ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第95回は、ダニエル・コイルによる『THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法』を紹介する。

強いチームをつくる3つのスキル

 理想のチームの条件とは何か。従来は、リーダーがチームの成果を大きく左右するので、いかに優れたリーダーを育てるかが議論の中心であった。たしかに、常に堂々と振る舞い、圧倒的速度で物事を前進させるリーダーを要するチームが素晴らしい実績を上げることもある。だが、そうしたカリスマリーダーが存在しなくても、むしろ強いリーダーがいないほうが、チームとして成功を収められる可能性がある。

『THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法』のテーマはシンプルだ。強いチームはどんな文化を持っているのか、どうすればそうした文化をつくることができるのか、である。筆者は、強いチームに共通する3つの特徴を見出した。それは「安全な環境」「弱さの開示」「共通の目標」である。いずれも、昨今のマネジメントにおける議論で注目を浴びているポイントである。

 本書内で紹介されている研究によると、チームメンバーのパフォーマンスを決めるのは、メンバーの帰属意識だという。そして帰属意識を育むには、1つ目の「安全な環境をつくる(Build Safety)」ことが重要であると筆者は指摘する。

 これは「心理的安全性」という言葉で表現される。自分がその場所にいてもよいという安心感が信頼を生み、それが帰属意識につながるのだ。そして組織やチームに帰属意識を持っているメンバーは、一見すると奇抜な発想を一蹴されたり、真っ当な批判を握りつぶされたりしないので、そこに本質的な議論が生まれることでチームとしての創造力が高まる。

 2つ目は「弱さを共有する(Share Vulnerability)」ことである。筆者によると「『帰属のシグナル』がチームをくっつける『接着剤』だとするなら、(弱さを共有することは)『筋肉』だ」。すなわち、接着剤でつながったメンバーが、信頼関係や協力関係をつくり出すための方法論である。

 安全な環境が用意されていれば、自分を大きく見せる必要はない。自分に何が不足しているかを素直に認めることで、チームにいる仲間や外部の人材に適切な支援を求めることができる。結果として、チームのパフォーマンスは最大化され、より大きなインパクトを生み出すことにつながる(「弱さの共有」が組織にもたらすメリットは、DHBR2014年11月号「『弱みを見せ合う』組織は業績が伸びる」なども詳しい)。

 組織内で欠点を認めにくい現状について、ジェニファー L. バーダールらは「男性性を競う文化」にあると問題提起した(参照:DHBR.net「『男性性を競う文化』が組織に機能不全を招く」)。互いを蹴落とし合う環境では、自分の弱さをさらけ出すことは敗北を意味するに等しい。その状態を変えるためには何より「安全な環境」を整えることが必要であり、多くの企業が組織のあり方を根本から見直す必要に迫られていると言えるだろう。

 3つ目は「共通の目標を持つ(Establish Purpose)」ことだ。ここでいう「目標」とは、中期経営計画や年度予算などではなく、より高次の存在目的を意味する「パーパス」である。本書では「理想と現実をつなぐ物語」という表現が用いられているが、これは組織が実現したい未来と現実とのギャップを埋めるための行動指針である。それを「骨まで浸透」することが、チームの力を最大化させると筆者は言う。

 たとえば、米国版『ハーバード・ビジネス・レビュー』のWEBサイトは最近、給料や福利厚生という待遇よりも、その組織が掲げる「意義」に共感できるかで仕事を選ぶ人が増えているという調査結果を掲載した(DHBR.net「意義ある仕事に就けるなら9割が給料減を受け入れる」)。素晴らしい人材を採用するためにも、そして採用した人材にチームの一員として力を発揮してもらうためにも、組織のパーパスを明確化し、それを内外でしっかりと共有することの重要性が高まっている。

 本書の特徴の一つは、グーグル、NBAのスパーズ、米国特殊部隊など、豊富な事例を用いて、3つのスキルそれぞれの有効性を理解させる点にある。また、どうすればそれを実践できるかという、具体的な行動提案が書かれているのも特徴である。事例ベースなので根拠が浅いという批判はあるかもしれないが、その分、400ページ超の分量をまったく感じさせない読みやすさがある。

 環境変化が激しく、企業が解くべき問題の複雑さも増すいま、一人のカリスマに依存するリスクは計り知れない。チームの力を最大化することが、より大きな困難や逆境を乗り越える原動力となる。本書を通してチームビルディングの新しい形をいち早く知ることができるので、多くのリーダーが読むべき1冊と言えるのではないか。