読者の皆様は、「留職プログラム」をご存知だろうか。留学ではなく、留職である。日本企業で働くビジネスパーソンを、新興国で社会課題の解決に取り組むNPO等に派遣し、本業で培ったスキルを活用して、現地の発展に貢献してもらうと同時に、その過程で留職者自身のリーダーシップを高めるプログラムである。NPO法人クロスフィールズが今日まで8年間、展開している。その間の留職者の成長データを分析することで明らかになった「新しいリーダーシップ開発」について、同法人の副代表と代表が、『採用基準』『生産性』(ダイヤモンド社)の著者である伊賀泰代氏の協力を得て、8回の連載で詳述していく。


「留職プログラム」は、2011年の創業時から展開しているクロスフィールズの旗艦事業だ。今日(2019年3月末時点)までの8年間に、日本を代表する大企業39社に、次世代リーダー育成の研修として導入頂き、173 名(現在派遣中も含む)のビジネスパーソンを新興国の社会課題の現場に派遣してきた。エンジニア、研究職、営業職、人事・財務等のコーポレート職など、多様な派遣職種で展開中である。

 このプログラムは、派遣者(以下、留職者)を送り出す日本企業にとっては、次世代リーダー育成のための研修である。一方、派遣先団体(以下、留職先)にとって、留職者は、単なる研修生ではない。自団体が対峙する社会課題・経営課題を解決するためのプロフェッショナルとして捉えている。

 留職者は、留職先からの大きな期待とプレッシャーを受けながら、職場とは全く違う新興国の環境で、企業の看板を外して社会課題の現場に飛び込み、自分の持てる力を出し切って問題解決に挑む。このプロセスが、留職者のリーダーシップを育む。

 このように、留職先が対峙している新興国の社会課題解決の加速と、派遣元企業の人材育成の2つを両立させているところが、留職プログラムの大きな特徴だ。

派遣者は20代後半から30代前半のケースが多い。

 これらの両立のため、以下の2点を特に重視して、プログラムを設計している。

 第1が、留職者一人ひとりに合わせたテイラーメイドの派遣先マッチングである。

 プログラム導入にあたっては、導入企業の人材育成担当者と、導入目的や留職者にどう成長してもらいたいかのゴールイメージを共有するところから始める。

 留職先のマッチングに際しては、留職者一人ひとりに対してそのスキルや経験についてインタビューを行い、ハード面のスキルのみならず、性格上の特性等も踏まえ、クロスフィールズのアジア10か国1,000団体を超えるパートナー団体の抱える経営課題・受け入れニーズとマッチングさせて派遣先を決めていく。

 第2が、プロジェクトマネージャーによるハンズオンのサポートである。

 クロスフィールズの担当プロジェクトマネージャーが、留職プログラムの全プロセスを通じて、留職者に伴走する。特に、現地業務の開始直後は留職者に同行して現地入りし、留職者の現地活動の立ち上げをサポートする。

 その後も、留職者と定期的なオンラインミーティング(1on1セッション)をしながら、留職者が得た学びの言語化や悩みなどの相談に乗っていく。プロジェクトマネージャーとの継続的な対話を通じ、留職者が自身の変化に気づきやすくなることや、学びの言語化をしやすくすることがそのねらいである。