そんなことは、直観的にわかりそうなものだと思うだろう。だが面白いことに、言い訳をしている最中は、人は往々にしてこれを自覚していない。時間がしばしば口実に使われるのは、そのためかもしれない。4番目の実験では、人は「時間が限られていると伝えれば、実際よりも信頼できると思ってもらえ、また実際よりも好意的に受け止められる」と考えていることが判明した。

 この実験では、慈善団体への寄付について、808人の参加者に会話をしてもらった。参加者の半数には話す側になってもらい、残り半数には聞く側に回ってもらった。話す側の参加者のうち、半数には「もっと時間があれば、慈善団体に寄付するのですが」と伝えるように、残りの半数には「もっとお金があれば、慈善団体に寄付するのですが」と伝えるように依頼した。

 その後、聞く側の参加者が、一連のタスクを2人の間でどのように分担すべきかを決定した(ちなみに、タスクには難しいものもあれば、容易なものもあった)。その結果、金の口実を聞いた参加者は、時間の口実を聞いた参加者よりも、相手に比較的容易なタスクを割り当てることがわかった。

 この違いは、「金の口実のほうが、個人的にコントロールできる余地が少なく、より信頼に値する」と聞く側の参加者が感じていたからだ。ところが、言い訳をした側の参加者は、これらの違いを予見していなかった。

 時間と金という、人生で極めて希少かつ貴重なリソースの2つを効果的に管理したければ、物事に対して「ノー」と言えることが必要だ。だが良好な関係を維持したければ、適切な方法でそうする必要がある。

 私の研究結果によれば、十分な時間がないことを理由に誘いを断る場合、相手が察知する内容は「大切にされていない」ということだ。このため、断った人への親近感が低下し、もしかすると将来その人を助けようとする意志さえ低下するかもしれない。

 したがって、(真実であると仮定しての話だが)十分な金がないことを伝えるほうが、賢明なのかもしれない。というのも、そうすれば、2人の関係をどれくらい大切にしているかについて、相手から疑われる可能性が低くなるからだ。それどころか、正直で信頼できると見なされ、その結果、よりポジティブな感情と善意が生まれる。

 もちろん、(コミュニケーションの相手が部下である場合など)金の口実が不適切になりうる状況がある。このような場合について、別の実験を実施した(参加人数は300人)。すると、「エネルギーがない」を断る口実にするほうが、「時間がない」よりも効果的であることが判明した。なぜなら、エネルギーのほうが、時間よりもコントロールできる余地が少ないと受け止められるからだ。

 友人の結婚式への招待を断らなければならなかったとき、私は結局、パリまで旅行するだけの時間がないと返信した。その後も2人の関係は良好だったが、ちょうどこの研究をして証拠を集めていた時期だったこともあり、私は結婚式に関する最新情報を尋ねようと、友人にひんぱんに電話をかけたり、メールを送ったりすることを怠らなかった。

 時間がないために、誘いを断ることが必要なときも確かにある。だが、関係を回復するには特別な心遣いが必要になると自覚することが重要だ。しかも、それを実行するための時間を見つけたいと思うかもしれない。


HBR.ORG原文:Why “I Don’t Have Time” Is a Bad Way to Decline an Invitation, March 06, 2019.

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グラント・ドネリー(Grant Donnelly)
オハイオ州立大学助教授。マーケティングを担当。同大学サステナビリティ・インスティテュートのファカルティ・アフィリエイトでもある。2018年にハーバード・ビジネス・スクールで経営学博士号を取得。