現代の組織は生産性を阻害している

 今日の多くの組織では、稼働性(仕事上の要求に常に対応できること)、迅速な反応、会議への出席といった非生産的な行為が期待されることによって、フローが妨げられている。

 アドビの研究結果によると、従業員は1日平均6時間をメールに費やしているという。別の研究では、従業員のメールチェックは1日平均74回に及び、スマートフォンには1日2617回触れていることも明らかになっている。従業員たちは、たえず気が散っており、ハイパー・レスポンシブ(即座に反応してしまう)状態にあるのだ。

 ソフトウェア会社ベースキャンプの共同創業者で、『NO HARD WORK!』の著者であるジェイソン・フリードは、私のポッドキャスト「フューチャー・スクウェアド(Future Squared)」でこう語った。プログラミングや執筆といった創造的な仕事をするには、目の前の作業で沈思黙考する時間が必要である。「仕事で本当に深く考えることができたのは、いつが最後だったか。こう問われたらほとんどの人は、もう長い間、熟考できたことなんてないよと答えるでしょう。これはとても残念なことです」

 典型的な従業員の1日は、次のような具合である。

・会議は1時間が通例である。通常なら各自が好きな時間にバーチャル上で対応できるような事項まで、議論する。
・仕事中に予期せぬ邪魔が入る。その原因はたいてい、オープン・プラン式のオフィス、インスタントメッセージ、デスクトップやスマートフォンの「ポン」という通知音である。
・可逆的でさほど重要性のない意思決定をめぐり、不必要な根回しをする。
・「受信ボックスゼロ」にやたらとこだわる。これは大半の職場で推奨されるが、実は「自分の目標より他人の目標を優先する能力」の象徴である。
・電話1本で足りるのに、しばしば遠方に出張し、直接相手に会う。
・1つの作業から別の作業へと頻繁に切り替える。そのせいで、大した成果を上げられず疲労感を覚えるという、認知切り換えによる代償(cognitive switching penalty)が深刻化する。
・すでに成果がほぼ出尽くしている特定のタスクを、長々と続けて時間を浪費する。
・初歩的かつ事務的な作業。

「人々は職場で多くの時間を浪費しています」とグラントは言う。「断言してもいいですが、ほとんどの仕事では、集中していない8時間より、集中した6時間のほうが従業員の生産性は高いはずです」

 カル・ニューポートも、ベストセラーとなった著書『大事なことに集中する』の中で、グラントと同様のことを述べている。「毎日3~4時間、連続して、邪魔されずにディープ・ワークに取り組めさえすれば、私たちの生産性も生活も本質的に変わる」

 これに賛同するフリードも、フロー状態になるのは半日ほどであると言う。「1日4時間のフローを確保できないなら、それ以上時間をかけても埋め合わせにはなりません。オフィスに長時間いれば仕事がはかどるというわけではないのです」

 テクノロジーは進化しているものの(おそらくはそれが大きな理由でもあろうが)、仕事量をさばくためだけに働いているうちに、気づけば午後5時をとうに過ぎている、という人は少なくない。しかし、そうした状況は不可避ではないのだ。