産業界では長らく、男女間の平等を実現する必要性が謳われている。女性リーダーの増加が業績向上につながることを示す研究も増えてきた。では、国家レベルではどうだろうか。筆者らは、人種的・民族的な多様性を持つ国家ほど、女性リーダーが力を発揮するという仮説を立て、綿密な検証を行った。その結果、女性元首はインクルーシブ(包摂的な)・リーダーシップの優れた実践者となり、経済的に貢献することが判明したという。


 男性のCEO、男性で占められる経営陣、男性の国家元首――。男たちによって支配される世界がどのようなものかは、誰もが知っている。

 では、女性のリーダーが当たり前になったら、世界はどのようになるかを、しばし考えてみていただきたい。マッキンゼーの研究では、経営陣に占める女性の人数が同業他社を上回る企業は、財務実績が業界の中央値を最大15%上回っている(調査対象地域は米国、英国、カナダ、中南米)。同様の効果は、世界全体にも当てはまるのだろうか。

 ある研究では、国内の人種的・民族的な多様性は、全体的な経済成長(GDP)におおむねマイナスに相関することが示された。人種的偏見、差別、民族集団間の衝突は、緩和されずにいると、経済成長を妨げうるわけだ。我々は、この部分にこそ、女性のリーダーシップが最も寄与する余地があるという直感を持った。

 この考えを検証するために、我々は、国連加盟国193ヵ国のうち188ヵ国からのデータを分析した。近現代(1950年~2004年)における国家元首を調べて、男性と女性の元首による経済成果は国の人種的・民族的構成に応じて異なるか否かを見出そうとした。

 国レベルの経済成果を検証するのは、多くの要因を加味すれば複雑な作業となる。我々の研究では、マクロ経済的要因を考慮するだけにとどまらず、標準的な時系列アプローチを用いて、国の「多様性」「指導者の性別」「経済実績」の間の行動学的な関連性に焦点を当てた。

 これまでに、国家元首を務めた女性は136人いる(大統領と首相。女王と総督は、ほぼ象徴的存在であるため除外)。我々は、各元首の在任期間における経済成長を調査した。在任年度のデータ群は計5700年分を上回る。

 分析では、国の成長を示すその他の指標(教育、インフラ開発、法の支配など)に関しては調整し、経済成長を示す十分に確立されたマクロ経済的予測因子と切り離すよう試みた。さらに、その他の世界的または国固有の出来事が分析結果に影響しないよう検証を実施している(たとえば、赤道ギニアの経済は、油田の発見により1996年から1997年の間に100%成長した)。

 我々の直感と合致するように、非常に多様性に富んだ国家を男性ではなく女性が統治した期間に関して、最も顕著な発見が得られた。

 国が多様性に富んでいる状況では、女性の元首は男性の元首よりも、経済を急速に成長させる傾向が有意に高かった。特に、人種的・民族的多様性が上位4分の1の国々において効果が高い。これらの国々を女性が統治した場合には、翌年に平均で5.4%のGDP成長を遂げているのに対し、男性では1.1%であった。

 我々の定量分析は、次のことを示唆している。国とその経済は、多様性による難題(集団間の衝突、差別、非主流層に対する偏見など)に悩まされるばかりでなく、多様性による恩恵を得ることも可能なのだ。

 ここで明確にしておきたいが、この強力な相関関係は、女性が常に成功を収めることを保証するものではない。また、我々の研究では、因果関係が実証されていない。「多様性に富んだ国家における何らかの特別な状況が、女性リーダーの台頭を可能にしたのではないか」とか、「女性のリーダーは、単に回復途上にあった経済の恩恵を受けたにすぎない」と、主張する向きもあるかもしれない。

 しかしながら、これらの女性国家元首が実際に、多様性に富んだ国家を男性とは異なる形で導いたと信じるに足る理由がある。どちらの説明も事実を反映している可能性があるのだ。

 ここでの重要なポイントは、女性のリーダーが経済成果と相関があるということである。そして、その成果は、女性リーダーが男性リーダーよりも、多様性の恩恵を国レベルでうまく引き出せる可能性を示唆している。

 我々が研究の中で見出した、女性の国家元首によるインクルーシブ(包摂的な)リーダーシップのパターンが、この点を明らかにしている。