最も一般的な要因の1つは、貧弱なリーダーシップである。私が近著、Why Do So Many Incompetent Men Become Leaders?で示したように、仕事で力を発揮できない人材が非常に多い理由、そして有能人材や花形社員が仕事を辞めたり、従来型の雇用形態からも完全に離れたりする理由は、マネジメントの機能不全、なかでも男性型の悪しきリーダーシップなのだ。

 この解決策は単純ではない。自分の上司をもっとよいリーダーと替えようと、突然決めることはできない。自分を触発し導いてくれて、仕事ぶりについて客観的で建設的なフィードバックを与え、毎朝目覚めた時に仕事のことを考えるとワクワクさせてくれるような上司が突然現れることはない。

 そして、たとえ自分の上司がこれらすべてに当てはまるとしても、その上司自身に意欲がない可能性もある。その理由はおそらく、当人のさらに上の人間が無能、あるいは意欲がないからだ。

 しかし、たとえ上司から逃れることができないとしても、みずからの意欲、ひいてはパフォーマンスを高めてくれるであろう実証済みの手法がいくつかある。

 たとえば、好奇心を持って学ぶ時間を見つけることによって、仕事がより意義深いものとなる。また、同僚と関係を築き、仕事における人間関係の側面を豊かにすることも、モチベーションを非常に高めてくれる。

 最後に、自分に意欲が欠けていることを上司に伝えるのも有効な場合がある。上司は、そのことに気づいていないかもしれないからだ。特に上司が部下の能力を高評価している場合には、何らかの助力を与える気になるだろう。

 ●社内政治

 現代の職場における人材マネジメントの慣行は総じて、かつてよりも公平でデータ重視となっている。しかし、改善すべき点は依然として数多くある。

 企業のリーダーたちは、自社が能力主義で人材を引きつけていると考えている。だが現実には、たとえ高い能力の人材を自社に引き寄せられたとしても、それら有能人材は、組織文化につきまとう有害で身内びいきの側面に対処していく方法を学ばなければならない。そのなかには、基本的な社内政治力を学ぶことも含まれる。

 キャリアや幹部支援のコーチングの多くで、ソフト面のスキルと政治的スキルの向上に焦点を当てているのは不思議ではない。また、個人の政治的手腕は、才能と専門的スキルに関係なく、キャリアの成功に寄与することが明らかになっている。概して、組織文化の汚染と腐敗が進んでいるほど、取り入るのが上手な人が出世する。

 バクテリアが汚染環境で繁殖するのと同じだ。どんな組織であれ、個人のキャリアの成功と、当人の実際のパフォーマンスや能力との間に明白な開きがある場合、この状態が顕在化している。

 これに対処するには、社内政治の存在を意識し、それに加わるしかないが、自分の魂を売ることはないようにしてほしい。いずれにせよ、能力さえあれば自分が認められるなどと考えるのは甘い。むしろ有能な人ほど、敵も多くできるだろう(有害で政治的な組織では特に)。

 どうにもならない事態に直面したら、最善策は他の組織に移るか、少なくとも部署を移ることだろう。政治はどんな組織にも存在するものだが、組織によっては他よりもはるかに政治的でないところもある。

 ●個人的な事情

 この最後の理由は、言及するまでもなく明白だ。かつてないほど没頭を余儀なくされ四六時中動いている仕事の世界では、人には個人としてのプライベートな生活もあるということが容易に忘れられがちだ。

 どんなに意欲があって有能な従業員でも、個人的な問題や挫折により、キャリアの成功が妨げられることはよくある。ワーク・ライフ・バランスに関する議論が絶えないのはこのためだ(仕事と「生活」の境目が薄れている今日でも)。

 優れた上司や協力的な雇用主であれば、部下の事情を理解したいと望むだろう。そうすれば部下は、上司の支援意図を常に確信できるため、自分の能力に見合った成果を上げることができ、長期的にリーダーに感謝して貢献することになる。

 要するに、能力は必要だが、仕事で卓越し影響を及ぼすための十分条件ではない、と考えておけばよい。

 自分の関心、信念、そして私生活における諸々の活動に、仕事がマッチするように最適化しよう。そして、組織の力学を支配する目に見えない人間関係の作用に気を配ることだ。それが最終的に、自分の能力を最大限に発揮するのに役立つだろう。


HBR.ORG原文:4 Reasons Talented Employees Don’t Reach Their Potential, March, 18, 2019.

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トマス・チャモロ・プレミュジック(Tomas Chamorro-Premuzic)
マンパワー・グループのチーフ・タレント・サイエンティスト。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンとコロンビア大学の経営心理学教授、およびハーバード大学のアントレプレニュアル・ファイナンス・ラボのアソシエイトも兼務する。近著にWhy Do So Many Incompetent Men Become Leaders? (And How to Fix It)(未訳)がある。ツイッター(@drtcp)やウェブサイトでも発信している。