たとえば、リベリアは世界で最も多様性に富んだ国家の1つであり、民族衝突の歴史を抱えている国である。エレン・ジョンソン・サーリーフ大統領が統治したとき、彼女のビジョンは、多様性の恩恵を引き出して活用することであった。就任演説で述べたように、「包摂的で寛容な政府」の創出に取り組み、和解に力を注ぎ、それぞれの民族集団が規模に応じて包摂されるようにした。

 リベリアには主だった民族集団が10以上もあり、そのどれも多数派ではないことを考えると、これは大した偉業である。彼女はまた、内閣の閣僚任命において男女比均等という目標を設定し、就任初年に女性閣僚の数を倍に増やした。

 ジョンソン・サーリーフ大統領は、就任2期目のはじめに内閣を改造し、国内の年齢、性別、宗教、民族の多様性をさらに反映させた。代議員の多様性を主眼とするこれらの施策は、就任して最初の5年間(2006年~2010年)における、年平均4%のGDP成長率との関連が見られる。これに対し、前任の大統領チャールズ・テイラーの場合には、任期最後の5年間(1999年~2003年)の成長率は1%であった。

 ジョンソン・サーリーフ大統領の政策は、歴代の男性大統領のそれとは異なっていた。とりわけ、元大統領サミュエル・ドウ(1986年~1990年)は、彼の出身部族であるクラン族を優遇したことで知られており、このことが最終的に、自身への反乱を招いた。リベリアの男性元首たちの政策は、国内のさまざまな集団の融和ではなく、自身がひいきとする集団のためにリソースを獲得することが目的だったのである。

 同様に、台湾の初の女性総統である現職の蔡英文(ツァイ・インウェン)は、包摂を旨として政権を開始した。台湾の3大先住民種族であるアミ族、タイヤル族、パイワン族などをはじめ、声が反映されにくい少数派集団の権利回復を図った。また、最大の民族集団である漢族への歴史的な優遇政策につながってきた汚名や偏見を、取り除こうと試みた。

 たとえば、省庁レベルの組織である原住民族委員会が1996年に設立される以前は、民族集団の多くが憲法上で認められていなかった。その結果、財産権や市民参加における不平等や、言語・文化的な排除が存在した。蔡大統領は、就任した2016年の初日に、先住民族が過去400年に受けてきた「苦痛と不公平な待遇」に対して公式に謝罪し、国内の多様な民族集団間で繁栄が共有されるよう政策の転換を掲げた。

 我々の研究結果、そして女性経営者の存在がもたらす企業収益への貢献に関する研究を踏まえると、明白にわかることがある。企業も国家も、有能な女性を見出し昇進させることを最優先すべきだ。女性を登用することは、機会の平等や給与の公平性の面で正しい行いであるのみならず、我々が明らかにしたように、目に見える経済的な効果もあるのだ。

 指導者は、特定の集団だけに他よりも利得を与えるのではなく、あらゆる人によりよい経済成果をもたらすよう注力しなければならない。我々が研究から学んだ1つの教訓は、多様性のマイナス面(偏見、差別、人種的・民族的衝突の悪化)は、対処されずに放置されていると、経済成長の妨げになるということである。

 すべての従業員に発展の機会を提供しなくても問題ない、という余裕がある企業など存在しない。国民の大半が経済から取り残されている国は、最大限の成長ができないのとまさに同じだ。組織内の多様性を活かすためには、包摂的なリーダーシップのもとに戦略、文化、採用・昇進の慣行等々を整合させる必要がある。

 すべての人に恩恵をもたらす包摂的な未来をつくるために、求められるものは何か、そのために何をすべきかについて、想像に任せている場合ではないのだ。


HBR.ORG原文:Research: Are Women Better at Leading Diverse Countries Than Men?  February 07, 2019.

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スーザン・パーキンス(Susan Perkins)
イリノイ大学リオトー経営大学院准教授。戦略マネジメントを担当。専門は制度改革、コーポレート・ガバナンス、組織的学習。ノースウェスタン大学のパブリック・ボイス・フェローも務める。

キャサリン W. フィリップス(Katherine W. Phillips)
コロンビア・ビジネス・スクール上級副学長。同校ポール・カレロ記念リーダーシップ・倫理学講座教授。主な研究分野は多様性、ステレオタイプ化、地位、アイデンティティ・マネジメント、情報共有、少数派の影響、意思決定、職務集団のパフォーマンス。