オンラインとオフラインの競争が進行している

――GAFAへのデータ集中については、「日本も厳しく監視していくべき」との立場を取られています。

 デジタル経済における競争政策の課題は、競争者の排除とイノベーションがしばしば密接不可分に進行することにあります。GAFAにデータが集中することでイノベーションが起きます。同時に独占化が進み、競争者を排除していき、GAFAがどんどん強くなっていきます。そのことについてよく考え、独占化の傾向、市場支配力の濫用をけん制する仕組みを、競争政策は担っていく必要があります。

 データの集中だけではありません。R&Dとイノベーションの集中も人材活用のあり方や労働市場、教育制度にもかかわる大きな問題として懸念されます。現状を放置しておくと、たとえば、グーグルのプライバシーポリシーが標準になってしまいます。本当にそれでいいのでしょうか。

 多くの人々は、プライバシーが駄々洩れになっていることを意識しないでグーグルやGメールを使っています。もっとプライバシーを保護するようなメーラーがあれば、私はそちらにシフトするかもしれません。Gメールに代わるサービスがないから使わざるを得ないのです。市場の独占によってサービスの選択肢がなくなる状況は避けるべきです。経済学的には、独占以外によい選択肢がなくなれば、それは公益事業とみなすべきです。極論すれば、アマゾンやグーグルは公益事業として規制すべきということになります。そうならないためにも、多元的な競争が維持されるような市場であってほしい。

 GAFAの独占化がもたらすコンフリクトは、オンラインとオフラインの競争という面でも問題を起こします。日本国内でのオフラインは非常に政治力ある業界がまだ多く残っています。その結果、オンラインとオフラインの競争がフェアに進行していないような印象を受けます。これは競争政策の隠れた課題です。

 たとえば、エアビーアンドビーがそうです。民泊サービスと既存の事業者の競争はどういう状況が好ましいのかということを考えていく必要があります。一方が完全に独占してしまうことがよいわけではありません。オンラインの事業者がオフラインのビジネスに手を伸ばし始めているケースも見られます。

 オンライン事業者とオフライン事業者との競争をどうとらえるかは、規制改革と密接不可分の課題です。日本では事業法の壁が立ちふさがります。監督省庁の異なる個別の事業法を一つひとつ改革していくことは、非常に長い道のりを要します。ただ、このままエアビーアンドビーが普及しなくてもいいのか、ウーバーがない国でもいいのかを真剣に検討すべきでしょう。インバウンド向けの白タクが横行するくらいなら、きちんとした競争のルールをつくり、オンライン、オフラインがフェアな形で競争していくような市場を目指したほうがいいのではないでしょうか。

(構成/堀田栄治 撮影/西出裕一)