(1)価値観の不一致:「この仕事に価値をあまり感じられない」

 この罠に陥る状況:従業員が重視する物事に仕事が関連・寄与しないため、モチベーションが生まれない。

 罠から救い出す方法:その従業員にとって重要な物事は何かを突きとめ、仕事と結びつける。

 マネジャーによくあるのは、自分自身のモチベーションの源泉は何かを考え、同じことが部下にも当てはまると思い込むことだ。部下としっかりと話し合い、相手の視点で考え、当人にとって何が大切なのか、その価値観が仕事にどう結びつくのかを突きとめよう。

 仕事における価値観には複数の種類がある。1つは「興味関心の価値」、つまり、その仕事でどれだけ知的欲求が満たされるかである。この価値を感じさせるには、仕事のどんな側面に従業員が心からの興味を持てるかを明らかにしよう。

 2つ目は「アイデンティティの価値」、すなわち、仕事で要求される一連のスキルが、従業員の自己概念とどれほど一致しているかである(例:自分を分析的だと考える人は、難しい問題解決の仕事に価値を感じやすい)。従業員が自分のアイデンティティや役割の重要な部分であると見なしている能力(チームワークの促進、分析的な問題解決、プレッシャーの下でやり遂げるなど)が、目の前の仕事でいかに必要とされているかを指摘するとよい。

 3つ目の「重要性の価値」は、その仕事がいかに重要か、である。チームまたは会社の使命を果たすうえで、その仕事がいかに重要かを強調する方法を見つけよう。

 最後に「有益性の価値」は、その仕事を達成(または回避)することの「代償」と「より大きな恩恵」の兼ね合いである。この特定の仕事を完了することが、従業員のより大きな目標にいかに寄与し、いかにマイナスの結果を回避することになるかを示す方法を見つけよう。望まない仕事を我慢して遂行してほしいと部下に頼むことも、時には必要かもしれない。その際、完遂によって得られる将来的な恩恵や、回避できるトラブルをはっきり示そう。

 従業員が最初は仕事に価値を見出せないでいるが、価値観の不一致が明白ではない場合、マネジャーの最善策は、複数の価値に訴えかけてみることである。そのうちの1つか2つが、当人の心に響くかもしれない。

(2)自己効力感の欠如:「自分にはこの仕事ができると思えない」

 この罠に陥る状況:従業員は自分が仕事を遂行する能力に欠けると信じているため、モチベーションを持てない。

 罠から救い出す方法:従業員の自信と有能感を培う。

 これを実行する方法はいくつかある。1つは、過去に同様の困難に打ち勝った当人の経験を、マネジャーが指摘することである。あるいは、同様の困難を当人も可能な方法で克服した、他の人の実例を話すのもよいだろう。段階的に難易度が上がる課題を与えたり、現在の仕事を対処可能な単位に分割したりして、部下の自己効力感を培おう

 自己効力感に欠ける従業員は往々にして、特定の仕事をやり遂げるには、自分が持てるよりもはるかに多くの時間とエネルギーをつぎ込む必要があると思い込んでいる。このような従業員に対しては、達成する能力はあるが必要な努力を見誤っているかもしれない、と説明することだ。さらなる努力がきっと成功を導くはずだという確信を表明しながら、尽力を促そう。仕事の進行に応じて、マネジャーがさらに何らかのサポートをするとよい。

 時として、従業員は正反対のモチベーションの罠に陥る。つまり、自分の能力が高すぎると感じることで、モチベーションを失う場合があるのだ。上司がチームのモチベーションを管理するうえで、過大な自己効力感を持つ部下はひときわ困難な課題となる。自信過剰な人はしばしば、自分が何をしているかに確信的でありながら、過ちを犯すのだ。その際、欠陥があるのは仕事の成果基準のほうだと主張し、自分の失敗に対しては何の責任も負わない。

 このような従業員に対処する場合には、彼らの能力や専門知識を疑問視しないようにすることが重要だ。その代わりに、仕事の要件に関する彼らの判断の誤りを明確に示し、異なるアプローチが必要であると納得させよう。