人材採用をより効率的に行うには、対象者の「何を評価すべきか」と「どうやって評価するか」という2つの重要な問いを考える必要がある。本記事では、成果を上げるために共通の3つの資質を示したうえで、有効な評価方法を紹介する。
『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2019年5月号より、1週間の期間限定で全文をお届けする。


 人材の採用や育成のために対象者の能力(タレント)を評価しようとする時、答えなくてはならない2つの重要な問いがある。「何を評価すべきか」という問いと、「どうやって評価するか」という問いだ。

何を評価すべきか

「何を評価すべきか」は、事情によって異なり、一概に言うことはできない(たとえば、脳神経外科医に求められる知識とスキルは、弁護士、銀行家、あるいはソフトウェアエンジニアに求められるものとは異なる)。

 だがその一方で、仕事や役割が何であれ、成果を上げるために必要な「共通の資質」があることも確かだ。

 そのような資質の第1は、学習能力と問題解決能力である。これがあれば、正しい判断を下し、課題を達成することができる。

 第2に、苦労をいとわずハードワークに耐えられるか。

 第3に、一緒に働いて成果を上げられそうか、好感が持て、一緒にいて気持ちがよいかどうかである。

 これらエンプロイアビリティ(雇用されうる能力)を構成する3つの資質と、雇用されたのちに実際に成功できるかどうかは、その人物が持つ心理学的特質と強い関連性がある。

 第1の資質は、知能指数(IQ)と好奇心、そして意思決定スタイルと関連がある。

 第2の資質は、モチベーションと大志に関連している。

 第3の資質は、EI(感情的知性)と対人関係スキルに関連している。他の人より賢く、熱心に働き、人柄もよい人は、常に求められているといえる。

どうやって評価するか

「どう評価するか」という面では、過去5年間、主にデジタル革命とスマートフォンの普及により、才能ある人物を見出す雇用者側の能力は大きく進歩した。

 とりわけ、以下に紹介する3つの方法は、開発途上ではあるが、人材採用を効果的に進めたい企業にとっては、個人の才能を定量化し、将来のパフォーマンスを予測するための手段として検討する価値があるだろう。

(1)行動分析

 従業員の毎日の仕事ぶりをモニターする、あるいは測定することで、能力を評価している組織がある。大規模コールセンターは、この方法を利用した先駆者だ。長年にわたり、オペレーターの対応件数と休憩回数をトレースし、対応ごとの顧客満足度を記録することで、パフォーマンスを評価している。

 今日、この種の方法は、さまざまな環境で利用されている。たとえば、メールの記録から、営業担当者の将来の売上げを予測している会社もある。

 日々の行動を追跡すると、膨大なデータが生成される。それは人間が解釈できる量をはるかに超えているので、この方法を利用する企業は、アルゴリズムを使って個人、チーム、会社全体を診断している。

 会社が従業員のパフォーマンスを評価するために個人データを集めることは認められているので、この方法は、従業員の能力測定において大きな可能性を持っている。

 従業員だけでなく、ペプシコやスターウッド・ホテルズ・アンド・リゾートのように、従業員データを分析し、成功する可能性の高い従業員のプロファイルを作成していれば、それを適用し、社外の人材に対してもベンチマークとして利用することができる。

(2)ウェブ・スクレイピング

 個人データを分析するアルゴリズムの中には、人々のウェブ上やソーシャルメディア上での活動をもとに、仕事上の潜在能力や適性を定量的に推定するものもある。

「ウェブ・スクレイピング」と呼ばれるこの手法は、採用側企業が応募者のIQや性格を推定する手法として50%程度の科学的確かさを有することが、最近の研究で明らかになっている。

 個人がデジタル世界に残す行動記録の中には、本人が意図的に収集・整理した情報(たとえば、リンクトインのスキル推薦など)だけでなく、同僚やクライアント、友人や家族が投稿したコメントや写真や動画などもある(そして案の定と言うべきか、個人のオンライン上での評判をモニターし、不都合なものを削除してくれる、レピュテーション・ドットコムのような企業も登場している)。

 そのため、ウェブ・スクレイピングには倫理的・法的な問題がないとは言い切れない。特に、企業が採用選考過程で、応募者にソーシャルメディアのパスワードの提出を求めるような場合、その懸念が強くなる(実際にこの方法を使う企業は増えており、現在、米国では23の州が禁止もしくは禁止を検討している)。

 しかし今後、利用者が自分に関する情報を収集し、企業や採用担当者に自主的にシェアできるアプリやアルゴリズムが登場すれば、企業はプライバシー権を侵害することなく個人の電子情報を収集できるようになるかもしれない。そうした事態に備えて、企業が収集できる個人情報はオンライン上の公開情報に限定すべきである。

(3)ゲーミフィケーション

 人材採用の世界におけるゲーミフィケーションとは、楽しみながら実行できるIQテストや性格テストのことだ。テストを受ける人は、パズルを解いたり問題を解決したりしながら、ポイントやバッジを貯めていく。すごく楽しいというほどでなくても、長時間かかる退屈な従来の方法に比べれば、評価される側にとっては耐えやすい。

 テストを受ける際のユーザーエクスペリエンス(UX)を改善する目的は、回答率を高めることにある。オンラインで楽しく受けられるテストを無料で提供し、自動生成されたフィードバックを返す仕組みをつくることで、企業は何千もの人にテストを受けさせることができる。レキットベンキーザー、イケア、デロイトなど、グローバル企業の多くが、潜在的応募者(特にミレニアル世代の応募者)を評価するのにゲーミフィケーションを使っている。

「楽しさ」と「正確さ」の溝を埋めるために、この手法の開発者にはまだやるべきことが多い。また、この種のテストは、一般的な質問票を使った人材評価よりも、作成と運用にお金がかかる。

 それでも、求人側企業がこの手法に注目しているのは、囲い込み済みの応募者集団という範囲を超えて大勢にリーチでき、楽しく働ける会社というイメージを効率的にアピールすることで、優秀な人材を確保できると考えているからだ。

どの方法を選ぶべきか

 以上のような新しい評価手法は、従来の手法(面接、履歴書、心理テスト、作業サンプル、推薦状など)より有効なのだろうか。まだその評価を下すことはできない。正確さを裏付けるに足る独立した科学的研究が行われていない場合は特にそのことがいえる。

 それとは対照的に、伝統的な評価テストは過去1世紀にわたって何千人もの科学者によって精査されている。雇用者がどのように従業員の能力を判定し、誰が成功するかをどのように予測しているかについては、拙稿を参照されたい[注]

 裏付けとなる科学的証拠を得るためには、同じ候補者をすべての方法で評価し、それぞれの方法が個人、チーム、および組織の業績をどこまで正確に予測できたかを測定する研究を行わなくてはならない。

 採用担当者やマネジャーからすれば、コスト、倫理、UXなどの要素も考慮しなくてはならない。そうすると、行動分析は直感頼みの意思決定よりは正確かもしれないが、毎日モニターし続けることには、かなりのコストがかかるという問題が浮上する(長期的に見れば、企業のコストを削減できるはずではあるが)。

 また、入社後のパフォーマンス予測だけでなく、候補者の現時点の能力、好感度、労働倫理を評価することも目的とするなら、少なくともいまのところは、従来の方法のほうが最近の革新的な方法よりも意味のある情報を得られるといえる。

【注】
 "Ace the Assessment," HBR, July-August 2015.(未訳)

編集部/訳
(HBR.org 2015年6月26日より、DHBR 2019年月5号より)
3 Emerging Alternatives to Traditional Hiring Methods
(C)2015 Harvard Business School Publishing Corporation.

 

◆最新号 好評発売中◆
『セルフ・コンパッション』
EI(感情的知性)向上のカギを握るものとして、マインドフルネスとともに欧米のエグゼクティブに注目されているのが、「セルフ・コンパッション」である。自分をあるがままに受け入れることができるマネジャーは、みずからの成長のみならず、チームの成長を促すという調査も出てきている。言い換えれば、社員へのメンタル支援を行うことは、チーム、ひいては会社のパフォーマンス向上につながるのである。

【特集】セルフ・コンパッション
◇セルフ・コンパッションは自分とチームを成長させる(セリーナ・チェン)
◇セルフ・コンパッション:最良の自分であり続ける方法(有光興記)
◇セルフ・コンパッションを日常で活かす方法
◇リーダーは自分の役割を問い続ける(宮本恒靖)
◇あなたを苦しめる「わたし」の正体(中島隆博)


お買い求めはこちら
[Amazon.co.jp] [楽天ブックス] [e-hon]