●プロセスでがんじがらめにならないようにする

 イノベーションの原動力は、プロセスでもシステムでもない。人の才能がイノベーションを生み出すのだ。どのような手順を設定しているにせよ、会社を新たなフロンティアへと導き、よりよい世界を見せ、組織の最終収益を増加させるのは、ひとえに個々人のクリエイティブな確信と意欲、そしてチームの集団知能だけである。

 チームの創造性が妨げられている場合、リーダーが取るべき最初のステップは、メンバーを取り囲むプロセスが、彼らの思考法を人質状態にしていないかどうか調べることだ。

 システムに過剰に依存して、ルールに一様に従っていれば、一部のメンバーは外部のオプション(すなわち標準的プロセスや慣行に抵触するオプション)を表明する自由裁量権が自分にはないように感じかねない。そのため、協働で行うブレインストーミングがシャットダウンされるおそれがある。

 この場合は、官僚的な制約を感じることなく、誰もがより自由に貢献できるように、クリエイティブなセッション中は、特定の手続き上の制限を、試しに取り除いてみるといい。

 ●試行錯誤を促す

 クライアント企業と仕事をする中で私が直に観察してきたのは、メンバーが真に創造性を発揮できるようエンパワーされているチームは、目的意識とエンゲージメントが高く、素晴らしいことを成し遂げる意欲に満ちており、顧客のためによりよくする方法を常に探している。

 これこそ、競争力の高い組織が目指すべき地点であり、チームがクリエイティブな思考や能力をとことん発揮できるような適切な環境を整えることが、今日のリーダーには不可欠になっている。だが現実は、ある調査結果によると、回答者の80%が「創造的潜在能力を解き放つことが経済成長のカギである」と見なしているにもかかわらず、「自分自身の創造的潜在能力をフル活用している」と感じている人の割合はわずか25%だ。

 経営側の立場からは、幹部の圧倒的多数(94%)が、イノベーションに関する自社の実績に不満を抱いている実態が、マッキンゼーの調査から明らかになっている。すなわち、リーダーがクリエイティブな貢献をサポートする職場環境を整えるだけで大きな影響をもたらせるはずの分野で、才能が発揮されないまま無駄になっているのである。

 試行錯誤を促して、その成否を確かめるよう奨励するには、心理的に安心できる環境づくりに取り組む必要がある。そうした環境では、リーダーは「有言実行して、既成概念にとらわれない考え方をするようメンバーに求めるだけでなく、みずからもその行動を実践する」とイェール大学スクール・オブ・マネジメントのハイディ・ブルックスは述べている。

 創造性をかき立てるために、リーダーは健全な対立や議論も奨励すべきだ。マイクロマネジメントをする代わりに、部下を信頼し、冒険してリスクを負う自由裁量権を与えるのである。そうすれば、思いがけない方向に扉が開く可能性が広がる。

 ●「ねばつく床」を明らかにする

 誰にもクリエイティブになる下地がある。その端緒となるのは、チームのメンバーそれぞれが、みずからをアイデアの生み手と信じ、自分にはクリエイティブなコンセプトを、説得力をもって表明する能力があると信じることだ。

 この信念の対極にあるのが「自分は本質的にイノベーティブでない」という考えである。こう思考するタイプが1人チームにいるだけで、瞬く間に「ねばつく床(sticky floors)」、すなわち成功を妨害しうる自己限定的な信念や思い込みが広がりかねない。

 リーダーとしてチームを管理する役割の1つは、EI(Emotional Intelligence:感情的知性)を働かせ、知らず知らずのうちに自分を制御し、才能や豊かな潜在能力を発揮できずにいるメンバーがいないか判断することだ。

 1人でもクリエイティブな才能を隠していれば、チーム全体が不利益を被る。したがって、先手を打って対処する必要がある。具体的には、チームメンバーが「ねばつく床」を自覚するのを助け、チームという環境内でイノベーティブなアイデアを表明することに関して、コーチングとサポートを提供すべきだ。

 ●マインドフルネスを折り込み、成長思考を促す

「ねばつく床」から離れるようチームメンバーにコーチングする一環として、極めて重要なことは、「成長思考(growth mindset)」を培う方法の理解を促すことだ。成長思考とは、キャロル・ドウェック博士による造語で、知性と学びに関連する、自分自身の能力に対する考え方を表す。

 成長思考のある人は、「自分自身の努力によって向上できる」と根本的に信じている。このタイプの人は、挫折を受け入れ、それを失敗とは見なさず、むしろ徐々に改善していくプロセスを通じて成長し学ぶチャンスと受け止める。この見方の対極にあるのが固定思考であり、このタイプは「自分には、ある特定の分野において、どれほど一生懸命努力しても変えられない一定の水準の才能がある(あるいはその才能がない)」と信じている。

 創造性を阻む「ねばつく床」に直面したとき、リーダーはチームメンバーにコーチングを行うべきである。誤りから学んで改善を重ねながら、時間をかけてスキルを培い続けるには、「よりクリエイティブになれる」と心の中で信じることがどれほど大きな力になるかを説明する必要がある。

 要するに、成長思考を培う真髄は、恐怖を勇気に変える助けとなることであり、完璧主義よりも「それで十分」というレベルの卓越性を求める方向へと向かわせることだ。規範の枠の外へ出て、これまでの前提を覆し、クリエイティブな洞察力が生まれる可能性に心を開いた状態でいるようメンバーを指導することこそ、リーダーに課せられた使命なのである。

 複数の研究が示唆するところでは、マインドフルネスを実践すれば、チームは創造性を発揮して、成長思考の成果を増大させることができる。

 今日のリーダーの多くは、いったん立ち止まり、大切なことを優先する能力と余力、つまりチームメンバーたちに対して、計画を立ててクリエイティブになるよう奨励しつつ、みずからも時間を取って、それを実践する能力と余力を失ってしまった。だが、「瞑想によって、ブレインストーミング能力が覚醒するだけでなく、作業記憶の改善から認識の柔軟性の強化にまで至るいくつもの方法で、創造への衝動が呼び起こされる」という研究結果を踏まえれば、マインドフルネスに時間を使わない手はない。

 自分の周りの環境を楽しみながら日中に散歩をするといったシンプルな行為でも、マインドフルネスを高めうる。マルチタスクを実行したくならないよう、注意力を削ぐハイテク機器を使わない時間帯を定め、自由な思考を促すといい。そして、シンプルな呼吸法を実践し、呼吸に合わせて脳に酸素を送り込み、創造性をかき立てよう。一息ついて呼吸法と瞑想を実践するというシンプルな行為により、チームの創造性を促進できるのであれば、それは実践する価値のあるステップだ。

 チームには既成概念にとらわれずに物事を考えてもらおう、という目標であれば、誰でも思いつくだろう。だが実際に、どのようにしてグループイノベーションの強化を達成するかを考え出すことは、それほど簡単ではない。リーダーとして重要なことは、他のマネジメント課題に取り組むのとまったく同様に、この実現にもクリエイティブに取り組むことである。


HBR.ORG原文:How to Unlock Your Team’s Creativity, January 31, 2019.

■こちらの記事もおすすめします
多様な人材が集まることでチームの創造性は本当に高まるのか
集団的創造の時代の知は、手を動かすことでしか生まれない——チームラボ代表・猪子寿之

 

レベッカ・シャムボー(Rebecca Shambaugh)
世界的に定評のあるリーダーシップ専門家、著述家、基調講演者。グローバル・リーダーシップ開発機関であるSHAMBAUGH(シャムボー)のプレジデント、またウィメン・イン・リーダーシップ・アンド・ラーニング(WILL)の創設者でもある。