●社内パートナーシップを築く

 ほとんどの企業では、多くの部門が駆使するデータとテクノロジーは、人事部門にも適用可能だ。

 たとえば、人事部門がマーケティング部門と連携することで検索エンジン最適化(SEO)に関するアドバイスを得られれば、人材採用活動の改善に役立つ。あるいはブロックチェーンについてアドバイスを求めて、フィンテック(金融テクノロジー)に精通した部署との連携を検討してもいい。人事部門がこのテクノロジーを活用すれば、従業員の個人情報を保全・検証する方法を変革できる。

 このような社内コラボレーションは、人事部門が新しいスキルを取得する助けになりうるばかりでなく、全社的にデータ駆動型の企業文化を育成するのにも役立つ。

 ●人材アナリティクスをビジネス成果にマッピングする

 従業員に関するデータをいかにパフォーマンスやビジネス成果に結びつけるか、その方法を人事部門は学ぶべきだ。

 このプロセスではまず、現在のリーダーと全従業員のスキル、能力と行動に関するデータを収集しなければならない。ただし、これは多くの場合、人事評価を通じて手に入る。

 たとえば、患者の安全性を改善しようとしている病院が、人事部門に発見してほしいと期待しているのは、患者の安全性比率の高さに結びつく行動指標を特定することかもしれない。患者の安全性比率が最も高いと人事評価で高く評価されている看護師チームでは、チームリーダーが共感を行動で表すといった特定の行動を示していることが判明するかもしれない。

 人事部門が従業員のスキルと経験に関するデータを収集して、同データをビジネス成果にマッピングすれば、自社にとって重要なリスク領域とチャンス領域を浮き彫りにできる。

 ●データをビジュアル化するスキルを磨く

 単なるデータ収集と分析だけでは、人事リーダーが取り組みを推進する助けにはならない。そのデータでいかにして人を動かせるかを、人事リーダーは知らなくてはならないのである。

 ある調査によれば、発表者がプレゼンの補足としてビジュアル資料を用いた場合、プレゼン中にまったくビジュアル資料が提供されなかった場合と比較して、聴衆が期待通りの行動を起こす確率が約40%高いという結果になった。

 したがって、人事担当者はデータを可視化したプレゼン資料の作成方法を学ぶべきだ。それにはPower BI、タブロー(Tableau)、あるいはアールスタジオ(RStudio)など、データを視覚化する高機能ソフトウェアプログラムにもっと精通する必要がある。

 ●リーダーシップ・プランニング・モデルを実行する

 人事部門はデータを駆使することで、現在の人材トレンドやギャップを浮き彫りにするにとどまらず、将来の人材ニーズ、特にリーダーシップポジションのニーズへの予測を提供すべきである。

 企業の長期戦略を実施するに当たり、将来必要になるリーダーを特定するために、人事部門はリーダーシップ・プランニング・モデルを採用するといい。リーダーシップ・プランニング・モデルを導入すれば、必要になるリーダーの人数、必須となるスキル、そしてリーダーの出身母体について、人事部門がデータ駆動型の予測を立てることが可能になる。

 同モデルを継続的に使用すれば、リーダーシップポジションに現在就いている人材と、将来必要になる人材の比較が可能になる。したがって、人事部門は人材採用システムや人材開発システム、パフォーマンス・マネジメント・システムの優先度を調整し変更することで、必要に応じて軌道修正できる。

 これら4つの対策を講じれば、大きなメリットが生まれる。筆者らの調査結果によれば、人材戦略を推進するに当たり、データとアナリティクスの利用に長けている企業は、強固なリーダーシップ人材がそろっている確率が6倍以上高い。さらに、リーダー層が極めて優れたデジタル能力を有している企業は、利益と売上成長の複合指標において、同業他社を50%上回る好成績を上げている。

 また、人事担当幹部がみずからの優れたデジタル能力を発揮して、自社の発展を図れば、結果として、この幹部自身が昇進することは珍しくない。筆者らの調査結果によれば、高度のアナリティクスを活用する人事リーダーは、出世の階段を上るチャンスに恵まれる確率が6倍以上高い。

 現在、失業率は過去50年弱で最低水準にある。経済成長が続くなか、ベビーブーム世代が一挙に定年退職を迎えることもあり、労働市場は今後いっそう逼迫し、人事部門へのプレッシャーが高まるだろう。

 こうした人口動態と経済のダイナミクスを背景に、企業がビジネス戦略を実施するためには、人事部門はより上手に、より迅速に、かつより賢く、必要な人材を見つけ出し、育成する必要に迫られるだろう。人材獲得戦争に勝利したければ、企業は人事部門のデータスキルとテクノロジースキルの育成に投資することを最優先すべきである。


HBR.ORG原文:HR Leaders Need Stronger Data Skills, October 25, 2018.

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リーダーシップ育成を専門とするグローバルな人材開発コンサルティング会社DDIのチーフ・サイエンティスト兼バイス・プレジデント

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コンファレンスボード(全米産業審議会)で人材開発分野を担当するエグゼクティブ・バイス・プレジデント。 

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アーンスト・アンド・ヤングのピープル・アドバイザリー・サービシーズ担当パートナー兼リーダーシップ育成プログラム担当グローバル・リーダー。拠点はオーストラリア・メルボルン。