(5)責任を持ってデータとAIを活用するために、どんな枠組みを備えているか

 創業者は、長期にわたり選ばれ、規制当局の協力と顧客の信頼をずっと得たければ、ブラックボックスのようなAIをつくるべきではない。複雑なアルゴリズムがなぜその結論にたどり着く傾向にあるのかを、イノベーターは比較的平易な言葉で説明できる必要がある。

 私たちは方法論の基本を理解しないままで、AIによる医療診断を信頼できるだろうか。自分自身や大切な人への刑罰に対する判断理由をAIが説明できなかったら、信用に値するだろうか。

 創業者が自社の複雑なAIの特徴を簡潔かつわかりやすく、誠実な言葉で説明できれば、その会社の製品は持続的に成功する可能性が高まるだろう。いうまでもなく、その前提となるのは、創業者自身が自社のAIが導く結果を理解していることだ。

 同様に、予想外あるいは理解不足な個人情報の収集、使用に対する顧客の反発が増していることも周知の事実だ。政府当局が介入するかどうかにかかわらず、AIは完全に透明性のある方法でデータを収集、記録、使用する必要がある。現時点でそれを理解している起業家は、競争に一歩先んじることになるだろう。

(6)自社ビジネスはイノベーションが育つ生態系を育んでいるか

 ビル・ゲイツは、プラットフォームは「それを使う人の経済価値が、それをつくる企業の価値を超えることで存在する」と述べた。そして、この真のプラットフォームに対する考え方が、今後の規制を決定することになる。共通価値の創造(creating shared value)が、イノベーションを守ることになるからだ。

「独占」を定義する従来のルールは、変わる運命にある。アマゾンやグーグル、フェイスブックなど表向きは無料の「プラットフォーム」が事実上21世紀の独占企業となった。

 アマゾンに出店する小規模の販売会社が、アマゾンの巨大なデータ優位性(小さな販売会社自体がデータの増加と供給を助けている)と戦えるとは思えない。こうしたデータの把握によって独占企業のサービスは向上するが、イノベーションは抑圧され、結果的に競争を損ない、ひいては顧客に損害を与える。

 このようなデータの独占は、適正な価格設定だけでなく、活気あるイノベーション経済の支援においても責任を負う。これに代わる唯一の方法として、制約の厳しい規制は、ほぼ避けられないだろう。

(7)自社のビジネス環境で、多様性をどのように定義して促進するか

 印象的な数字がある。主要ファンドのベンチャーパートナーにおける女性の割合はわずか8%で、黒人またはラテンアメリカの投資家を雇用しているファンドは3%未満女性ばかりのチームに昨年投資したベンチャー・キャピタルは3%未満(かたや、男性ばかりで創業したチームへの投資は79%)だった。また、同時期にマイノリティーに投資したベンチャー・キャピタルの割合はわずか13%だった。直近の国勢調査によると、米国では会社の35%を女性が、28%をマイノリティーが所有しているにもかかわらず、である。

 ファースト・ラウンドは、同社のポートフォリオ企業のうち女性が創業した企業は、男性のみで創業した企業よりもパフォーマンスが63%高いと明らかにしている。それを考えると、私たちは「ベンチャー資金を提供する創業者のタイプに関して、市場の失敗が続いている」という業界の真実を受け入れなければならない。

 私たちが業務の向上にコミットするように、投資家は、ポートフォリオ企業がダイバシティーとインクルージョン(多様性と受容)を積極的に受け入れるよう後押しすることに、経済的関心を持っている。多様性に富んだチームは、実績、人材採用、顧客志向、従業員満足において他をしのぐことが、マッキンゼーの調査でも明らかになっている。

 直感的に、多様性があり共感的な考え方は、より優れたサービスを生み出す。私たちは創業者に、レベッカ・ナイトが示したような確立された手法を使って、雇用でのバイアスを減らすように働き掛けている。面接の標準化、職務サンプルの要求、履歴書の名前を伏せた審査、「直感」による評価の問題視などのアプローチだ。

(8)規制と、自社製品が影響を与える多様なステークホルダーへの説明に応じて、会社をどのようにダイナミックに発展させていくか

 何十年もの間、起業家は規制を「明日心配すればよいこと」として扱ってきた。しかし、本来規制は悪いものではない。悪い規制が悪いだけなのだ。

 そして、テクノロジーが普及し、より強力かつ理解しにくくなるにつれ、悪い規制の脅威も増す。政策協議に早い段階から建設的に関与しなければ、規制当局はおのずと過剰修正へと向かい、経済価値を破壊し、米国の競争力を損なうことになる。

 破壊的な10億ドル規模のビジョンを説いておきながら、いかなる規制からも自由であるとOK考えることは、どう考えても矛盾している。興味深いことに、直面するであろう規制に関する、基礎的な知識さえ持ち合わせていない起業家が多い。最低でも創業者は、自社の市場の重要な意志決定者が誰なのかを知り、いつ、どのように彼らと関わるのが妥当かを熟考すべきである。

 危機に陥ってから関係を築いたのでは非効率的で、無価値である。継続的かつ一貫した対話を交わせば、規制当局もより正確な情報を手に入れられ、よりよい規制制度につながる。

 ベンチャー投資家は結局のところ、入手可能な最高のデータを駆使して、優秀な人材、画期的なアイデア、ビジネスモデル、市場の性質の変化を検証しながらも、不完全な情報に基づいて投資している。上記のような質問をすることで、起業家が自社のイノベーションが引き起こしうる、意図せぬ問題に対処できるか否かの不確実性を減らすことができる。責任あるイノベーションに投資をすることは、社会のためになるばかりか、民主制度における技術発展の実行可能性を守ることになるのだ。

 これは、ベンチャー投資家にとって賢明なアプローチである。


HBR.ORG原文:The Era of “Move Fast and Break Things” Is Over, January 22, 2019.

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ヘマント・タネジャ (Hemant Taneja)
米国ベンチャー・キャピタル、ゼネラル・カタリスト(General Catalyst)のマネージング・ディレクター。Unscaled(未訳)の共著者。