分析スキルを持つ人材を採用する

 分析情報をつくり出す役割を担うのが、データ分析に精通したスタッフであり、その情報を読み解き活用するのが、データ分析に積極的なスタッフである。

・スタッフが分析スキルに精通しているか否かを判断するには、正式な資格の有無を確かめる以外に、心理全般の能力を測定するのに適した心理テストを実施する方法がある。スコアが高ければ仕事関連の知識を短期間で習得できることがわかるため、心理テストはパフォーマンスを予測する材料になる。そうしたスタッフには、名門ビジネススクールのコーセラ(Coursera)や無料オンライン講座のエデックス(edX)が提供するムーク(MOOC:大規模公開オンライン講座)など、正式な教育に加えて新しい学習法を取り入れてもよい。

・データ分析に積極的なスタッフには、新しい経験に積極的かといった、「投資」特性を測定する性格適性検査を実施するとよい。投資特性は、複雑な思考法をとる傾向を示す。データ分析は複雑な作業であるため、データ分析に積極的な人材は、複雑さに適性があることにより、分析データから意味を引き出せる可能性が高い。

データ分析能力を伸ばす

 既存スタッフの能力を伸ばすカギは、専門技能がどのレベルにあるスタッフにも、以下のような学習機会を与えることにある。

 ●データ分析に精通しているスタッフ

 常に最新のスキルを身に付けておくために、上級トレーニングを受ける機会を与えよう。勉強会やオンラインのグループやフォーラムへの参加を後押しし、専門職の集会や会議への出席も後押しするとよい。

 分析技術の指導者としての責任を持たせ、指導の目的を認識させる。まだ分析能力の低い同僚スタッフ1人を、各指導者が担当して指導するとよい。分析に精通しているスタッフが内部にいない場合は、何人か採用すると分析的文化を醸成しやすくなる。

 ●データ分析に積極的なスタッフ

 このレベルのスタッフに適した出発点は、人事データの分析に関する基礎教育を受けさせることだ。そのためには、人事データの分析の基礎に関するオンライン講座の受講を、全人事スタッフに義務づけるとよい。その1つとして、コーセラが提供するペンシルバニア大学ウォートン・スクールのHRアナリティクス・モジュールがある。週に1~2時間の受講時間であり、わずか4週間で修了できる。

 データ分析に積極的なスタッフには、修了後、習得した技術を日々の業務に応用し、知識を実践へと移してもらいたい。こうした期待を明確な目標として、パフォーマンスマネジメント制度に組み込んでもよい。

 ●データ分析に消極的なスタッフ

 このタイプのスタッフには、データ分析が彼ら自身の有効性を高めることに目を向けさせる必要がある。データ分析に精通した同僚とペアを組ませ、データの活用・分析によって懸案事項を解決させる。そうした機会がない場合は、データ分析に消極的な理由や悩んでいる理由について話し合う必要がある。

 最終的な目標は必ずしも、データ分析に消極的なスタッフをデータのエキスパートにすることではない。データ分析の価値を認識させ、望むべくは、それが成功への道であると受け入れさせることにある。

学習を個別化し、その規模を拡大する

 全人事スタッフを対象にデータ分析に関する学習機会を提供するには、ネットフリックス式のオンライン学習システムを使うとよいだろう。

 IBMのユア・ラーニング(Your Learning:個人別にカスタマイズされた学習システム)は、その一例だ。ユア・ラーニングのようなプラットフォームを使うことで、レベルごとにコンテンツをカスタマイズできる。人事部で従業員の学習目標を設定し、一定期間内に修了するために何時間の学習が必要か示すことも可能だ。参考までに、IBM社内の平均は年60時間である。

 人事スタッフには、データ分析スキルがいま最も「使えるスキル」であると明示し、スタッフがこのスキルを強化することで、その能力の向上に応じて報酬も増えるようにするとよい。

 学習者からのフィードバックに細心の注意を払い、最も効果的なコンテンツに修正していくことが重要である。たとえば、学習者にコンテンツへのタグ付けを奨励し、そのタグがコンテンツデザイナーや他の学習者とも共有できるようにするのもよい。これによって、新規受講生が過去の受講生の経験から学ぶソーシャルラーニングが可能になり、デザイナーはコンテンツを改良することができる。

 学習者の進捗状況をつぶさに追い、報酬を与えたりすることで、企業は従業員のスキルを改編できる。進歩に報いるには、デジタル資格認証を与えるといいだろう。たとえば、クレドリー(Credly)のようなシステムを使い学習成果を示すバッジを付与すれば、学習者はリンクトインなどのソーシャル・プラットフォーム上でそれを共有できる。

 人事部がもっとデータを使いこなせるようにすることは、間違いなく可能である。人事スタッフのデータ分析能力レベルの現状を把握し、足りない部分を補うために、重要な能力を持つ人材を採用し、的を絞った学習機会を継続的に与えることで、組織は人事部でデータ分析を実現できる環境を整えられるだろう。


HBR.ORG原文:How to Develop a Data-Savvy HR Department, October 11, 2018.

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ナイジェル・ゲノール (Nigel Guenole)
IBMエグゼクティブ・コンサルタント、ロンドン大学ゴールドスミス・インスティテュート・オブ・マネジメント・スタディーズの研究部長。広範な科学系学術誌にパーソナリティやリーダーシップ、心理測定のモデル構築に関する論文を発表している。共著にThe Power of People(未訳)がある。

シェリ L. フェインジグ(Sheri L. Feinzig)
IBMタレント・マネジメント・コンサルティング・アンド・スマーター・ワークフォース・インスティテュート所長。20年にわたり、HRリサーチ、組織変革管理、ビジネス変革に携わり、オンラインセミナーやカンファレンスでしばしば講師を務めている。多数の白書、出版物、専門的な報告書の共同執筆がある。共著にThe Power of People(未訳)がある。