より公平な職場を目指して

 我々の研究からは、こうした法律が、他の面でも公平性にプラスの効果を及ぼすことが明らかになった。下級・中級層の従業員の賃金への影響はより大きく、上級層のマネジャーの給与実績には有意な影響が及ばなかったのだ。たとえば、男女の賃金格差を報告した企業において、階級が低い女性従業員ほど、法の可決後にはより上位に昇進する傾向が高かった。

 さらに、報告義務のある企業は、下級・中級層の女性を対照群の企業よりも5%多く雇用していた。つまり、企業が募集職種への報酬の公平性を高めるほど、より多くの女性従業員を引きつけることができるわけだ。

 離職率については、男性従業員にも女性従業員にも、統計的に有意な変化が認められなかったが、上級層の女性の離職数がやや多かった。つまり、女性は、男女格差の縮小に向けた給与の調整がなされなければ、離職する可能性がより高いと思われる。

 また我々は、給与格差の改善をさらに高める、いくつかの特定の原理が働いていることに気づいた。

 第1に、給与格差の改善が最も顕著な企業は、男性マネジャーに息子よりも娘が多くいる場合であることに気づいた。このような企業では、女性の賃金は、報告義務のある企業群の他の企業よりも5%多く上昇し、男女の賃金格差は2.4%多く縮小しているのだ。これは、多様性に富んだ家庭生活をおくる男性ほど、職場での多様性と公平性の推進に対して進歩的であるという、別の主張を支持するものだ。

 第2に、法が施行される前に男女間で給与格差が大きかった業界ほど、格差のより大幅な縮小が見られた。

 この改革が男女間の賃金格差縮小に効果をもたらした事実は、次の2つの要因を踏まえれば、特に注目に値する。第1に、当初提案された改革案は、産業界の懸念によって内容が手加減されていた。第2に、デンマークにはそもそも改革以前から、労働市場で女性を後押している優れた実績があった。

 我々はこれらの理由から、すべての企業に賃金透明化を義務づける改革は、平等主義がデンマークほど浸透していない他の国々では、男女賃金格差のさらなる縮小をもたらすものと考える。

 そして実際に、すべてのOECD加盟国(男女賃金格差の政府による報告義務化が、立法上の大きな懸案事項となっている国々)には、男性に平均15.1%有利な賃金格差が存在する。これらの地域における政府や規制機関の関心にもかかわらず、この格差は堅持されており、場合によっては拡大しているOECD加盟国での男女賃金格差の中央値は、韓国の36.7%からルクセンブルクの3.4%まで幅がある。

 この格差への対処として、政府主導による透明化の取り組みは有効であり、企業とその女性従業員にも恩恵をもたらすことができる。我々の研究が、そのことを示しているのだ。


HBR.ORG原文:Research: Gender Pay Gaps Shrink When Companies Are Required to Disclose Them, January 23, 2019.

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モーテン・ベネッドセン(Morten Bennedsen)
INSEADのアンドレ・アンド・ロザリー・ホフマン寄付講座教授。コペンハーゲン大学ニールス・ボーア記念講座教授。米国経済政策研究センター(CEPR)にも所属する。

エレナ・サイメンツィ(Elena Simintzi)
ノースカロライナ大学ケナン・フラグラー・ビジネス・スクールのファイナンス学助教授。米国経済政策研究センター(CEPR)にも所属する。

マーガリータ・ソウツァラ(Margarita Tsoutsoura)
コーネル大学ファイナンス学准教授。全米経済調査会(NBER)にも所属する。

ダニエル・ウルフェンソン(Daniel Wolfenzon)
コロンビア・ビジネス・スクールのステファン・H・ロボック記念ファイナンス学・経済学教授。全米経済調査会(NBER)にも所属する。