シニアが働きやすい企業は、若者にも魅力的

 少子高齢化問題を考えるに当たっては、人口動態や社会の変化のスピードが速くなっていることに要注意です。通説がいつの間にか時代遅れになっています。米国は、移民が多く、豊かな国のイメージですが、ハッピー・リタイアメントは過去の話。本特集の予備情報として、直近の事実は次の通りです。

 高齢化率(65歳以上の高齢者人口が総人口に占める比率)の国別ランキング(出典:世界銀行)は2017年で、1位日本(27%)、2位イタリア(23%)、3位ポルトガル(22%)。米国は37位(15%)で、先進国の中では高くありません。しかし、第2次世界大戦後生まれのベビーブーム世代(1946~1964年生まれで54~72歳)が高齢者年齢に達してきているので、その絶対数が急増しています。特集の論文の中に、「米国では毎日1万人が高齢者になっている」という表現は、毎年約365万人ずつ高齢者年齢に達している、ということです。

 国の高齢化が抑制される政策として、移民の受け入れ拡大があります。過去5年間(2010~2015年、国連推計)の移民流入数のランキングでは、1位米国(450万人)、2位ドイツ(177万人)、3位トルコ(162万人)、日本は37位で35万人です。それでも米国は、高齢化への危機感を持っています。

 米議会予算局(CBO)は折に触れ、高齢化による財政圧迫を警告しています。メディアも報道しています。アラン・グリーンスパン元FRB議長は2007年発行の著書『波乱の時代』(日本経済新聞出版社)で「高齢化する世界:だが、支えられるのか」という1章を設けて、ベビーブーム世代の引退による財政負担増大への備えを訴えています。政治家は選挙のため短期志向になりがちですが、賢明な指導層は長期視点で論じるのです。

 人口動態による問題に、経済格差が加わっています。1人当たり個人金融資産(出典:OECD)で見ると、1位米国(26万ドル)、日本は8位(14万ドル)と、米国は豊かです。しかし、相対的貧困率(等価可処分所得が貧困ライン以下の世帯に属する国民の比率)の国別ランキングでは、1位中国(28.8%)、6位米国(17.8%)、日本は13位(15.7%)。65歳以上の相対的貧困率では、1位韓国(45.7%)、9位米国(22.9%)、日本は12位(19.6%)です。米国には経済状況の厳しい高齢者が多く、働き続けなければならないことを今号の特集は示しています。

 そして、シニア世代が働きやすい企業は、若者にとっても魅力的となり、優秀な人材を集めやすいという論調が目立ちます。このことは、国の政策においても同様でしょう。日本では今、外国人労働者の受け入れの議論が盛んですが、若い逸材を引きつける、長期的視点に立った政策立案が不可欠です。

 先月号は若いミレニアル世代が重視する企業のPurpose(存在意義)を、今月号はベビーブーム世代の人材活用を特集しました。通底するのは、人材こそ企業の競争優位の源泉であるということです。(編集長・大坪亮)。