ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第97回は、パロアルトインサイトCEO、石角友愛氏の『いまこそ知りたいAIビジネス』を紹介する。

AIが「インフラ」になる時代
中小企業にこそ活路がある

 AI(人工知能)に関する解説書は多く出ているが、AIを利用してビジネスをどう行っていけばよいのか、人材の視点まで含めて解説している書籍は案外、少ない。

 本書の筆者、石角友愛氏は、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得した後、グーグル本社に勤務。その際、機械学習やそのビジネス応用の可能性に気づいたという。2017年、米シリコンバレーでPalo Alto Insight(パロアルトインサイト)を起業。現在、CEO兼AIビジネスデザイナーとして、AIでいかにビジネスインパクトを出すのかについて、主に日本企業に対して助言から実装までの支援をしている。

 その石角氏の発想の根底にあるのが、「今後、AIはインフラになる」という確信である。

 グーグルCEO、サンダー・ピチャイ氏は「AIは火より、電気より大事なものだ」と発言している。中国バイドゥの元チーフデータサイエンティストのアンドリュー・ング氏も「100年前に電気の登場ですべての業界が変わったのと同じように、今後数年間にAIが変革しない業界はないだろう」と述べている。

 つまり、AIは電力と同様にインフラになるということで、そしてそれは、電力と同様に「ツール」でしかないということでもある。

 本書は、「あらゆる産業のベースにAIの考え方が必要になる」と説く。大企業だけではなく、町の診療所や町の工場といった中小企業にこそ、そのビジネス活用の可能性があるということだ。

 一例として挙げているのが、エルフィード社「通販できるみんなのお薬」というECサイトの事例。アマゾン上で展開する同社商品の販売をいかに効率化するのか。「検索上位にしながら、利益を最大化する」という課題について、パロアルトインサイトと、機械学習で最適価格を予想するモデルをつくった。

 結果、伸び悩んでいた売上が3ヵ月で2倍アップ、利益率も2倍以上伸び、月商1億円を超えるようになった。しかも、相談から3、4ヵ月で実現したという。

 ここから本書は、AIの導入というものは「局地的であればあるほど力を発揮する側面を持っている」と伝える。つまり、AIとは無縁だと思う中小企業にこそチャンスがあるというメッセージなのだ。