日本の伝統的企業が成熟市場においても持続的に成長するためには、成長戦略を描くと同時に、その投資原資を既存ビジネスの利益から生み出していく必要がある。コスト削減はこれを抜本的かつ素早く実現するための手段として経営からの要請の多いテーマの1つである。しかしコストダウン活動の現場では、現業と並行して多大な労力を要しながら短期的成果を求められるため、ともすれば“やらされ感”の強い取り組みになりがちである。また、経営と現場に距離がある組織では、経営の意図が十分に伝わらず、現場で実行される施策が対症療法的なものばかりで、一過性の効果しか得られなかったといった話も聞かれる。近年、アクセンチュア・ストラテジーでは効果の最大化・持続性に着目した「ゼロ・ベースド・バジェッティング(ZBB)」という間接費用のコスト削減プログラムを推進している。このプログラムを導入した企業は素早く財務効果を創出するだけではなく、社員一人ひとりがコストを自律的にマネジメントする体質に転換し、コスト抑制効果に継続性を持たせることに成功している。

ゼロ・ベースド・バジェッティング(ZBB)の本質的特徴

 ZBBは企業価値向上につながる取り組みとしてグローバル投資家目線での知名度もあり、対外的にこのプログラム活用をIRでレポートしている企業もある。ZBBを実施した企業では取り組みの対象とした間接費について平均10~15%の削減成果を創出している。ZBBがこれほどまでの大きな効果を創出できるプログラムであるのか、その理由について説明したい。

 ZBBは調達改革によるコスト削減とは3つの点において一線を画するアプローチである。1点目の特徴は改革のオーナーをだれが務めるかという点である。経費削減は調達部門のトップ主導の基で事業部門と連携しながら推進する活動となることが多い。対してZBBプログラムは、コストに対する企業体質を変えることを目的の1つとするため、CEOもしくはCFOを取り組みのオーナーとして、組織横断のチームを組成して進める。

 2点目の特徴はコスト削減を実現する施策内容にある。ZBBは全間接費(人件費除く)項目を対象にその見える化(だれが・何に・どれだけ使ったか)に注力する。施策は、外部との契約単価の見直しよりもむしろ、自社の使用量や適正な仕様をコントロールするポリシーやガバナンスの仕組み構築に重きを置いて立案される。おおむねZBBの達成成果の70%程度は消費量の最適化によって得られる成果である。よってZBBプログラムでは使用量を削減することへの社内の腹落ち感の醸成が重要になる。

 3点目は予算策定プロセスそのものに踏み込んで対前年比を是としない施策を導入していくことである。 ZBBプログラムに沿って合理化された予算は、フィナンシャルな実績だけではなく、施策ごとにその実行程度を確認するためのオペレーショナルKPIに沿ってモニタリングし実現効果を測定していく。