『やり抜く力 GRIT』の組織パーパス論

 今月号の話に戻ります。特集4番目の論文は、大ベストセラー『やり抜く力 GRIT』の著者が、実在する病院の事例をもとに、メンバーによるパーパスの共有が組織の「やり抜く力」を高めることを解説しています。海外事例ですが、腑に落ちます。

 日本企業はどうすべきか。パーパスという言葉を使って実践する日本企業はまだ稀ですが、同じような考え方で社員の意識を変え、モチベーションを高めている企業は増えています。その成功事例として中川政七商店を取り上げました。会長の中川政七氏の話によれば、日本企業はこの種の考え方に適応性が高いように思えます。

 その後に続くHBRの4つの論文はパーパスについて多面的に論じています。なかでも、グラハム・ケニー氏の「ビジョン、ミッション、バリューとはどう違うのか」は、これまでいろいろなところで引用されていますので、重要です。また、ジョージ・セラフィム氏らの「パーパスは収益を左右するのか」は、新しい経営理論が現れると、すぐに収益との関係を実証研究する米国の経営学の素晴らしさを見て取ることができます(理念だけに終わらせない!)

 特集外では、巻頭論文として、社内の不正を指摘する際あるいは正す活動を促すうえで参考になる論文を掲載しています。職場の問題は最悪の事態になる前に、早期に解決すべきであり、すべてのビジネスパーソンにとって意義ある論文です。米国だけでなく、日本においてもタイムリーではないかと考え、巻頭で掲載しました。

 また、今月号は、「スタートアップに経営戦略は必要か」というテーマを、27ページにわたって、賛否両面からじっくり論じています。起業過少の日本経済には、多くの示唆があると思います(編集長・大坪亮)。