(3)混乱した感情:「気が動揺していて、この仕事ができない」

 この罠に陥る状況:従業員は、不安、怒り、抑うつなどのマイナスの感情に駆られているため、仕事を遂行するモチベーションが持てない。

 罠から救い出す方法:まず、話が外に漏れない環境をつくる。そして、なぜ気が動揺しているのか理解したいこと、積極的に傾聴したいことを当人に伝える。

 このとき、賛成の意も反対の意も表してはならない。動揺の原因について当人の考えを尋ね、断定的な判断は避ける。

 次に、当人の述べたことを簡潔に要約して繰り返し、理解が正しいか尋ねる。「違います」という返答が戻ってきた場合には、謝って、「よく聞いているのでもう1度話してほしい」と伝える。従業員は自分が理解されたと感じると、マイナスの感情が少し和らぐものだ。

 上司は、聞いた内容について検討したい、翌日に話し合いの予定を入れたい、と伝えるとよいだろう。そうすることで、相手は感情のコントロールを回復しやすくなる場合が多い。

 ここで留意すべき点がある。怒りとは、「自分が他者または何らかの外的要因によって、傷つけられた(あるいは傷つけられようとしている)」という思い込みだ。怒りを抱えている従業員に対し、怒りの素を別の視点から捉えてみるよう促すとよい。その外的脅威は意図的な悪意によるものではなく、情報の欠如や偶然に起因していると考えさせるのだ。脅威を消し去るためにどう力を注げばよいかを提案しよう。

 抑うつは、「自分の内面的な何かが不十分であり、それは自分ではどうすることもできない」という思い込みから生じることがある。このような従業員に対しては、「あなたは不適切でも不十分でもない」と指摘し、仕事の効果的なやり方にもっと注力する必要があるだけだ、と助言することが往々にして有効だ。

 マネジャーは、そのための手助けをしよう。不安や恐れを感じている従業員はえてして、仕事への取り組み方に対する支援や、「力はあるのだから、もう少し努力すれば達成できる」という励ましの言葉に、前向きな反応を示すものだ。

 時間や努力を費やしても従業員の感情が落ち着かない場合や、動揺の原因が職場外にあるような場合には、カウンセリングを受けさせるのが望ましいと思われる。

(4)原因特定における過ち:「どこが問題なのか、わからない」

 この罠に陥る状況:従業員は仕事で苦労している理由を正確に突きとめられない、あるいは自分の力の及ばない何かを理由にしているため、その仕事をするモチベーションを持てない。

 この罠から救い出す方法:困難の原因について、明確に考えることができるよう従業員を支援する。

 原因特定における過ちは、従業員があたかも業務不履行の言い訳を探しているかのような場面で見られることが多い(病欠の連絡を入れる、手一杯であるとか「時間が足りない」と主張する、仕事を同僚に押し付けようとする、など)。このような回避行動をやめさせるには、仕事が達成できそうにないと思われる理由を正確に特定できるよう、マネジャーが手助けすればよい。

 当人の力が及ばない原因を示した場合には(他人のせいにしたり、自身が持つ改善できない欠陥のせいにしたりするなど)、当人の力で対処可能な他の原因を指摘しよう。たとえば新たな方策を採用する必要性や、より綿密な計画の必要性である。

 モチベーションを阻むこれら4つの罠を脱する秘訣は、従業員による仕事の着手、持続、精神的努力を妨げるものは何かを、より包括的に考えることである。研究から示唆されるように、部下のモチベーションの問題を診断するために上司ができることはたくさんある。

 モチベーションが低下した場合には、どの罠に陥ったのかを正確に突きとめ、的をしぼった正しい対策を適用しよう。すると、再び前進させることができるのだ。


HBR.ORG原文:4 Reasons Good Employees Lose Their Motivation, March 13, 2019.

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リチャード E. クラーク(Richard E. Clark)
南カリフォルニア大学名誉教授。心理学・テクノロジーを担当。同校センター・フォー・コグニティブ・テクノロジーの共同ディレクター。ロサンゼルスに拠点を置くトレーニング・サービス会社、アトランティック・トレーニングの創設者兼CEO。

ブロー・サックスバーグ(Bror Saxberg)
チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブのラーニング・サイエンス担当バイスプレジデント。米大手教育会社カプランの元チーフ・ラーニング・オフィサー。ハーバード大学医学大学院で医学博士号、マサチューセッツ工科大学で博士号を取得。