(1)自社製品で、組織と社会にどのような変化を起こしたいと願っているのか

 創業者が、真の意味で変化を起こすテクノロジー企業をつくりたいと熱望しているなら、彼らはその変化が持つ、一次的、二次的、三次的意味を認識すべきだ。

 私が起業家にこの質問をする際には、彼らの将来のビジョンにおいて、他の技術やトレンド、ステークホルダーがどのような位置づけになるかを、的確に認識していることを期待する。私が何よりも求めるものは、共感だ。

 比較的単純な事例を挙げよう。長寿化に取り組む起業家に話を聞くとする。その際には、自動化による労働市場の破壊(人々がより長生きし、雇用機会がより少なくなった世界は、どのようなものなのか)と、機会の不均衡(富裕層が中間層の2倍、貧困層の3倍も長生きするような世界を、社会が許容するのか。それを許容すべきか)に取り組むビジョン、それに最小限有徳な製品が見えなければならない。

 未来の最高のリーダーは、この関係性を理解し、初めからそれを考慮して準備したいものだ。

(2)自社製品の良さをどう維持するか

 私はインドで生まれ、10代で米国に移住した。フェイスブックは幼馴染みとのつながりを保つことを可能にし、真の喜びをもたらしてくれる。フェイスブックの利用者の大多数は、同様の恩恵を味わっている。

 しかし、フェイスブックを初めとする多くの由緒あるイノベーティブ企業は、統計的な優位という徳はあるものの、包括的な徳はない。つまり、少数の悪質なユーザーが大きな危害を加える(または、すでに加えた)おそれがあり、フェイスブックは最悪の事態を予測して、防止することに失敗した企業の好例となってしまった。

 未来のスタートアップは、もっとうまく立ち回らなければならない。米当局の元最高データ・サイエンティストで私の友人でもあるD. J. パティルが主張するように、目指すべきは完璧な洞察ではなく、妥当な見通しだ。

 例として、ゲノミクスを挙げよう。クリスパー(CRISPR)という技術を使えば、すでに遺伝子編集は可能だ。そう考えるとワクワクするが、同時に深刻な社会的損害をもたらすおそれもある。富裕層が自分(または子どもたち)の外見や運動神経、頭をよくすることができたら、現在の富や機会、アクセスの不均衡など比べものにならない、生物学的な格差が生じるかもしれない。

 無秩序な遺伝子編集を防止するには、社会で規制を設けるか(これはイノベーションを完全に潰してしまう可能性がある)、または企業と規制当局が協力して不公平なアクセスの問題に取り組むしかない。当然、後者のほうが好ましい。

 ゲノミクスはおそらく最も極端な例だが、あらゆる起業家は、こうしたリスクへの対策を講じなければならない。消費者と規制当局は年を経るにつれ、統計的な(あるいは選択的な)価値を年々容認しなくなるだろう。

(3)いかにして個人レベルにまで最大の影響をもたらすか

 拙著Unscaled(未訳)でも述べたように、人工知能(AI)と強力なプラットフォームを組み合わせれば、イノベーターは息をのむような速さで影響を行使することができる。すなわち、より狭い範囲の顧客に、より正確かつ効率よくサービスを提供する企業が影響力を持つだろう、ということだ。私は、これを理解している創業者を探している。

 私が糖尿病のケア管理会社リボンゴ(Livongo)の創業者グレン・タルマンと協働を始めた時、私たちは影響力を最大化したいと考えた。糖尿病に対する大衆市場のアプローチでは、患者はタイプ1とタイプ2という2つのカテゴリーのどちらかに大別される。直感的にわかるように、患者一人ひとりの症状は異なり、それぞれに異なるケアが必要だ。

 標準化された治療をすれば、医療提供者は大勢の患者に対処できる。しかし私たちは、どちらのタイプの患者であれ、個々に合った予防的な医療の解決策を提供すれば、人々の人生に、より大きな影響を与えることができると信じたのだ。

 現在のリボンゴはコーチングとデータへの洞察を提供し、糖尿病患者の症状緩和を支援することで、ジョンソン・エンド・ジョンソンやユナイテッドヘルスなどの大手医療企業と競い合っている。私たちが市場の前提を受け入れていたら、それは不可能だっただろう。

(4)最適成長率をどう考えているか。会社の規模が拡大したとき、どのように説明責任を果たすつもりか

 ベンチャー・キャピタルの会話の中心を成すものは、成長だ。どんな会社であれ、最適成長率は、さまざまな要因によって決まる。要求される雇用のペース、提供するサービスの複雑さ、事業拡大の資本集約度、規模、成熟度、市場の競争、などである。

 たいていのベンチャー投資家は「勝者の一人勝ち」という考え方を奨励し、最初の顧客ターゲットを犠牲にしてでも拡大を後押しする。この考え方は、次第に支持されなくなっている。

 ターゲットを絞った解決策が、従来のサービスに取って代わる速度はますます上がっているから、標準以下のサービスは駆逐されるだろう。医療や金融サービス、その他の重要産業で顧客を不完全な解決策に巻き込むことの倫理的問題は言うまでもなく、時期尚早な成長は市場で罰せられることになるのだ。

「使ってもらい、拡大する」という、古くからあるビジネス格言の道徳的意味を無視すべきでない。現在、起業家と成長速度について話し合う時に私が知りたいことは、彼らが「有徳な」商品をつくるためには、そうでない場合よりもゆっくりと成長する必要があるかもしれないと認識しているかどうかだ。