第1に、劣悪な、あるいは無能なマネジメントに対して従業員がレジリエンスを発揮することは、個々人の心身の健全性にはプラスとなるかもしれないが、組織のより広範なパフォーマンスには悪影響を及ぼす可能性がある。

 ストレスを抱えた従業員の存在は、より広範なマネジメントやリーダーシップの問題に対処が必要であることを示す危険信号である場合が多い。楽観性とレジリエンスを人材採用基準の中心に据えてしまうと、従業員が発する何らかの警告サインを頼りに、リーダーシップや文化の問題を特定し改善するのがより困難になるだろう。

 これは、レストランのオーナーが「料理やサービスを改善するのではなく、評価基準が元々低い客を呼び込んで、レビューを高くしよう!」と考えるようなものである。それをやれば顧客の満足度は向上するかもしれないが、レストランの質が上がるわけではない。つまり、よりポジティブで楽観的な評価をしてくれそうな人たちを集めても、実際にあなたの仕事の能力が向上するわけではない、ということだ。

 第2に、研究データが明確に示す通り、エンゲージメントの少なくとも半分は依然として、従業員の仕事における外部要因、すなわち組織の全従業員に共通する問題や経験に起因する。つまり、一従業員の意見は、その人の性格によって大きく左右される可能性がある一方、集合的意見(組織内でのアンケート調査で散見されるような意見)には、従業員たちが職場で直面している共通の問題や課題がよく表れるのだ。

 この点は重要である。なぜなら、組織は単に個人の集合体ではなく、共通のアイデンティティ、規範、目的を持った協働集団であるからだ。したがってエンゲージメントとは、組織が従業員に提供する「文化的付加価値」の表れであり、従業員の個人的な嗜好やスタイルを超えた、集団のエネルギー、行動、態度を形作るものである。この点を無視することは、優れたリーダーシップにはつながらず、業績に寄与する貴重な要因を意思決定の材料から除外することになる。

 第3に、組織で最もクリエイティブな人たちはおそらく、比較的シニカルで、懐疑的で、そう簡単には喜ばないだろう。また、イノベーターの多くは権威におもねることがなく、現状に異を唱える性質がある。ゆえにこの人たちは、悪しきマネジメントや非効率性に対して不満を抱きやすく、エンゲージメントを失う可能性が比較的高い。

 こうした人々を隔離または排除すれば、職場のエンゲージメントは手っ取り早く維持できそうに思えるかもしれない。だが、ほとんどの組織において、彼らこそ、創造的エネルギーや起業家精神をもたらす非常に重要な源泉なのだ。それらを、現状に自然と満足する人たちから引き出すのはより困難である。ある意味すべてのイノベーションは、現状に満足していない人、変革方法を模索する人によってもたらされるものだ。

 また、エンゲージメントを持ちやすい性格の人を採用することによって、たとえ組織のパフォーマンスの向上(および望ましくない結果の抑制)ができたとしても、気難しくて非情熱的なタイプの人たちを排除すれば、公平性や倫理面において大きな問題が残るだろう。彼らの仕事が他の人に劣らず優秀であれば、なおのことである。

 最後に、価値のあるものは何事も、概して個人の働きよりもチームワークの結果である。そして偉大なチームは、同じような人々の集合体ではなく、互いに補完し合うような人々の集まりだ。

 認知的多様性、すなわち、思考、感情、行動の多様性を望むなら、さまざまに異なる性格を持つ人たちが必要となる。つまり、チーム内のさまざまな役割に見合った多様な性格を組み合わせるのだ。生まれつき積極的な人、外交的な人、ポジティブな人が、場合によっては正反対の性格の持ち主とともに働くということである。

 ここでの示唆は明白だ。組織のエンゲージメントを高めるために、同じタイプの人材(エンゲージメントを持ちやすい性格の人)を採用するという戦略を取れば、認知的多様性が低くなるわけだ。これは人口属性的な多様性の欠如よりもなお悪い影響を、組織のパフォーマンスと生産性に及ぼす(筆者らは、両方の多様性を追求すべきだと考えている)。

 したがって、組織におけるエンゲージメントのあり方を真に理解したいのなら、従業員がどんな人物か、そして、彼らが仕事に対してどう考えているかの両方を観察する必要がある。言い換えれば、従業員の性格にもっと合わせた対応が求められるのだ。

 たとえば、総じて辛辣な人やネガティブな人で構成されたチームを率いるマネジャーは、エンゲージメントのデータを、その人の性格をふまえた観点から見るとよい。そのうえで、チームパフォーマンスに真に影響を及ぼしている問題のみに彼らが焦点を絞れるよう、助けるのが得策だ。

 そうすることで、新たなチャンスも開かれる。エンゲージメントのデータをどう活用すれば、従業員が仕事に対するみずからの認識をよりよく理解できるよう後押しできるのか――それを考える機会が生まれるのだ。それによって従業員はより柔軟な形で、仕事の当事者として責任を持ち、成長するための方法を見出せるようになる。最近の調査では、従業員が自分のエンゲージメントに対して自身で責任を持てるかどうかを決定する最も重要な要因として、4割のマネジャーが、感情的知性と自己認識力を挙げていることが明らかとなった。

 リーダーがエンゲージメントと性格に関する知見を組み合わせれば、個々の従業員が組織という現実世界をより効果的に渡っていけるよう後押しできるだろう。ひいてはそれが、すべての人にとってより有効で、より優れた組織を構築することにもつながるのだ。


HBR.ORG原文:Is Employee Engagement Just a Reflection of Personality, November 28, 2018.

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トマス・チャモロ・プレミュジック(Tomas Chamorro-Premuzic)
マンパワー・グループのチーフ・タレント・サイエンティスト。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンとコロンビア大学の経営心理学教授、およびハーバード大学のアントレプレニュアル・ファイナンス・ラボのアソシエイトも兼務する。近著にWhy Do So Many Incompetent Men Become Leaders? (And How to Fix It)(未訳)がある。ツイッター(@drtcp)やウェブサイトでも発信している。

ルイス・ガラッド(Lewis Garrad)
公認組織心理学者。マーサー・シロタのグロース・マーケット部門リーダー。従業員調査の専門家。従業員意識調査プログラム、人材評価、パフォーマンス施策の設計と導入に注力している。Twitterアカウントは、@lewisgarrad

ディディエ・エルジンガ(Didier Elzinga)
従業員からのフィードバックを集め分析するオールインワン型のプラットフォーム、カルチャー・アンプの創設者兼CEO。同社はオーストラリアで最も急成長中のテクノロジーベンチャーの一社であり、メルボルン、サンフランシスコ、ニューヨーク、ロンドンにオフィスを持つ。エルジンガは文化と創造性について数多くの発表を行っている。これまでに、ライジング・サン・ピクチャーズ(ハリウッドの著名なヴィジュアルエフェクト会社)のCEO、ライジング・サン・リサーチ(技術アカデミー賞を受賞)の創設者、ツーリズム・オーストラリアの非業務執行取締役を歴任。現在は、アトラシアン財団とアルフレッド研究財団の非業務執行取締役。