世界から資金供給が進む
なぜ、いまディープテックなのか

 ディープテック・スタートアップが活発化してきているのは、その一つに日本では政府系機関からベンチャーキャピタル業界全体への資金供給量が増え、その資金がディープテック・スタートアップにも流れているという点がある。

 アントレペディア(entrepedia)のデータ(下図参照)にあるように、日本においては2014年を境にベンチャー投資総額と、1社あたりの投資額が大きく増加してきている。この流れは、成長に多額の資金が必要なディープテック・スタートアップの資金調達ニーズに対応しようとしてきていると捉えられる。 

 また、技術が非常に多様かつ複雑化してきている中で、大手企業1社で研究所を構えて新たな事業の種を生み出すよりも、外部と協力したオープンイノベーション型に移す流れが起きていることも背景にある。大企業によるスタートアップの取り込みが活発化していることも影響しているだろう。

 金額や件数は通常のスタートアップへの投資と比べ、まだまだこれからだが、ディープテック・スタートアップへ目を向けた大手企業も現れはじめている。

 特に日本には、過去に蓄積してきた研究開発の「タネ」(ディープテック・スタートアップにつながる要素技術)が大学や研究機関に多く眠っていると、元研究者である筆者は確信している。

 いま、日本に必要なのは、このタネを見つけて育て、ディープテック・スタートアップの誕生や企業の新規事業として花を咲かせるようにすることだ。

スタートアップ側であれば、資金を国内にこだわることなく、グローバルな視点での資金調達、M&A(企業の合併・買収)やIPO(新規株式公開)につなげることだ。

また企業の新規事業であれば、事業成功によって得た資金を、次世代の研究につながる開発費に回していくことである。

 このサイクルをここ1、2年で確立しないと、大学を含めて日本の研究開発の現場はかなりまずい状況になる(日本の研究開発の課題については今後の連載で述べよう)。

 そのため、世界の潮流になりつつあるディープテックの流れに、日本も乗り遅れてはならない。何より、良い研究をしながらも埋もれてしまっている「眠れる研究者」を覚まして、彼らの持つ技術を社会に適応させ、大きな課題につなげていかなければ、日本の将来はないだろう。

 本連載では、このように、ディープテックの持つ日本における可能性や、その世界的な潮流について述べていきたいと思う。次回は、国内外の最新ディープテック・スタートアップ事情について述べよう。

 

中島徹(Tetsu Nakajima)
東芝に入社後、研究開発センターにて無線通信の研究・無線LANの国際規格の標準化・半導体チップ開発業務に従事し、数十件の特許を取得。2009年から産業革新機構に参画し、ベンチャーキャピタリストとして、WHILLやイノフィス等、日本と米国シリコンバレーでロボティクス、IT、ソフトウエア系の出資を手掛ける。エンジニア経験を生かして投資先の業績改善にハンズオンでコミットし、中村超硬の上場や複数のスタートアップの売却などを実現。2016年にMistletoeに参画、2017年11月よりChief Investment Officerとして12ヵ国での投資活動の全般を統括。日本や米国シリコンバレー、欧州の有力な投資家・起業家とのネットワークを有する。北海道大学工学部、同大学院工学研究科修士、グロービス経営大学院修士。