日本企業で働くビジネスパーソンを、新興国で社会課題の解決に取り組むNPO等に派遣し、本業で培ったスキルを活用して現地の発展に貢献してもらうと同時に、その過程で留職者自身のリーダーシップを高める「留職プログラム」。NPO法人クロスフィールズが今日まで8年にわたって展開している。その記録データの分析で明らかになった「新しいリーダーシップ開発論」についての全8回連載の第2回をお送りする。


 留職プログラムは、環境の異質性(大企業と小規模団体、企業とNGO、日本と海外、先進国と途上国、リソースフルとリソースレスなど)と、成果が厳しく求められる度合(相手からの期待、背負うプレッシャー)の両方が、極めて高い水準にある。この点において、下図の通り、他の類似した人事施策と大きく異なっていると、私たちクロスフィールズは考えている。

 こうした条件で、留職者は、次の3つの強烈な原体験をする。

(1)「業務」が与えられず、「課題」を切り出して「仕事」を創り出す原体験

 留職プログラムでは「業務」が与えられることがほとんどない。与えられるのは、留職先が抱えている「課題」である。留職者は、「求められていること」「できること」「やるべきだと思うこと」を考え、自ら課題を切り出し、仕事を創り出していかなければならない。

 一般に、大企業の若手社員は、与えられた業務を高いクオリティで迅速にこなすことには習熟しているが、課題を切り出して自身の取り組むべき仕事を創ることには慣れていない。

 そんな彼らが、課題のみが突き付けられ、何をすべきか、自分で考えて踏み出さねばならない状況に身を置く。何とか一歩踏み出してからも、状況は刻一刻と変わる。今の方向性で本当に正しいのか、このまま進むべきか方向転換すべきか、常に葛藤にさいなまれ、悩みながら走り続ける。これが一つ目の強烈な原体験だ。

(2)新興国のソーシャルセクターのリーダーたちと協働する原体験

 留職先のほとんどは、創業5~10年程度、従業員50名未満程度の、ベンチャー気質の強い団体だ。率いている創業者も20代、30代が多い。彼らは、欧米で教育を受けていたり、外資系企業でのビジネス経験を持っていたりしながら、未解決なままになっている社会課題を解決するために、リスクを取って事業を興した人々である。

 彼らの社会課題や自国の未来に対する圧倒的な当事者意識と志の高さを間近で感じながら、留職者は協働する。これが二つ目の強烈な原体験だ。

(3)社会課題を「体感」する原体験

 貧困、環境汚染、無電化・・・テレビやインターネットで社会課題を扱った映像を見聞きしたことのある人は多いだろう。しかし、実際に現場を訪れ、課題の真っ只中に身を置いたことのある人は、どれくらいいるだろうか。

 留職者は、それぞれの留職先で、課題の真っただ中に身を置き、それを五感で「体感」する。貧しいスラムの町がたてる音や匂い。電気の通っていない農村の夜の暗さ。それらを体感した時に湧き上がってくる気持ち。これらをエネルギー源にして、本業で培ったスキルと経験を活かして課題の解決に奔走する。これが三つ目の強烈な原体験だ。