●内面的自己認識

 筆者はかつて、コーチングしていたあるエグゼクティブに、直面している困難な問題をどう感じているか、聞いたことがある。彼の答えはこうだった。「私がどう感じているか、ですって? 私はエンジニアですから、感情のことは考えません」。そして、すぐに話題を変えた。

 このエグゼクティブには、内面的自己認識が欠如していたのだ。

 内面的自己認識を持つことは、自分の気持ち、信念、価値観といった、いわば自分に内在する物語を理解することを意味する。自分に対する理解が不十分だと、問題の所在を認識するうえで、根本的な間違いを犯しやすくなる。他者の行動が悪意や人格から来ていると思ったり(彼が遅刻したのは真剣ではないからだ)、自分の行動を状況のせいだと考えたり(渋滞のせいで遅くなってしまった)、という具合だ。

 内面的自己認識に乏しいチームメンバーは、自分の気持ちや価値観こそが「真実」であると考え、固有の気持ちや経験に基づいた、他者にとっての真実に目を向けない傾向がある。他者も同等に理にかなった考え方を持っているということを、認識しづらくなるのだ。

 もう1つの例を見てみよう。内面的自己認識が低いリーダーであるマニュエルと、彼の同僚のタラの例だ。

 商品プランニングに関するミーティングで、広い視野をもつリーダーであるタラは、こう述べる。「この商品プランは、より広い戦略の文脈で考える必要があります」。これに対して、実行指向のリーダーであるマニュエルは、無意識のうちに怒りとフラストレーションを覚える。詳細なプランや実行に集中したいと思うからだ。

 しかし、マニュエルは、自分が不快感を覚えた原因が考え方の違いにあること、戦略は重要ではないと自分が信じ込んでいることは認識せず、タラは状況の理解が不十分であり、ただ腹立たしく、プロジェクトに不適切な人間だと心中で決めつける。彼はその後、タラをチームから外すべきだと、同僚に漏らす。

 これは、チーム全体に不利益をもたらす。タラは誤解され、価値を認められないどころか、チームから排除される可能性すらある。マニュエルは視野を広げることもなく、自分と異なる考え方を持つ人と働く方法を学ぶこともない。

 ここで朗報がある。内面的自己認識は学習できるのだ。まず、あなたが、チームのリーダーとして、あるいはチームの一員として、強い感情的反応を引き起こすやっかいなシチュエーションに直面した際、一呼吸置いて熟考し、次のような質問への適切な解を検討するといい。

・自分がいま感じている感情はどういうものか。
・現在、他者や現状に対して自分が抱いている思い込みはどういうものか。
・自分の解釈は事実に沿ったものか。
・自分にとっての中核的な価値は何か。そして、それが自分の反応にどのように影響しているか。

 自分の反応について考える時間を設け、早合点への衝動を抑えることができれば、より深い自己理解が得られるはずだ。ウエストポイント陸軍士官学校での講義をもとにしたSolitude and Leadershipウィリアム・デレズウィッツが述べた通り、「最初に浮かんだ考えはけっして、最善の考えではない」のだ。

 ●外面的自己認識

 外面的自己認識を持つとは、みずからの言動が与える他者への影響を理解することを意味する。

 筆者らが関わるリーダーやチームメンバーは、自分の振る舞いが同僚に与えるインパクトに関する理解が、まったく不足している場合がほとんどだ。その結果、生産的なチームメンバーになるために、自分の長所を認識し活用したり、また、チームにネガティブなインパクトを与える自分の言動を特定し是正したりすることが難しくなる。このような知識なくして、改善は望めない。

 外面的自己認識を築くうえで有効な方法の1つは、話し合いの場における他者の反応を観察することだ。声を張り上げる人はいるか。沈黙してしまう人はいるか。どういうジェスチャーをするか。背もたれに寄りかかり、話から距離をとるか。笑顔を見せるか。このような観察をすることで、貴重な情報が得られるのだ。

 ただし、自分が間違った結論に至る可能性があることを、心に留めておく必要がある。こうしたシチュエーションでは、同僚の反応を自分なりに「解釈」しているので、その解釈は、あなた個人の信念や経験によって色付けされていることを忘れてはならない。自身の内面的自己認識に注意を向け、どのようにして最初の結論に至ったかを検討することが有益なのだ。

 より直接的なアプローチは、他のチームメンバーに、具体的かつ率直なフィードバックを求めることだ。そのために、次のような質問をしてみよう。

・ミーティング中の自分の言動で、何か役立つことはあるか。
・また、その逆の言動はないか。
・自分のチームとの接し方の中で変えるべき点があるとしたら、それは何か。

 このような質問をすることはリスクがあり、気まずい思いをすると感じるかもしれないが、自分の言動がチームに与えるインパクトを的確に把握する唯一の方法である。

 質問をするタイミングは、慎重に判断する必要がある。即座にフィードバックを求めることが現在の話し合いにメリットをもたらすか、それとも、あとで尋ねるほうが得策か。

 たとえば、信頼の置ける同僚と2人で話しているときならば、その場で聞いても差し支えないだろう。しかし、大きなミーティングを中断させて個人的なフィードバックを求めることは、チームのゴール達成を邪魔する結果を招きかねない。

 ●自分の責任を取る

 責任という言葉を聞くと、他人に責任を取らせることを連想するだろう。しかし、最も優れたリーダーやチームメンバーは、自分自身が責任を取ることに注目する。

 自己認識と同様、簡単に聞こえるかもしれないが、実はそうではない。困難や不快感に直面したとき、お決まりの不健全なパターンに陥る人が多い。つまり、他人のせいにして批判したり、自己弁護に徹したり、混乱を装ったり、問題を完全に回避したりしてしまうのだ。

 チームがうまく機能していないのであれば、メンバー全員が何らかの形でその一因になっている可能性が高く、チームが効果的に働けるよう、メンバー各人が責任をもって取り組む必要がある。

 自分に責任を取るリーダーまたはチームメンバーになるために、次のステップを踏む必要がある。

1. 問題があることを認識する。これが、実は一番難しい。私たちはとかく問題から目を背け、代わりに自分の忙しさを語りたがるからだ。その衝動を抑えよう。
2. 自分が問題の一端であることを受け入れる。あなたも問題を引き起こしている一因なのだ。
3. 問題解決に責任を持って取り組む。
4. 問題が完全に解決するまで引き下がらない。

 ここで、先のマニュエルの例に戻ろう。

 マニュエルが自分の責任を取ることを実践していたなら、自分とタラとでは意見が対立していること、それゆえにチームがしっかりしたプランを練り上げられずにいることをまず認めていただろう。次いで、タラと対立している責任の一端は自分にもあると受け入れる気持ちになり、タラとより生産的な関係を構築しようと努力しただろう。そして、早まった結論を下して陰口を叩く誘惑に駆られなかったはずだ。

 考え方の小さな変化が、行動に直接的な影響を及ぼし、チーム全体にも非常にポジティブなインパクトを与え得るのだ。

 ●実践する

 ほとんどのチームにおいて、自分の感じるフラストレーションに対する典型的な反応は、「あのメンバーにはイライラする」というものだ。効果的なリーダーやチームメンバーはそうではなく、フラストレーションを感じると、上記のアドバイスを実践する。

・自分の反応をみずからの感情、信念、価値観に照らして検討し、自分の中にその原因を探る(内面的自己認識)。
・観察や質問を通して、自分の他者に対するインパクトを理解しようと努める(外面的自己認識)。
・自分がどのような形で、現在の問題の一因となっているかを見極め、チームがよりよい成果を上げられるよう、自分の反応を意識的に選択する(自分の責任を取る)。

 筆者らがともに取り組んでいるチームのほとんどは、時間をかけてこれら3つの能力を築き、強化することで、より効果的に働く術を学んでいる。

 情報の処理や対応の仕方を変えるには、新たなスキルを学ぶだけでなく、新しい習慣が形成されるよう、気長なスキル実践の継続が欠かせない。効果的なチームメンバーは、地道にゆっくりと進むことが、時として急速な前進への近道だと考える。このような基礎的スキルの構築に時間とエネルギー投資することで、より効果的に難しいビジネスチャンスをものにし、難題に立ち向かっていける。


HBR.ORG原文:To Improve Your Team, First Work on Yourself, January 29, 2019.

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ジェニファー・ポーター(Jennifer Porter)
リーダーシップとチームの開発を支援する企業、ボダ・グループ(The Boda Group)のマネージングパートナー。ベイツ大学卒業後、スタンフォード大学スクール・オブ・ビジネスを卒業。オペレーション担当の上級幹部としての経験を積み、上級幹部とチームのコーチを務める。