現代のリーダーがこなすべき仕事はあまりに多く、限られた時間で優れた成果を上げる業務遂行能力は不可欠である。だが、効率重視の働き方が行き過ぎると、チームメンバーの仕事に対する意欲が低下し、燃え尽きや離職につながるリスクがある。どれほど結果を残しても、それは最終的に自身の評価を下げることになるのだ。筆者は、タスク重視型のリーダーが人間重視に変わる5つの方法を提示する。


 中級リーダーも幹部も、仕事でやるべきことは増加の一途をたどっている。したがって任務を遂行・達成する能力は、成功するための重要な要因である。

 だが、この能力は最終的に、リーダーの挫折につながる恐れがあり、リーダー本人にも、チームや組織にも、予期せぬ代償を招く場合がある。

 きわめてタスク重視型のリーダーは、優れた効率によって生産性を高めているが、その効率は往々にして、人への焦点をおろそかにすることで成立している。人間関係の構築や、チームを触発すること、部下の育成、共感を示すといったことは、果たさぬままだ。人間重視の活動に労力を割くと生産性が落ち、任務の遂行能力、ひいては達成能力が妨げられる――こうした狭い考えがあるため、効率的なリーダーは人間への焦点を失うことが多いのである。

 皮肉なのは、効率性と任務達成を強く重視することによって(ダニエル・ゴールマンの名著論文「EQリーダーシップ」における「先導型」のリーダーシップ・スタイルに相当)、リーダーの総体的な有能性は下がるということだ。そうしたリーダーシップは組織風土にマイナスの影響をもたらし、チームメンバーが燃え尽き症候群に陥ることが多い。労務管理支援サービスを提供するクロノスが2017年に実施した調査では、燃え尽きは従業員の意欲を削ぐ最大の要因であり、人事担当リーダーの95%が離職の主要因として挙げている。

 この種のリーダーは、本人自身も、昇進が妨げられたり、解雇されたりと、高いツケを払わされることもある。私生活や人間関係における代償については言うまでもない。

 私がコーチングを提供した不動産投資会社のバイスプレジデント、サラの場合を考えてみよう。

 彼女は目覚ましい業績を上げていたにもかかわらず、共同経営者への昇進を阻まれた。成約に至る効率と生産性の高さで成功してきたが、部下の士気と意欲が犠牲になっていたのだ。また、共同経営者への昇進を後押ししてくれるかもしれない同僚との関係構築にも注力していなかった。契約を取ることは共同経営者になるための重要な要素だが、組織の成功にとって大事なのはそれだけではない、という明確なメッセージを会社は突きつけたのだ。

 私がキャリア転換の支援を提供したクライアントのジェームズは、専門的なサービスを展開するグローバル企業の共同経営者だった。

 彼は顧客にすばらしい知見と成果を提供し、深い専門知識を持ち、多くの人から優秀だと見なされていた。ところが、自分のチームに極端な要求と現実離れした期待をした結果、部下の意欲が下がり、貴重なスタッフが離職し、最終的にジェームズ自身が解雇された。

 優れたリーダーは、タスク重視(任務を達成すること)と人間重視(人のやる気を引き出し、能力を伸ばし、権限を与え後押しすること)のバランスを取るのがうまい。

 タスク重視の度合いが強いリーダーは、成果を上げようとするあまり視野狭窄に陥り、「急がば回れ」も時には必要だと気づくだけの広い視野を持てない傾向がある。タスク重視と人間重視のバランスのよいリーダーは、成果を求めて努力する点は同じだが、もっと大きな組織的ニーズも常に念頭に置いている。そして、効率だけではなく実効性が大事だと認識している。

 ロバート・アンダーソンとウィリアム・アダムズは共著Scaling Leadershipにおける調査の中で、次のことを明らかにしている。リーダーの有能性を左右する最大の要因は優れた対人スキルであり、有能なリーダーの最も顕著な強み10項目のうち、6つが対人スキルに関連しているという。人の話を聞く、人の能力を伸ばす、チームに権限を与え後押しする、などである。

 タスク重視が強すぎるリーダーは、受動的な姿勢で、不安が行動原理となっている場合が多い。その振る舞いはしばしば命令的または支配型、あるいは完璧主義的な色合いが強く、人を遠ざけ、チームメンバーの権限を奪う傾向にある。

 サラは、「もしコントロールを手放して、部下に権限を与えたら、彼らは大失敗して私が恥をかく」という潜在的不安を抱えていた。ジェームズの場合は、「極端に頑張ってこれに取り組まないと、成功できない」という思い込みがあった。2人のリーダーはこうした狭い考え方によって、タスク重視を強め人間への重視を弱めるという悪循環に陥り、彼らの最も得意とする「任務達成」へのこだわりをエスカレートさせていったのだ。

 自分はタスク重視の度合いが強すぎると感じる人に、以下の方法で優先順位を設定し直すことをお勧めする。