日本企業がアフリカに
投資するべき理由

――本田さんが長官になられてから、特に力を入れていることは何ですか。

 まずは、発展途上国政府や、発展途上国への投資を考える民間企業の多くの方に、MIGAの保険をより深くご理解いただくことの推進です。これまでお話しました通り、MIGAの政治リスク保険の案件は、すべて加盟国181カ国の衆人環視のもとにあり、とても信頼性が高いものです。ですから、民間にもっと活用いただくべく、各国各地で事例紹介の行脚をしてまわっています。

 MIGAがこうした形で支援をしているプロジェクトというのは案外知られていないので、他国の成功事例を示して、「実はどこそこの、あのインフラのプロジェクトはMIGAがお手伝いしたものなのですよ」と各国の財務大臣や中央銀行総裁とお話することで、「それならうちもやりたい」と乗り気になってもらえたりします。その意味では、投資する側と、投資を受け入れる側の両方にMIGAをご理解いただく必要があり、先進国と途上国の両方に足を運んでいます。

 投資していただく企業の現場の人や若手にも知ってもらうことが大切なので、ワークショップや研修の一環としてもらうこともあります。

 MIGAの保証の例をあげますと、三菱東京UFJ銀行などがトルコでエラシック総合病院のPPP(パブリック・プライベート・ パートナーシップ)事業に投資したのもその1つです。トルコでは、病床不足を解消するために、高度医療を施せる、4万床分の公立病院の整備がトルコ政府の保健省で計画されています。その計画のなかのエラシック総合病院の設計、建設、ファイナンス、運営までの一連のプロジェクトです。この案件には、欧州開発銀行(EBRD)とMIGAが政治リスクに関して保証しました。この債券のムーディーズの格付けは、債券発行時は、トルコ政府の債券より2ノッチ上のBBB、トルコの格付けが下がった現在もBBBを維持しています。

 また、MIGAで率先して革新的なことをやって、先鞭をつけ、民間だけでもできるような事例を残すことにも注力しています。また、総体的にみて、やはり資金需要に対して供給が足りませんので、その原資になるように再保険を増やしています。ここ3年間、再保険に戦略的に取り組んだこともあり38%から63%にまで増えました。

――日本のMIGAの利用状況はいかがですか。

 MIGAの保証をつけた投資額は現在(2018年10月)、フランス、スペイン、米国に次いで、世界4位、22億ドルです。日本の投資額は5年間で18倍になりました。ただ、どうしても日本企業は、アジア諸国への投資が多くなりがちです。いまMIGAは日本企業のアフリカ進出拡大の支援に傾注していますが、日本のアフリカへの投資はまだまだこれからといったところです。

 また、投資のサポートをする企業は銀行や商社が多く、製造業などその他の民間企業に十分アピールしきれていないとも感じます。さきほど、現場や若手にアピールすることが大事だと申し上げましたが、日本企業の本社で話し合いをするだけではなく、世界の複数の拠点で、現場の課長レベルの人を交えて説明していかなければならないと思っています。

――日本企業がMIGAの保証を受けてアフリカに投資するメリットは何でしょうか。

 第一に、アフリカは今後の人口動態予測で見て、まちがいなく最後の成長市場です。アジアへの投資もいいのですが、リスク分散のためにも、これからの最大の成長市場に投資することは企業にとって、経営戦略上とても意味のあることではないでしょうか。リスクがないとはいいませんが、MIGAを使うことで、うまくリスクマネジメントしながら投資をお考えいただきたいです。

 例えばフランス企業でも、シオラレオネにMIGAの保証を使って携帯電話事業に投資をしています。アフリカでは、また、プライベート・エクイティ・ファンドからの投資も最近多くなってきました。

 日本のアフリカ投資案件の例としては、日立建機が、ザンビアで掘削機械のメンテナンス工場を行建設されたというものがあります。ザンビアは、銅の産出において生産量は全世界で 10 指に入る規模です。日立建機は、ザンビア国内に機械のメンテナンス工場を作り、業容拡大を計画しているのですが、紛争や国有化のリスクの懸念があったため、MIGAが保証しました。

 第二は、冒頭で申し上げたインパクト・インベストメントというメリットです。企業はいま、SDGsに寄与することを株主から求められています。私たちは、どの案件がSDGsのどれに関連するのかという一覧表をつくって、企業がSDGsに貢献している成果を定量的に可視化しています。SDGsへの取り組みが遅れている日本にとっては、利用してもらう価値が十分にあります。その意味でも、日本企業には、もっとMIGAを活用してもらいたいのです。

 概して日本は技術力も資金力もあるのですが、MIGAの保証内容を含めて、まだまだ情報がゆきわたっていない状況です。一方で企業のニーズを聞き、他方で各国のプロジェクトで民間に受け容れてもらえそうなものをリストアップし、企業自体のニーズにあわせて、選んでもらえるよう提示していきます。

 資金余剰で投資先がないと考える企業にこそ、MIGAの保険の使い勝手のよさ、成長市場であるアフリカ等発展途上国への投資やSDGsの目標に直結する案件への投資を、政治リスクを排して行えるというチャンスを知ってもらいたいと思います。