大企業を辞め、ソロで働いたり、小さな会社を興したりすることは、経済的にも心理的にも、明確なビジネスケースがある。

 経済的なビジネスケースは、はっきりしている。高度なスキルを持つプロフェッショナルは、雇われて仕事をするより、ソロで働くほうがより多くの収入が得られる。

 米国勢調査局の推計では、2015年時点で、従業員がおらず、オーナーが単独で経営している会社の数は270万社にのぼる。そのような会社の7割は、10万ドルから25万ドルの年間収入があり、これは、米国の平均的な家庭の2倍から4倍に当たる。25万ドルの年間収入があるのは、ソロビジネスの3割にのぼるのに対し、米国の全世帯のわずか2%にすぎない。健康保険や収入の安定に対する懸念も少なからずあるものの、ある程度の不確実性さえ我慢すれば、医療費を確保し、不測の事態に備えて貯金することも十分できる収入が得られる。

 この経済的なビジネスケースは、組織階層を問わず、どのようなポジションの人にも当てはまる。筆者らが注目した、あるジュニアコンサルタントは、従来必須とされるMBA取得の道に進まない選択をした。代わりにフリーランスで働き始め、その直後から、MBAを取ったのと同じくらいの収入を得ることができた。10万ドルの学資ローンを背負うことなく、である。

 ソロで働くビジネスケースは、組織で最も高いポジションにある人にも当てはまる。ニールセンの元最高戦略責任者であり、それ以前にマッキンゼーでプラクティスリーダーを務めたマーク・ライターの例を挙げよう。

 ライターは2003年から、自身が100%所有し、完全な自主権を持つことのできるライター・アンド・カンパニーのチェアマンとして、コンサルティング兼投資家兼取締役員というポートフォリオ構築に数年を費やした。いったん保留にしたのは、デイヴ・カルホーンに請われて、ニールセンの全社改革を実現する期間だけだった。

 数年前、ライターは再び、かつて計画した通りの独立経営モデルに注力するようになった。彼は言う。「私がフルタイムの仕事を求めているのではなく、フルタイムの仕事が私を求めている。自分のスキルへの需要が高く、リーダーシップチームで大きな役割を引き受けるようクライアントから魅力的なオファーがあるとき、独立を保つには凄まじい覚悟が必要である。今後もけっして方針を変えないとは言わないが、少なくともあと20年は、いま取り組んでいることを続けるつもりだ」

 もちろん、上場間近だったり、売却を希望したりしている大企業の場合のように、トップの仕事を引き受けることで、莫大な利益を得られる特別なケースも存在する。しかし、ソロプレナーたちには、ある共通認識がある。数億規模の収入が得られるうえ、高い自主性が保てるソロプレナーとしての生活と引き替えに、ハイリスク・ハイリターンの仕事(過剰なストレスと自分でコントロールできない面倒も、もれなくついてくる)を選ぶことから得られる幸福感は次第に目減りしていく、という認識である。

 多くの人にとって、心理的なビジネスケースも、同等に重要な決め手となる。

 大企業を辞めた人の多くは内向的で、外向的な人が圧倒的に多い職場環境に疲れてしまう。あるいは、地位が上がるにつれ、政治的スキルの重要度が増していくと知ったことが引き金になるケースもある。時間が経つにつれ、政治ゲームにウンザリする人も少なくない。

 しかし、最も一般的な心理的な利点はおそらく、他者の分まで稼がなくてよい点だろう。マーク・アンドリーセンはかつて、「5人の優秀なプログラマーは、1000人の平凡なプログラマーを凌ぐ」と言った。テクノロジーの分野でも、コンサルティングの分野でも、この構図に変わりはない。有能なスター従業員が、ある程度の持株を持っていて、短期的に売却の機会が見通せない限り、彼らの生み出した余剰利益が他の従業員を潤すのだ。

 しかしながら、ソロプレナーたちとの対話を通して筆者らが気づいたことは、彼らにとって重要なのは、公平さやタダ乗りの問題というよりむしろ、自由が得られる点に尽きる。他者の面倒を見ることからの自由、「最近、我々のために何をしてくれましたか?」と聞いてくる親会社や株主に対する責任からの自由、そして、がむしゃらに働いて厳しい1年を終え、年が明けるとまた同じことを繰り返す、果てることのない徒労感からの自由である。

 多くの人にとって、ソロで働くことの心理的なビジネスケースとして重要なのは、家族と友人である。ワーク・ライフ・バランスをとるのが難しいことには変わりないが、ソロで働けば、はるかに容易になる。

 昨年、筆者のうちの1人(エディ)に、小学6年生の真ん中の娘オードリーの先生から電話があった。先生によると、オードリーは素晴らしい作文を書いたという。作文の内容は次の通りだ。1つの黄色い風船が、あるワーカホリックの陰気な男性を追いかけて、子どもの頃に両親と訪れた、田舎のある場所へと彼を導く。その場所を再訪したことで、彼はそこで過ごした幸福な時間を思い出す。同時に、彼の両親は常に生活に追われていて、その記憶がいまの自分を仕事漬け状態に追い込んでいるのだと知る。その瞬間、男性は気づきを得て、仕事にすべてを捧げることをやめ、家族とのきずなを深め始める。

 オードリーによれば、主人公の男性のモデルは父親ではない。エディは実際、オードリーがその作文を書くより前に、コンサルティング会社を退社し、ソロプレナーとして働き始めている。とはいえ、オードリーのストーリーはエディに、自分が正しい選択をしたと再確認させてくれた。

 ソロプレナーが提供するサービスは、実物資産を持つ企業が開始するサービスと比べれば、資本を必要としない。また、技術の進歩により、コストをかけることなく容易に、ソロとしての一歩を踏み出すことが可能になってきている。

 筆者らの見通しでは、今後ソロプレナーの道を選ぶ人は急増するはずだ。人材流出が加速する大企業は、これまで以上に人材をつなぎ止めるのに苦戦を強いられるだろう。


HBR.ORG原文:Why Some High Performers Are Quitting Big Companies to Work for Themselves, January 02, 2019.

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エディ・ユーン (Eddie Yoon)
成長戦略のシンクタンクおよびコンサルティング会社、エディ・ウッド・グロウの創設者。The Cambridge Groupのディレクターも務める。2016年12月には、HBR Pressより著書Superconsumers(未訳)を刊行。ツイッター@eddiewouldgrowでも発信中。

クリストファー・ロックヘッド(Christopher Lochhead)
Niche Down(未訳)および『カテゴリーキング』の共著者。ポッドキャストFollow Your Differentのホストを務める。これまで3社で最高マーケティング責任者を務めてきた。