●パーソナル・エクスペリエンス・マップを作成する

 前述の70-20-10の割合に従うなら、経験によってキャリア開発は最も加速される。したがって、ここで把握したいのは、どの経験がキャリアアップにつながるか、そしてより重要なことは、現在地/目的地のギャップを埋められるきわめてパワフルな経験がどれかを特定することだ。パーソナル・エクスペリエンス・マップを定期的にアップデートすれば、進路を策定するのに役立つ。

 パーソナル・エクスペリエンス・マップでは、キャリア開発のために、次の2~5年間にどのような経験を積みたいかを明らかにする。このマップは実質的な企画書であり、最高のパフォーマンスを上げている自分を、どのようにプロデュースしていくかが描かれる。

 キャリア開発を促進する経験には、2つのタイプがある。ファンクショナル・エクスペリエンス(職務経験)と、マネジメント・エクスペリエンス(管理経験)だ。

 ファンクショナル・エクスペリエンスは、たとえばマーケティング、サプライチェーン、研究開発など、何かに秀でるのに役立つ。このタイプの経験を積めば、あなたが職務できわめて有能なことを証明できるようになる。

 マネジメント・エクスペリエンスは、いかなる困難な状況下でも業績を上げたり、乗り切ったりできることを証明するのに役立つ。1つの地域のマーケット担当者として優れた実績を上げているばかりでなく、新たなチームとでも、変化のただ中でも、異なる地理においても、マーケティングを率いる能力があることを証明したことにもなる。

 このように困難だがやりがいのある経験を完遂することで、あなたが多才なリーダーとして、より大きく、より重要な任務にふさわしいことを、会社に示すことになる。パーソナル・エクスペリエンス・マップを作成するには、以下のような手順を踏むとよい。

 ●あなたの職域のエキスパートにインタビューする

 どのような経験を積めば、あなたの職域で上位10%にランクインしてエキスパートになれるかを把握するには、その分野で最も優れた人たちが助けになる。そうしたリーダーたちにインタビューして、どのような経験が職務上の卓越性を育てるかを学ぼう。このインタビューから、パーソナル・エクスペリエンス・マップを作成するための原材料が得られる。

・会社の内外のエキスパートを特定する:社内ばかりでなく、あなたの職域を対象範囲として、最も優れた面々にインタビューしよう。最高財務責任者(CFO)になりたければ、あなたが尊敬している、あるいは業界で評判の高いCFOを5人特定しよう。あなたの目標が初期段階の医薬品R&Dで秀でることであっても、プロセスは同じだ。業界の「最高」リスト(最高の最高マーケティング責任者、最高の最高情報責任者など)、あるいは業界紙の記事から、もしくは関連するカンファレンスの講演者リスト、あるいは社内のリーダーに推薦された人たちから、リーダー5人を見つけよう。

・インタビューを依頼する:各リーダーにメールを送信して、同じ業界の人間がキャリア開発する励みになるよう、ざっくばらんに話をしてほしいと依頼する。

・見識を得る:電話インタビューの中で、「あなたのお考えでは、最高の[ゼネラル・マネジャー、ITアーキテクト、財務担当取締役]になるうえで欠かせないファンクショナル・エクスペリエンス[必ずしも仕事ではない]は何でしょうか」と尋ねる。あるいは「採用の際、〇〇に傑出している人はどのような経験を積んでいることが重要だと考えるか、教えてください」と聞くのもいい。具体的な情報を得るのが困難な場合は、インタビュー相手が自身のキャリアで得た最も貴重な経験について、当人に尋ねるといい。

 ●マップを作成する

 インタビューメモを見直して、インタビュー相手が説明してくれた経験をリストアップする。手に入れた情報すべてが有用であるわけではない。重複する情報もあれば、別のインタビュー相手が言った内容と矛盾する情報もあるだろう。ここでの目標は、集めた情報を選り分けて、あなたのキャリアを最も加速する経験を、いくつか見つけることだ。

 経験談では、新しい生産施設の立ち上げ、事業再生期に大きなチームを指導、あるいはビジネス・ユニットの閉鎖といった、有意義なビジネス成果が説明されているとよい。見出すべきは、あなたの職務上またはリーダーとしての能力を構成する重要な要素になる、エクスペリエンスだ。それを達成すれば、あなたの職域の同僚たちも納得するようなものであってほしい。

 高いパフォーマンスを上げるために必要なファンクショナル・エクスペリエンスは、各自の職業に特有な経験だろう。一方、マネジメント・エクスペリエンスは、あらゆる職業にわたって、きわめて類似しているだろう。なぜならマネジメント・エクスペリエンスは、職務が何であれ、あらゆるマネジャーにとって貴重な包括的能力を育成するからだ。

 次に示すエクスペリエンスを利用すれば、マップの作成を単純化できる。

・ライフサイクル・エクスペリエンス:会社の異なる部署あるいは製品発展で、または立て直し状況、スタートアップ、定常状態の環境、発展途上市場あるいは完全な成熟市場で、リーダーを務める。

・マネジング・エクスペリエンス:質の低いチームを改善する、大きなチームを率いる、影響力は及ぶが権限はないチームをまとめる、マトリクス化された環境でリーダーを務める、高度に政治的な環境でリーダーを務める。

・ジオグラフィック・エクスペリエンス:本国以外、現地の言語があなたの母語でない土地で、経験を積む。

 あなたにとって大きなプラスになると考えられるファンクショナル・エクスペリエンスを4~7つ、同様にマネジメント・エクスペリエンスを3~4つ選択して、パーソナル・エクスペリエンス・マップに記載する。

 このマップは焦点が絞られ、かつ現実的であるべきだ。なぜなら今後、キャリアアップを計画して進捗を評価する際、参照元として定期的に利用することになるからだ。

 こうして作成したパーソナル・エクスペリエンス・マップは、高パフォーマンスを上げ続けるよう、あなたを導く指針となる。このマップを作成することは、時間の最良の投資先となるだろう。あなたのマップが最新の役立つ指針であり続けるために、仕事や勤め先を変えるときはいつでも、また少なくとも6ヵ月ごとに、その内容を見直そう。

 自分を常に成長させていくことは容易ではないが、あなたの現在地と目的地、そして両地点の間のエクスペリエンス主導の最速ルートが明白になれば、道筋はずっとシンプルになる。


HBR.ORG原文:A Simple Way to Map Out Your Career Ambitions, November 30, 2018.

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マーク・エフロン(Marc Effron)
タレント・ストラテジー・グループ創設者兼社長。同社のグローバル・コンサルティング、教育、エグゼクティブ・サーチ、および出版の各事業を率いる。世界の一流企業をクライアントとして、高パフォーマンス人材の育成方法をアドバイスする。『タレント・クォータリー』誌の創刊編集長でもある。著書に8 Steps to High Performance、およびベストセラーとなったOne Page Talent Management(いずれも未訳)がある。ツイッターは、@the8steps